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軟禁みたいなリモートワークは、もう止めよう

私の知人に、大手広告代理店で営業を担当している人がいます。

彼女の会社も、ご多分にもれずリモートワーク指示が発令され、緊急事態宣言下ではリモート必須、現在は必要に応じて出社を許可する、と言った運用がされているようです。

その所属する部署におけるリモートワークは結構ハードで、朝礼的なミーティングから、夜〜深夜にかけての業務終了時まで、ずっとオンラインであることが求められ、かつ、あたかもオフィスにいるかのように、画面越しに呼びかけられたら必ず応えなければならないのが原則なのだそうです。

こうなると、自室に軟禁されているようなもので、リモートワークという言葉から想起される「フレキシブルな働き方」といったイメージは皆無。むしろリアルなオフィスでの執務よりも「不自由度」があがっているのではないか、と感じます。

ということで、今回もコメモのお題に乗っかって考えてみたいと思います。

この会社(で知人が属するチーム)には、従業員は管理する対象である。そのためには彼ら・彼女らを半ば不自由な状態に置くことは構わない、という思想が感じられます。その背後には、人は放っておくとサボるので、監視しておく必要がある、という性悪説があるように思われます。

また、業務時間内は、企業は従業員を拘束するものであるし、従業員は企業に拘束されるものである、という形式主義的な思想も感じます。

筆者は出社していようがリモート環境であろうが、深く考えたい時は一人会議室に篭ったり、散歩したりして、気分を変えて集中しようとします。知人のような状況ではそれもままならないのではないかと思います。正直同情を禁じ得ません。

ところで、このような考え方で、組織を運営すると、何が起こるでしょうか。

チームメンバーは、信頼されている実感がないままに、高いプレッシャーに晒されますので、不安とともに高負荷で仕事をするでしょう。

それにより、一時的には高いスループットが期待できるかもしれませんが、時と共にチームは疲弊し、それとともにパフォーマンスが落ちていくのではないか、という懸念を感じます。

また、このような環境下では、自由な発想を生み出すようなメンタリティにはなりづらく、チームメンバー同士のコラボレーションも生まれにくいような気がします。

考えてみると、どうもこのように運営される組織では、どこで仕事をするかにかかわらず、創造的な成果は期待薄なように思われます。それがリモートワークにより図らずも露呈し、尚悪くなってしまった形ですね。

上記は全てデータの裏付けがない、直感的な意見ではありますが、読者の感覚とも遠くないのではないかと思います。いかがでしょうか?

一方、行動経済学の大家 ダンアリエリーと話をした時に、上記の知人の会社とは真逆な話を聞きました。

彼が経営する企業 BEWorksでは、経費を使用する際に、事前の稟議や承認などは一切必要ないそうです。ではどういう基準で経費支出の判断をするかというとこれが極めてシンプル。

メンバーが「これがもし自分のお金であっても、この目的のために使うか?」と自問自答し、答えがYesであれば会社のクレジットカードを使ってOK、事後的な監査などもしないそうです。

まさに性善説に基づく組織運営。でもこれでトラブルが起きることはないのでしょうか?

彼によると以前一度、(経費支出とは別の件ですが)メンバーへの信頼を裏切られたことがあったが、そのような例外的なことのために、官僚的なプロセスを導入したりしない、とのことでした。

面白いのは、このような信頼ベース・性善説ベースを採択すると、オペレーションもシンプルになり、コストがかからないことです。

BEWorks社のオフィスは、リラックスした自由な雰囲気に満ちており、このような「制度設計」を通じてメンバーへの心からの信頼をシグナルすることにより、彼らの創造性やモチベーションを引き出せていそうである、とも感じました。

ダンの会社は北米にあるので、現在はきっとリモートワーク下にあると思います。そしてそこでのリモートワークは、性善説に基づいた、信頼とモチベーションに満ちた運用がされているのではないか、と想像します。

筆者が何を言いたいかというと「成果を出せる(しかも継続的に)のはどんな組織か」という問いと、リモートワークを関連づけて考えるのは、あまり意味がないのではないか、ということです。

つまり、成果が出せるのは、メンバーの高いモチベーションを引き出せる組織であり、そのような組織では、リモートワーク環境であろうと、そうでなかろうと、成果が出るのであろうとも。

行動科学を紐解くと、モチベーションの源泉は、組織の公平性・透明性といったことが柱だと言われていますが(ちなみに待遇などのベネフィットは意外にも当てはまりません)これは筆者には従業員が組織を信頼したい欲求の裏返しのように思われます。

この意味でダンが話してくれたような、性善説ベースの運営思想は、企業側からまず従業員に信頼を示し、組織内での信頼のサイクルを形成できる、とても合理的な、一歩進んだ考え方のように思われます。

この考え方が組織に定着すれば、リモートワークのように対面でのコミュニケーションに基づく信頼形成が難しいような環境ではより価値を発揮しそうだし、モチベーションを減じさせる官僚主義は逆に作用しそうです。

読者の皆さんは、どのように考えられますか?


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9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。

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コメント (1)
私の職場も時間で拘束されます。
時間ではなく、裁量にすれば良いのにといつも思います。
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