盛り上がりをみせる「Bリーグ」のマーケティング戦略を読み解く #マーケティングトレース
オリンピックに向けてスポーツの分野は盛り上がりを見せてきていますね!
スポーツ庁は、2025年までにスポーツの市場規模を3倍の15兆円へ拡大をすることを掲げています。
野球、ラグビー、サッカー、日本のスポーツ市場が盛り上がる中で、スポーツリーグやスポーツチームにもマーケティングの必要性が認識されはじめていると感じています。
そこで、今回は、スポーツリーグのマーケティング分析を行います。
さて、スポーツリーグのマーケティング戦略を語る上で欠かすことができないところは?
そう、Bリーグですね!
今回は、Bリーグのマーケティングトレースです!
全体のイメージ動画も作成していますので、最初に1分間みて頂けると全体像つかみやすいと思います!
Bリーグ概要
まずBリーグの概要を整理していきます。
【Bリーグのミッション】
バスケットボール界をより発展させ、より良い未来を築く
①世界に通用する選手やチームの輩出
②エンターテイメント性の追求
③夢のアリーナの実現
Bリーグのマーケティングを考える上では、B.MARKETING(ビーマーケティング)株式会社の存在を抑えておく必要があります。
Bリーグのマーケティングを支えている構造は下記のようになっています。引用元:http://www.bmarketing.jp/company/
そもそも、バスケットあまりわからないよ・・・という方は、こちらのスポンサーであるソフトバンクが書いているバスケットとBリーグの魅力記事を読んでみてください。
Bリーグのビジネスモデルを図解
Bリーグのビジネスモデルを分析していきます。
Bizmapのビジネスモデルキャンパスを活用して整理しました。
上記の図で赤色になっているところが、ビジネスモデル全体像の中で、マーケティングを考える上で重要な部分となります。
ビジネスモデルキャンパスからマーケティング戦略の成功要因を抽出すると下記3つがポイントとなります。
①ターゲティング:メインターゲットを若者・女性とする
※メインターゲットを起点に「紹介」を生むためのコミュニケーション設計
②チャネル:スマホをファーストスクリーンに
③価値:エンターテイメント性
ここから、Bリーグのマーケティング戦略のポイントを1つずつ分析していきます。
①若者・女性をコアターゲットとしてアプローチ
STP分析の視点で考えていきます。
バスケットの市場を考える上で興味深いのは、競技人口の多さ。
世界で一番競技人口が多いのはバスケットボール。世界の競技人口は4.5億人と算出されているそうです。
ポイントは、バスケの競技人口は「男女半々」ということ。
男女半々ということは、バスケをやっていて、興味がある層・自分の部活経験を周囲にシェアしたい人は多いと考えることができます。
STP分析から、Bリーグのコアターゲット設定をトレースしていきます。
Sセグメンテーション
全国にバスケ観戦意向者は約700万人
デモグラフィック属性軸(年齢と性別軸)
↓
Tターゲティング
「若者」と「女性」
↓
Pポジショニング
エンターテイメント性高く、女性でも気軽に観戦できる
Bリーグのターゲティング戦略は、ライトファン、コアファンの2層に分けた時に、ライトファンをつくり、観戦のためアリーナに訪れててくれる人を増やす戦略をとっています。
また、ターゲティングのポイントとして、
純粋にデモグラフィックでターゲットを決めているわけではない、ということだと捉えています。
コアファンが「誰を誘いたくなるか」「どういう情報を伝えれば誘おうと思うのか」というメカニズムを解釈することの方が大切だと気づかされました。
ターゲットは、「友人を誘ってくれる女性・若者」に設定していることがポイントであるわけです。
結果的に今までもバスケチームの応援している人たちがいましたが、Bリーグは、バスケに熱狂しているわけではない層でも楽しめるポジショニングをとったことがわかります。
②ターゲットに適したマーケティングミックス設計
続いて4P分析をもとに、Bリーグの価値の届け方を分析していきます。
ここでは、4P分析と4C分析、2つのフレームワークを使っていきます。
4P分析は、企業視点でマーケティングミックスを整理するために活用するフレームワークです。
一方4C分析は、顧客視点でマーケティングミックスを整理するために活用するフレームワークです。
両方のフレームワークを活用して、Bリーグの価値の届け方を整理していきます。
スマホをファーストスクリーンとするコンセプトをおき、スポーツ業界の中では先駆的なデジタルマーケティングを行ったことは、Bリーグの戦略特徴として注目されています。
スマホファーストの戦略を深掘り
ここでは、SNSとデータ活用の2つの特徴を見ていきたいと思います。
⑴SNS活用
コアターゲットが若者の女性であるため、自然と認知を広げるための施策はSNS×スマホが起点になるのは納得です。
SNS活用の中でも、認知獲得のためのハッシュタグ活用にはとくに注目です!
投稿を一つ一つ見ていくと、バスケに興味ない人にリーチするようにハッシュタグ設計されていることがわかります。
下記の記事がBリーグのSNSプロモーションを考える上で参考になります!
