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気候変動についての世論調査とメディアの果たす役割

先週公表された内閣府がまとめた「気候変動に関する世論調査」はとても興味深いものでした。

気候変動が引き起こす問題に「関心がある」「ある程度関心がある」と答えた人の割合は合計で89.4%に上った。前回の2020年調査と比べて1.1ポイント増えた。』とのことです。

今年の夏に連日続いた猛暑や酷暑を多くの人が体感したことを受け、気候変動がもたらす様々な問題に対して危機感を感じる人が増えたのかな、と思う人も多いと思います。

他のメディアでも調査結果について紹介されてますが、見出しを見るとそれぞれ切り口が異なる点が気になります。

私が個人的に気になったのは若年層の無関心層が多いことと、調査手法です。調査は今年7~9月に郵送形式で実施され、全国の18歳以上の約1,500人が回答とのことですが[郵送経由:1,057人 / インターネット経由:469人]、回答数を見ると18歳から29歳の若年層が116人ととても少なく50代以上が974人と全体の63%を占めていることが伺えます。比較的気候変動問題に意識が高いと言われている若年層の声が正確に反映されてないのでは、と感じます。その他の調査項目や調査結果を見るにつけ、残念ながら「?」と感じることが多かったです。
興味がある方は以下のグラフ、オリジナルの調査レポート[気候変動に関する世論調査(令和5年7月調査) / 11/10 内閣府&環境省]をぜひ参照してみてください。

気候変動に関する世論調査(令和5年7月調査)

11月末から第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)がUAEで開催されるということもあってか、他にも数多くの気候変動に関する調査結果が公表されてます。その中で気になったのはイギリスのオックスフォード大学のロイタージャーナリズム研究所による「Climate change news audiences: Analysis of news use and attitudes in eight countries(気候変動ニュースの視聴者:8カ国におけるニュースの利用と態度の分析)」というものです。

このレポートでは、2022年に実施された調査を基にして、2023年にブラジル、フランス、ドイツ、インド、日本、パキスタン、イギリス、アメリカの8カ国での気候変動に関するニュースのアクセスと消費パターンを分析したものです。特に気候正義(Climate Justice)と解決(Solution)志向のジャーナリズムに焦点を当て、これらの国々の間での違いと一貫性を明らかにしている点が特徴です。概要としては気候変動ニュースの消費行動が若干増加し、科学者が最も信頼された情報源であること、そして回答者の多くが気候変動の誤報を懸念していることが挙げられてます。

ここで気になったのは各国ごとに気候変動に関して友人や家族とどの程度会話をすることがあるか、という調査項目です。日本は平均より11ポイント低く25%程度の人が直近1週間に会話をしたという回答ですが、「今まで気候変動に関して会話をしたことがない」という回答が29%と突出しているのです。

気候変動ニュースの視聴者:8カ国におけるニュースの利用と態度の分析(ロイター・ジャーナリズム研究所)

今年の3月に電通総研によりまとめられた「気候不安に関する意識調査(国際比較版)」の調査結果が思い出されます。
「気候変動について話そうとしたとき、相手に無視または拒絶されたことがあるか」を尋ねる質問に対し、日本は「他の人と気候変動について話さない」が41.6%と11か国中もっとも高い結果となっています。

気候不安に関する意識調査(国際比較版)/ 電通総研

同じ電通総研のレポートの中では「気候変動の影響を「極度に心配している」「とても心配している」と回答した人の割合はフィリピンが最多(84%)、インドとブラジルも67〜68%と高水準。北半球の先進国は米国とフィンランドで44〜47%で、日本は最低の16%、11カ国の平均は55%」との回答結果も含まれてます。

「異常気象多発、気候変動に若者不安 新興国で強く」[日本経済新聞2023年7月15日]

以上いくつかの調査結果のいくつかのグラフをご紹介してみました。もちろんそれぞれの調査手法や切り取り方によって異なる結果、矛盾する結果もあるとは思います。ただ、どうやら日本国内においては気候変動について友人や家族と話す機会が少ないこと、他国に比べ気候変動問題に対してのリスク感度は低そうである、という点が伺えます。
もちろん、米国等ではでは保守とリベラルの間で気候変動に対する考え方が大きく乖離していたり、先進国とグローバルサウスとの間で考え方が異なる等、様々な見方、考え方の差異はあると思われます。

とはいえ、グリーン・トランスフォーメーション(GX)や脱炭素政策を掲げ、経済安全保障の観点からも積極的な対策を今後取ることが求められている状況においては、気候変動に関するリテラシーの向上、メディアでの幅広い報道が大切になっていくのではないか、ということを強く感じます。


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