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失業率と求人率に着目せよ!

欧州の物価がなかなか下がりそうにない、のは労働市場の強さにも影響されている。エネルギー危機下でもユーロ圏の労働需給はひっ迫してきたわけだが、主に三つの要因が見いだせる。


第一に、景気面に関しては財やサービスの力強く底堅い需要が高い求人率と低い失業率のいずれにもつながっていること。第二に、構造面では既に人口動態の変化による労働力不足が労働者の抱え込みにつながることで低迷期に労働市況がより持ち応えやすくなっている可能性があること。第三に、労働力の余剰と不足の分野が異なる雇用のミスマッチがあること、である。特に第二、第三の要因は構造的な問題と言え、これが残っている以上は労働需給はひっ迫が続く可能性がある。

労働力不足を訴える企業が過去最高水準にのぼることが景気動向指数から伺える。これはユーロ圏で始まっている人口動態の変化によるものと考えられる。ユーロ圏の生産年齢人口は縮小を始めている。主因は域内人口の高齢化や移民の減少にあるため、そうした落ち込みは加速する見通しだ。これは労働力不足が拡大する長期トレンドの原因とも考えられる。不足は単なる循環的な現象ではない、ということである。そうなると、企業側は景気回復期に人員を再補充できない可能性を考え、後退期の労働力削減に消極的になってしまうことになるわけだが、それが循環的ショックの際の耐性に繋がっていると言える。

また、雇用のミスマッチが生じていることもある。パンデミック期間に財とサービス間の大きな需要の変化も一つの背景だが、セクターによっては大きく雇用が低下したものがある。美術、エンターテイメント、娯楽セクター、行政、防衛分野などがそれだが、パンデミック後に雇用は改善しているものの、それらセクターでは粗付加価値は改善していない。これらミスマッチを解消するために再訓練や再教育が必要になるが、時間がかかることを考えると、こうしたミスマッチはまだ残ることになる。

そうだとすれば、労働需給のひっ迫が構造的に続く可能性があることになり、ECBが金融政策の引き締めを継続する理由となること必至。物価と雇用市場の両方が金融引き締めを継続するものとなる限り、欧州での金融政策の緩和への移行は難しいのではないか。失業率や求人率に着目して、労働市場のひっ迫度合いを見ていく必要がある。


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