見出し画像

スタートアップピッチ優勝者にみる「男性性」と「女性性」~ピッチで圧倒的に勝つ技術~

IVS那須2021に2021年11月21日(水)から11月23日(金)まで参加してきた。登壇も審査員でもなくベンチャーカンファレンスに、イチ参加者として行ったのは久しぶりかもしれない。
そもそも前回、IVS(インフィニティベンチャーズサミット)に参加したのは、3、4年前?ぐらいの台湾開催だった。「17(イチナナ)」のIPO?お祝いでシャンパンタワーが組まれるような華やかなディナーパーティを抜け出して九份にプチ観光に行ったのが遠い昔のようだ。
11月後半の那須高原。コロナ対策としてアウトドアカンファレンス。さ、寒い!!
しかし、IVSのラストを飾るLaunchPad(発射台、という意味のスタートアップピッチでIVSのメインコンテンツ)は非常にレベルの高い14社のスタートアップによる戦いとなった。
…審査などの御役目がないからこそ、適当に気をぬいて(途中、トイレにも1度離脱)かなりフラットに全ピッチを見ることができたので、優勝されたSHEの福田さんへの祝辞にかこつけてピッチ評を書いてみたい。



意外に思われるかもしれないが、ピッチにおいて女子というのは有利な面もある。
差別的発言に聞こえるかもだが、なにげに芯を食ったことをこれから書くので(笑)男性起業家にも参考にしてもらいたい。なぜならベンチャーカンファレンスにおけるピッチで優勝するというのは、そのベンチャー企業の未来を決定づける可能性が高い。つまり潤沢な資金調達ができ、結果として事業成長を加速し大きくなれる可能性を高めるものなのだ。
(そして、このnoteが役に立ったら、スキをくださいね♪励みになります)


対話力・共感され力の高いピッチ


一般的に女性はコミュニケーション能力・共感力が高いと言われる。これは左脳と右脳を結ぶ脳梁(のうりょう)が太いからだそうだ。脳梁はいわば左と右の脳をつなぐ「橋」なので幅が広い橋では多くの人が同時に行き来できるように、太い脳梁は多くの情報を同時に交換できる。つまり相手が今どう思い何を考えているかを瞬時に察しながら対話ができる。

もちろん短所もあって「女性の話はロジカルじゃない。突然、現在の話に過去の話が混ざったりするし、話が飛んだりして、何を言っているのかよくわからない。頭悪そう」と(主には男性に)思われたり、「彼女が仕事の愚痴を話すから、論理的に解決策を提示してあげたのに、機嫌が悪くなった。なんで??共感してほしいだけって怒られたけど、なにそれ。俺が悪いの??」とカップルのケンカの元になったりする。
(つまり脳梁が太い、たくさんの情報が右脳と左脳を行き来すると、話がとっちらかった印象になる)
話を戻すと、一言でいえば「ピッチは一方的なものではなく、キャッチボール(会話)である」ということだ。もちろんピッチは数分(昨日のは6分)だし聴衆は誰も喋らない。それでも対話であり、その読後感は「この人を応援したい」であるべきである。
昨日の福田さんのピッチは、14人の登壇者の中で最も、そうだった。聴衆と心が通った瞬間がどこだったかは後述しよう。
もちろん女性が素で会話すると、その脳梁の太さゆえに「話が飛ぶ」「論理的でない」印象を与えることも多い。しかし昨日のは当然、6分という短時間のプレゼンで計算された完成度高いものだったゆえに脳梁の太さの「長所」はいかんなく発揮されていた。
対話風が女性性ピッチとするならば、男性性ピッチの代表は、昨日でいえば3位入賞のネクストヒーローさんかなと思う。障がい者雇用に関する素晴らしい事業な上に、力強い、情熱が伝わるプレゼン。(だからこその入賞!)私の印象は「政治家のスピーチ」。
このスタイルは、政治家のスピーチには適している。一般大衆は、まだまだ圧倒的に強く頼り甲斐あるリーダーを求めている。 
ただ、ベンチャーピッチを聴いている人は一般大衆ではない。投資家や大企業のオープンイノベーション担当、証券会社など金融機関の人たちや、他の起業家など。この人たちに政治家スピーチスタイルは、やや「一方的に」感じられてしまう。この人なら一人でも大丈夫そう、自分が応援するまでもない、と思われがち。
ピッチは、応援団を作る場なのだ。応援団には、資金提供する投資家も協業相手の大企業も、ジョインしたい!と思う未来のCXO候補も含まれる。つまり介在の余地ある隙が必要という点で政治家スピーチとは性格が異なる。
しつこいが、スタートアップは応援されてナンボ。
ピッチは言わば「スター誕生」のような場で、みんな「新しいスター」が誕生する瞬間をを観たくて眠気にも寒さにも空腹にも尿意にも耐えるのだ。
新しいスターは、事業としては生まれたばかりの赤ちゃん。人間の赤ちゃんが何もできない、か弱き存在なのに、家族のスターであるのと同じ。
みんなに応援され世話を焼かれ、育てられて、やがて大きく成長していく。つまり赤ちゃんの周りのパパママ、おじいちゃんおばあちゃん、兄弟姉妹、保育園の先生、近所の人たち、これにあたるのが、俗に「スタートアップエコシステム」と言われているものなのだ。赤ちゃんは持ち前の笑顔、ミルク臭さ、危なっかしい所作で周囲の人々を虜にするが、ピッチする起業家は大人であるため「対話による共感され力」が重要になる。

