見出し画像

オープンイノベーションはオワコンか?

すでにすっかり定着した感もある CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)だが、最近になっても設立が相次いでいる。

これは、既存企業の、スタートアップとのオープンイノベーションによる自社事業の革新や新規事業開発への期待とニーズが依然として高いことの表れであろう。下記の記事によれば、すでにCVCは日本国内で250以上が設立されているということなので、CVCの設立自体は、もはやイノベーティブな取り組みという段階は通り越して、ややうがった見方をするなら、他社がやっているからうちも、という、安心感ないし横並び意識が設立させている、という一面もあるのかもしれない。

一方で、オープンイノベーションの成果に疑問を持ち、もはやオープンイノベーションは限界ではないか、原点回帰して社内に革新の種を求めるのが最先端、といった趣旨の記事も出てきた。

オープンイノベーションは、確かになかなか成果が出にくいかもしれないが、本当にもうすでに過去のものなのだろうか。

そもそもオープンイノベーションは何のためのものか、と考えると、これは社内にイノベーションが起きること、つまりは新規事業や、既存事業であってもまったく新しいアプローチによる事業の刷新が「目的」であって、オープンイノベーション自体は、あくまで一つの「手段」に過ぎない。

この記事にあるような社内の種を育てることでイノベーションを興す取り組みと、スタートアップをはじめとした社外と社内の化学変化を活用するオープンイノベーションは、矛盾したり二者択一の関係にあるものではなく、どちらも同時に進めていくことができるものだ。

むしろ、イノベーションを起こしていくことが企業にとっての最終目的なのであれば、両方を同時に進めていくことに意味がある。新しい価値を生み出すことに、リソースの社外社内を区別をする必要はないし、両方の手法が同時並行で進んでいくことで、相互に優れた点をとりいれ、いわば切磋琢磨しながら目的に向かっていく方が、合目的的ではないだろうか。

どうしても、ゼロかイチかの思考に陥りやすく、オープンイノベーションか「社内の”種”」なのかという議論になってしまうのだろうが、両方をやっていることの方が、より良くより早く、求める結果を手にすることが出来るはずだ。

そもそも、オープンイノベーションが提唱された背景には、社内の種をイノベーションの成果に結びつけることが難しいという現実があり、少なくても日本企業に関しては、この状況がオープンイノベーションが提唱された当時と比べて抜本的に変化しているとは思えない。

社内にせよ社外にせよ、イノベーションを興すということはそう簡単なことではない。だからこそ、オープンイノベーションとその反動が関心を集め、記事になるのだといえる。

上の記事にもあるように、大企業とスタートアップの意識の違いやスピード感の違いといったことが、オープンイノベーションが成果を生み出す障害になっているが、一方で、社内の種を育てるということもこれまた色々と阻害要因がある。だからこそ、オープンイノベーションが提唱されたのだ、という原点は踏まえておくべきだろう。

むしろ、国内でも取り組みが早かった企業であれば少なくても約10年のオープンイノベーションの試行錯誤の積み上げがあるのだから、後発企業は、それを分析したうえで、上手くいかない取り組みをなぞることは避け、「社内の種」の育成とも掛け合わせながら、新しいオープンイノベーションの取り組み方を編み出していく時期に来ているのだと思う。先行する企業であってもこの状況は同じだ。

オープンイノベーションには意味がない、と早々に断じてしまうのではなく、なぜオープンイノベーションがうまくいかないのか、ということを考えるとともに、一方で社内のイノベーションの種を、これまた過去にうまくいかなかった理由を意識しながら、見つけ育てていく、ハイブリッドなイノベーションの誘発施策が、今求められているものではないだろうか。

オープンイノベーションが言われ始めた当時からすれば、スタートアップの質と量も格段に向上しており、組むべき企業も増えているはずなのだ(量が増えた結果、探しにくくなっている、という一面もあるかもしれないが)。

その意味で、まだまだオープンイノベーションは「オワコン」というには早すぎる、と思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?