ユニバーサルサービスを疑うことから
タイトルがいささか刺激的だったかもしれませんが、そもそもユニバーサルサービスとは何か、からお話しますね。ユニバーサルサービスとは、誰もが公平に受益できる公共的なサービスとされ、例えば、電気や水道、放送、郵便などがよく挙げられます。その維持は社会全体で負担されるというのが基本的な前提です。
どんな山間地域や離島であっても電気は供給されますし、郵便も配達されます。しかも「遠かったから特別料金」と言われることなどありません。しかしながら、かかっているコストが違うことは明らかで、これから進む人口減少・過疎化はそうしたユニバーサルサービスの維持をどんどん難しくします。
これまで投稿してきた記事の中で、日本の地方では人口減少・過疎化が急速に進むこと、そうした土地の値段は安くなるので再生可能エネルギーが大量に導入されさらに売れる電気の量は減ることなどから、送配電線の維持が困難になることを指摘してきました。ただ、他のユニバーサルサービスの維持も、相当な困難に直面しつつあります。
今回、下記のブログで取り上げた郵便サービスもその一つ。総務省が情報通信審議会郵政政策部会の下で今後のサービスの在り方などについて議論を行ってきました。ただ、正直申し上げてその議論にはがっかりしています。詳しくはブログをお読みいただければと思いますが、コストダウンや郵便局員の方たちの働き方改革を目的に、土日配達の廃止が検討されたことは、報道でも多く取り上げられましたので耳にした方も多くおられるかもしれません。しかしこれに待ったをかけたのが「新聞」でした。日本の新聞は戸別配送95%を誇るそうですが、中山間地域や離島では、新聞の戸別配達を郵便が補完的に行っているそうで、土日の郵便配達廃止に伴って、新聞の読者に影響が及ぶというのがその理由です。
「郵送でないと配達できない地域は、即売紙が購読できるコンビニエンスストアや駅売店が近くに存在しない山間地や過疎地と思われ、ネット情報の入手に慣れていない高齢者も多いと考えられます。」という主張が、一般社団法人日本新聞協会から提出された資料には記載されていました。たしかにその通りで、一時的には不便を強いることになるでしょう。しかし、必要は発明の母であり、不便はイノベーションの父です。紙の新聞が配達されなくなれば、それをきっかけに、人口減少・過疎化地域に住む高齢者のネットリテラシーが向上するという可能性もあるのではないでしょうか。
今後維持が困難になるのは新聞の戸別配送だけでなく、交通や行政サービスなども同様です。MaaSなどの新しいサービスを使いこなすためにも、自治体の出張窓口などの減少に対応するためにも、ネットを使いこなせることは今後人口減少・過疎化地域で生きていく上では必須のスキルになることは確実です。過疎地に住む高齢者の皆さんのネットリテラシーが飛躍的に向上すれば、デジタル社会に適応したリープフロッグ型進歩が可能になるかもしれません。となれば、いま新聞の配達をやめて一時的な不便を強いることはむしろ優しさかも。
いずれにしても、ユニバーサルサービスの維持は、もう当たり前ではありません。当たり前を疑え、ユニバーサルサービスを疑え。
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