BリーグのSNS活用の注目ポイントを整理しておきます。
・ハッシュタグ活用
・選手を応援したくなるインタラクション/工夫
※バスケに興味がなくても選手を応援したくなる仕掛け
・季節性のイベントに合わせた投稿
上記はバスケ以外でも模倣可能な施策ですね。
⑵データ活用
Bリーグは、顧客データを各チームではなく、リーグが管理していることには注目です。
定量データと定性的なリサーチから仮説をつくり出す→各リーグのマーケティングに活かすということを行っているのがBリーグの素晴らしさです。
①の若者・女性をコアターゲットと設定、その後のコミュニケーション戦略の見直しも、データをもとにPDCAが回されていることがわかります。
もう1つが「スマホユーザーの分析軸の違い」です。当初は、データ分析の軸を来場回数が多い「コアファン」、または来場回数が少ない「ライトファン」に置いていました。しかし、スマホの利用率は圧倒的に東京などの都市圏が高く、またスマホチケットの購入率が高いなど、「エリア軸」が想定以上に影響力があることが分かりました。
また、分析を進めるにつれ、マーケティングにおける「ライトファン分析」に対する見方が変わってきました。ライトファン属性の分析に基づいた施策の多くが、失敗に終わることが多いからです。
ライトファンに「なぜ、会場まで足を運んだか」を質問すると、最終的には「誘われたから」とほぼ全員が答えます。ライトファンの属性分析ではなくて、コアファンが「誰を誘いたくなるか」「どういう情報を伝えれば誘おうと思うのか」というメカニズムを解釈することの方が大切だと気づかされました。
ターゲット設定とデータ活用に関しては、下記の「FUJITSU JOURNAL」の記事は戦略把握に役立ちます!
③価値としてのエンターテイメント性
コアターゲットを若者・女性とおいているため、
「スポーツが大好きでなくても楽しめる」
エンターテイメント性が鍵になる。
野球だとベイスターズが女性ファン獲得に成功していますが、「エンターテイメント性」に価値をおいたことが成功要因だと言われており共通しています。
ベイスターズの場合はターゲットはアクティブサラリーマンとおかれていますね。
比較してみると面白い。
下記は阿部さんのベイスターズ #マーケティングトレース
組織体制や文化にマーケティング成功要因あり
「稼ぐがすべて Bリーグこそ最強のビジネスモデルである」の中で紹介されていますが、Bリーグ立ち上げ当初の人財ポリシーは、マーケティング組織を考える上でのヒントが詰まっています。
①身内 (バスケットボ ール出身者 )で固めない
②プロフェッショナルマインド 。自分に対してもはっきり意見を言ってくれる人
③徹底的に 「べき論 」で語れる人
④片道切符 (出向禁止 )
⑤若手 、女性の積極登用
さらに組織文化を考える上で注目したいのは、組織全体でベンチマーク先はNBA(アメリカのバスケットリーグ)においているということです。
Bリーグは、NBAレベルを本気で目指していたから、マーケティング戦略もダイナミックに仕掛けられているのだと考えています。
組織にとってどこをベンチマーク=競合と捉えるのかによって、マーケティングのダイナミックさも変わってきます。
上記のような、素晴らしいマーケティング戦略の背景には、優れた組織文化と体制と人がいることを忘れてはいけないわけですね。
Bリーグの成功要因まとめ
Bリーグの成功ポイントをまとめると、この3つが戦略成功要因だと考えています。
成功要因まとめ
①エンターテイメント性の追求
②スマホファーストで広告チャネルもSNSを重点的に最適化
③マーケティングやデータ分析に長けた人を集め、戦略実行力の高い組織デザイン
自分がBリーグのCMOだったら?
最後に自分がCMOだったら?の視点でアイデア仮説をまとめていきます。
打ち手①:各チームのマーケティング・ブランディングパートナー募集
目的:新規会員増(各クラブのブランディングと会員数増加)
第一には、Bリーグとしてのブランディングは成功しているため、各クラブのブランディング強化→会員増をBリーグとして支援を強化していく必要があると考えています。
資金提供するスポンサー以外に、マーケティング・ブランディングパートナーとなる企業を集めて、各チームにアサインしていくような発想があっても良いかもしれません。
KPI指標としては、3回以上の観戦に来てくれている人=コアファンと定義して、その層を純増させていくための打ち手に集中するのが良いのではないかと考えています。
打ち手②:ベイスターズの女性アプローチを模倣
目的:継続的に観戦にきてくれる女性ファンを獲得
女性ファンの獲得に成功したBリーグですが、継続的なファンになってもらい、LTVを最大化するためには、もう一歩踏み込んだ打ち手が必要になってくると考えています。
野球チームの中で、女性ファン獲得に成功しているベイスターズを模倣して、打ち手の数を増やすことから始めるのはどうでしょうか。
収益源という部分ですと、グッズを起点にファンを増やすことを考えられると良いかもしれません。バスケットボールはファッション性を持たせることで、ストリート系を好む層にアプローチしやすい印象はあります。
まとめると下記のような全体像で戦略をつくり組織に落とし込んでいくイメージです。
また、Bリーグは他の国内スポーツリーグより後発であり、組織として革新的な行動をとりやすい体質だと思います。
この体質・文化を活かしてテクノロジー活用をスピード感をもって進める→最も最先端のスポーツ観戦を体験できるプラットフォームを目指すのもありではないかと考えています。
以上、Bリーグマーケティングトレース でした!
Bリーグのビジネスモデルやマーケティングの素晴らしさを理解するのには、こちらの本がオススメです・・!
組織立ち上げから、大きなマーケティング投資をどのような理念・ビジョンとの整合性を取りながら進めてきたのかを理解することができます。