女は「金をよこせ」、男は「金はやらん」。結婚意識の水と油。
結婚はコスパじゃない!
結婚というものをコスパで語るんじゃない!
未婚や非婚の若者に対する「結婚の先輩方」のこうした厳しいご指摘を多く見かけます。言いたいことはわかりますが、では、多くのソロ男・ソロ女たちが、なぜ結婚に対してコスパ意識を持ち出すのか?その要因をご存じですか?
前回の記事で、「子どもを産み育てるためには裕福じゃないと無理」という現実を提示しました。
子育て同様、結婚をするしないの問題にあたっても、経済的問題が立ちはだかるのです。
結婚は経済生活です。お金がなければ継続していけないことも事実です。一時の恋愛感情や「でき婚」の末に離婚が増大し、結果シングルマザーや貧困の子どもが増えていることも、まぎれもない現実なのです。
国立社会保障・人口問題研究所が5年おきに実施している「出生動向基本調査」の独身者調査の中には、独身者が考える「結婚の利点」「独身の利点」という質問項目があります。その推移から昨今の未婚化の要因を探ろうとする試みは多くの専門家がやっています。
それによれば、「結婚の利点」とは男女とも、「自分の子供や家庭を持てる」を利点としてあげています。2015年には、男性で35.8%、女性で49.8%です。一方、「独身の利点」は、男女ともに「行動や生き方が自由」を挙げる人が圧倒的に多く、2015年時点で男性では 69.7%、女性では 75.5%です。
これだけを見て、「独身は自由さを大事にしているから結婚しないのだ」と、簡単に結論付けてはいけません。そうやって事実を単純化してしまうから大事なことを見落とすわけです。
分析にあたって大切な視点とはなんでしょうか?
この調査を男女別々に見てはいけないんです。見るべきは、男女の差分です。
結婚とは男女でするものであり、お互いが考える利点が食い違っているとするならば、それはマッチングを阻害する要因となるわけです。しかし、今までそうした視点でこの調査を分析した者はいませんでした。
拙著「超ソロ社会」にも掲載し、話題になりましたが、男女の結婚意識の差分に着目すると、興味深い結果が見えてきます。
まず、結婚の利点の男女差分です。
© 荒川和久 無断転用禁止
一目瞭然。女性は、「親や周囲の期待に応えられる」も伸びていますが、圧倒的に「経済的に余裕が持てる」項目が男性より高くなっています。しかも、近年急激に伸びていることが見てとれます。
一方、男性は「社会的信用や対等な関係が得られる」「生活上便利になる」などで女性より多い部分があるものの、ほぼ年々下降傾向です。「精神的な安らぎの場が得られる」が唯一キープしている状況です。全体的に、女性と比較して男性は「結婚するメリットを感じていない」ことがわかります。
続いて、「独身の利点」の方はどうでしょうか。
© 荒川和久 無断転用禁止
こちらも一目瞭然です。「行動や生き方が自由」を独身の利点としているのは意外にも女性の方が多く、しかも年々伸びています。つまり、女性は独身の利点を「自由」であることに見いだしており、かつ「友人関係の保持」「社会との関係保持」「家族との関係保持」という関係性の継続を重視しているということになります。
一方の男性は、「金銭的に裕福」という項目だけが著しく伸びています。むしろ独身のメリットはそれ一択であると言っても過言ではない。
さて、こうした「結婚の利点」と「独身の利点」の男女差分からわかることはなんでしょうか。
簡単に言えば、女性が「結婚するのは金のため」であり、男性が「結婚しないのも金のため」なんです。すなわち、結婚をするうえで女性は相手の収入や経済的安定は絶対に譲れないし、男性もまた結婚による自分への経済的圧迫を極度に嫌います。月小遣い3万円なんて真っ平御免なわけです。つまり、結婚に対する意識では、男も女もしょせん「お金」なんですが、その意識は相反するわけです。
身も蓋もない言い方をしてしまうと、女は「金をよこせ」、男は「金はやらん」と思っているわけで、こんな人たち同士がマッチングされるわけがありません。双方譲れないポイント(お金)がここで真っ向からぶつかっているわけで、それでは非婚化が進むのも当然なのでしょう。いくら夫婦は経済活動の一単位とはいえ、あまりに世知辛い結果といえるのではないでしょうか。
婚活系のネット記事でも、「女性が結婚相手に選ぶ男の年収は○○○万円以上!」などというあおり記事がたくさんあります。未婚男性たちにとって、こうした情報はボディブローのように効いています。仮に、未婚男性が意を決して結婚相談所に行ったとしても、年収が低いと登録さえ断られる場合があります。結婚に向けたスタートラインにすら立たせてもらえないのです。
「結婚はコスパじゃない」と言いたい人も大勢いるかもしれませんが、「結婚するにはコスパで考えざるを得ない現実」があるということを知ってほしいものです。