ついでにいうなら、近年、日本のスタートアップエコシステムは急速に成長し「東京」がスタートアップエコシステム都市として、世界でも「第9位」に躍り出ている。
 このスタートアップ都市ランキングだが、1位は押しも押されぬシリコンバレー、2位は泣く子も黙るロンドン、3位はフィンテック中心に急成長するニューヨーク、4位はBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)を中心とした時価総額上位企業を生み出す中国から北京がランクインしている。ちなみに5位はボストン、6位はロサンゼルス、7位がテルアビブ(イスラエル)、8位 上海と続き、とうとう!とうとう!!とうとう!!!9位にわれらが東京ランクインである。
(ちなみに10位はシアトル。アメリカ勢、強いなぁ)

ギャップ萌え


これも実は女性が有利かもしれない。(だけど男性も十分使える技!)
ベンチャーピッチは通常は予選がある。昨夜のIVSであれば、数字を聞いたわけじゃないが平均的に恐らくは150社~200社が応募している。なので選抜されて昨日の場に出ている時点でトップ1割の世界。女性とか男性とか全く関係なく、事業として成長可能性が無限大で(TAMが大きく)やれそうな骨太の代表と仲間たちであり(チームとエグゼキューション力)で、面白いビジネスモデルを構築していて、かつそれが実績として出ており(トラクション)ユニークなポジション取りが出来ている(競合差別化)会社しか、そもそもピッチの舞台には立てない。
あの場でプレゼンしている自体、「十分に選ばれた人、会社」なのだ。
しかもベンチャーカンファレンスの中で、私は3つほど大規模なものがあると思っており、IVSはその1つだ。(残り2つはICC、およびB-Dash)
この3つのカンファレンスの中で、少なくとも1つのピッチで優勝できるというのはスタートアップエコシステムでのスター誕生に勝つことなので重要である。(繰り返すが東京は世界第9位のスタートアップ都市)
この舞台に立てる条件である「骨太でスケーラブルな事業、実行できるチーム、ユニークな立ち位置、期待の持てるトラクション」というのは、どちらかというと男性性の発露になるので、その中で女性代表というのは存在だけでギャップがある。
そのため、息をしているだけで本当はギャップ萌えなのだが、それを殊更に強調するプレゼンだった。私は後方で焚火を囲んでいたので見えなかったが、プレゼンの最初に横断幕を持った社員(主に女性社員)が前に出てきて「よろしくお願いします!」的なことを言っていた。黄色い声だけが聞こえてきた。その後は、福田さんによる「てめぇら、ナメてんじゃねぇぞ」的な、一気呵成的な数字攻めである。(言葉と雰囲気こそ柔らか。ここが対話的ピッチのポイント)
最初は、月商1億円スライド。コロナ禍で投資世界はむしろ金余りだが、消費世界は冷え込んでいる。そこであけすけに最初から売上を出すセンスすご…である。
冒頭の黄色い声とのギャップよ。
SHEの創業は2017年4月。今回、ピッチ出場の14社の中では恐らく最も古いのではないか。スタートアップの世界で4,5年事業をやっていれば、月商1億はさほど珍しくはない数字だ。しかし、今まで東京スタートアップエコシステム(スタートアップ村)には、あまり知られてなかった存在のため「突如現れたニュースター=エコシステムに可愛がられる価値のある赤ちゃん=骨太だし実績もあるでしょ」という印象を与え、ここでもギャップ萌えであった。
SHEのプレゼンのハイライトは福田さんが一段低い声で語る「ずっと…キラキラ女子のスクール事業でしょ?と言われてきました」の場面だ。聴衆らは、まさに思っていたことを言い当てられてドキっとする。これが本プレゼンにおける「聴衆と心が通った、対話が成立した瞬間」。意地悪い言い方をすれば、聴衆が福田さんの術中にハマった瞬間だろう。
かつ、SHEのプレゼンは二重のメタファーになっていた。途中で「年収300万~400万の人が15万円の講座を受講するのです。これって結構な決心だと思いませんか?」と言う。このカスタマー像は福田さんでもあるのだ。(福田さんは元Rですしもっと給料高いけど)
すごく簡単にいえば「(羊の皮をかぶった)狼である私が、羊の皮をかぶってるけど狼性を持っていて、でも自分の中の狼の才能に気が付いてない人達という大きな大きな潜在市場をスケーラブルな事業に変え、ついでに日本を良くするのです」と宣言してピッチは終わる。
まぁ、このプレゼンを”宗教的”と言う人もいるでしょう。でもまぁ、ホモ・サピエンス全史(←私のお気に入り本)によれば、宗教家も起業家も「今ここにはない架空の物語」を信じてもらい大勢の力でそれを真実にするという点でいえば同じなのだ…。
※サピエンス全史はかなり面白いのでお勧めの本である!でも前半が特におもしろいから上巻だけでもいいかも…。
※私、サピエンス全史がお気に入りすぎて日経コラムも書きましたw

