デザイン思考を悪用し、社会を破壊するユニコーン企業
日本ではあまり注目されていませんが、JUULは米国で高校生を中心に一大ブームを起こしている、電子タバコベンチャーです。
2019年1月時点の世界のユニコーンランキングでは3位にランクされています。
JUULの電子タバコは、米国高校生の30%近くが使用しています。
未成年がニコチン中毒になったり、因果は不明ですが喫煙者が死亡するなど、最近になり、大きく批判されるようになりました。
カリフォルニア州サンフランシスコ市では、電子タバコの販売が規制され、社会的な問題になっています。
電子たばこ 規制の波 米、一部の州で禁止 未成年喫煙や健康被害
この批判や規制が巻き起こる前の2018年に、創業者はJUULの3分の1の株式をマルボロを製造しているアルトリア社に譲渡しました。
最近の規制によって、JUULの企業価値が減損したため、評価損が出ていることも、世間を賑やかしています。
JUULの創業者は、スタンフォード大学デザインスクールのフェローだったこともあり、「デザイン思考は非常にシンプルで、ユーザに共感し、プロトタイプを活用してニーズを実証できれば何でも作れる」と豪語しています。
ユーザへの共感を基盤としたデザイン思考は実際にパワフルで、米国で最高水準のデジタルエクスペリエンスを設計している企業として、JUULは注目されてきました。
「ユーザ」という言葉は、ソフトウェア産業と麻薬販売員しか使わないと言われていますが、JUULはどちらの視点でユーザを捉えていたのでしょうか。
一般的に言って思春期の若者は、自分の健康よりも流行やお洒落さを重視し、長期的な視点を持ちづらいものです。
未成年の欲望に共感しながら、デザイン思考を活用し、最高に使いやすく、クールで中毒性の高い製品を作り出すことは、倫理的に許されないことだと私は捉えています。
デザイン思考を活用する企業は、ユーザの刹那の欲望ではなく、長期的な人生の喜びを共感の対象とするといった、明確な規律を持つべきだと考えます。