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中小企業の採用の未来➄【職場における非正規社員の役割変化】

多くの企業では採用担当者の業務ではないかもしれないが、非正規社員の採用も採用をポートフォリオとして考えた時に人材獲得の重要なルートとなる。特に、アルバイトなどの非正規社員がTwitterなどのSNSに不適切な投稿を行い、企業に多大なダメージを与えるニュースが連日流れ、非正規社員の質やマネジメントが経営課題となっている。また、アルバイトを募集しても、割に合わないと応募者が集まらず、マンパワーの不足に悩まされている企業も多い。

採用ポートフォリオに照らし合わせると、非正規社員の採用はOSパターンに当てはまる。専門性の低い業務を担当し、職務遂行のために習熟を必要としない人材の採用だ。


非正規社員の質は現場のマネジャーに大きく左右される

雇用者と労働者の関係の歴史を振り返ってみると、産業革命から現代にいたるまでの変化は、労使のパワーバランスの均等化と言い換えることができる。産業革命で私企業が誕生したばかりのころは、労働者を雇用する企業側が大きな権力を持ち、労働者は自分で考え、判断することは無く、ただ言われた通りのことをやるだけの存在だった。そのため、労働者が怠けることなく、勝手な判断で作業効率を下げないようにすることが重要なマネジメントの課題だった。その結果生まれたのが、製造業のベルトコンベアやファーストフード店のマニュアルだ。しかし、企業競争が激しくなり、顧客に提供する商品やサービスの付加価値が向上するとともに、労働者が自分で考え、創意工夫することが求められるように変化してきた。その結果、雇用者と労働者の関係性が、かなりフラット(対等)になってきている。

そのような変化の中で、非正規社員は非常に難しい存在だ。旧態然とした組織のように言われたことをこなすだけでは求めているパフォーマンスには及ばず、かといって権限移譲をして自分で判断して動くことも求められていない。そのため、非正規社員が期待されている働きぶりや成果の質は、個社の事情や現場マネジャーの裁量に大きく任されている現状にある。特に、非正規社員の人事権は、現場マネジャーが持つことが多いため、現場のマネジメントレベルに大きく反映される。

つまり、非正規社員の人手不足を解消するためには、現場のマネジメント・レベルの向上やマネジメント体制の整備とセットに行うことが重要になる。非正規社員が自分の仕事に対して不満を抱え、業務負担が大きくなり、離職が相次ぐと、悪評から人手不足が発生し、負のスパイラルが加速していく。人手不足の負のスパイラルが生まれる前に、打ち手を講じることが経営者の課題だ。


非正規社員の役割の変化と変わらない立場

また、非正規社員が活躍するフィールドも多様化してきている。企業経営にとって重要な部署においても、アシスタントとして派遣社員が働く機会は増えており、非正規社員は簡単な業務をこなすだけという常識も変わりつつある。それに合わせ、高度な専門性やスキルを有した非正規社員も増えている。

しかし、非正規社員はあくまで期間限定の働き手であり、正社員とはキャリアが全く異なる。そのため、従事する業務の高度化や役割の拡大に対して、組織との関わり方がどうしても薄くなってしまう。このような役割の変化と立場の弱さが正社員と衝突し、ハラスメントや部署内のコミュニケーション不全を引き起こす原因になっている組織も多い。

非正規社員に期待する役割は何か、どこまでコミットしてもらうのかを設計することが、現場マネジャーに求められている。過剰な期待と役割の付与は、パワーハラスメントと受け取られてしまう危険性もある。

採用時に、約束事として期待する役割と職務の範囲を十分に確認することが求められているのかもしれない。日本企業は、伝統的に「人」に「仕事」を割り振るというマネジメント体制をとってきた。しかし、非正規社員に対して同じことをすると不平や不満がたまり、トラブルの種となるケースが増えてきている。非正規社員に対しては、欧米企業のように職務と責任を明確にし、「仕事」に「人」をつける発想が求められているのかもしれない。

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