まとめ~女性性と男性性でスタートアップピッチに圧倒的に勝つ~

ここまで読んでくださった皆様は私が言いたいことが起業家が女性か男性か云々、ではないことに気づいてくださったと思う。
私が言いたいのは、人間には「男性性」と思われる性質と「女性性」と思われる性質があり、それぞれの良いところを戦略的に組み合わせられるとピッチはもちろん企業経営にも有利であると、私は考えている、ということだ。

例えば、

男性性(と思われがちな性質):力強い、まっすぐ、情熱的、実行力、決断力etc,etc
女性性(と思われがちな性質):共感力、対話力、かわいげ、細やかさ、やさしさetc,etc
というようなもの。


過去、女性性と男性性の、うまいバランスのピッチだなと感じた男性起業家の例を挙げる。
SmartHRの宮田さんだ。(当時、優勝しまくっていました。今は押しも押されぬユニコーン!)


宮田さんは、ピッチ前半で、プライベートな体験と家族への優しい目線(女性性による共感され力!)を話した後、続く骨太な事業とのギャップ萌えに成功していた。持ち前の、誰も敵にしない安心感を与える優しい笑顔も大いに影響していると思う。(失礼ながら、この時の宮田さん、決してシュッとしてマッチョでMacを小脇に抱える男性起業家像なビジュアルではない)
また、ピッチ内で、労務に関する行政の前時代感を示すために現在使用されている書式をスライドに大写しにして、ある項目をハイライトした。
「男性、女性に加え、3つ目の項目は、なんだと思いますか?」と会場に問いかけた後、たっぷりの間をとってからタネあかしをして、笑いを誘っていた。
※答えは「男性」「女性」「炭鉱労働者」だった。
問いかけは会場と対話するための基本テクだが、間を十分取らない人が多いのが残念。宮田さんは間を十分に取っていた。宮田さんピッチにおける「聴衆と心が通った、対話が成立した瞬間」。意地悪い言い方をすれば、聴衆が宮田さんの術中にハマった瞬間だろう。
私は、本番の1度しか宮田さんのピッチを見ていない。5年前のピッチを私がこれだけ鮮明に覚えているのは当時、私が審査員だったから、ということに加え、既に起業を考えていたため「学ばなくては!」という気合いで聴いていたこともあるが、何より宮田さんのピッチが「対話的」であったことによるだろう。
宮田さんのピッチから学んだ私は、その後のピッチでは優勝を多く手にすることが出来た。(WAmazingはICC、B-DASH、モーニングピッチスペシャルエディション、東急アクセラデモDAYなどで、全て優勝)
起業家としてピッチをする以前の私に、審査員としての経験を与えてくれた小林さんには感謝しかない。

ピッチで優勝したい!プレゼンうまくなりたい!という方は是非、以下の2本のインタビュー記事を読んでみてください。私が自分なりにプレゼンやピッチを研究してきた結果をまとめています。その際に参考にした本も掲載しているので、是非。^^


たぶん、誰にでも、どんな起業家にも女性性・男性性はあるし、子供性・大人性もある。(ただしその割合はそれぞれ違い、個性として発露する)
スティーブジョブズはStay foolish,Stay hunglyと言ったが、それは男性性と子供性の統合的な要素だろう。


多くの起業家が自分の中の複数の性質を統合(uniteではなくintegrateのイメージ)し、社会を良き方向に変えてくれたら、そしてその1人に自分もなれたなら。


…WAmazing、ますます頑張るぞ!!!そんな風に思える夜でした。^^

そんなWAmazingでは絶賛、人材採用中です!


いいなと思ったら応援しよう!