自分を大事にするための「セルフマネジメント」術
お疲れ様です。若宮和男です。
今日は自分を大事にしながら働くための「セルフマネジメント」について書きたいと思います。
「セルフマネジメント」は「自己管理」にあらず
まず、「自分を大事にする」ということと「セルフマネジメント」との関係について。
「セルフマネジメント」に限らないのですが、僕は「マネジメント」について「管理」という訳語を極力使わないようにしています。
日本では「マネージャー」はよく「管理職」と訳されますよね。しかし「管理」という訳語だと「想定外の事態が起こらないようにコントロール下に置く」というニュアンスが強く出すぎてしまうように思います。
「ヒューマンリソースマネジメント」も「人材管理」という捉え方をすると、マネージャー=「管理職」は、たとえば「ちゃんと働いているか」「労働時間が適切な範囲に収まっているか」とかいう感じで「管理」するのがお仕事、というイメージになりがちです(実際にリモートワークでそういう「管理」するマネジャーもけっこういそうです)。
あるいは「リスク・マネジメント」を「リスク管理」と訳すと想定外の自体が起こらないよう統制を効かせリスクを避ける(risk-avert)感じがより強くなるでしょう。
しかし、「マネジメント」とはただ「管理」するものではありません。
たとえば「アセット・マネジメント」は資産「運用」と訳されます。これは資産がなくならないようにただ「管理」するだけではなく、その価値を適切に評価しうまくそれを再投資しながら資産価値が増えるように「活用」していく活動なのです。
「マネジメント」を「活用」と訳すと、イメージがだいぶ変わります。マネージャーは「管理職」ではなく「活用職」になります。HRマネジメントは労働を「管理」するのではなく、人材それぞれのスキルや可能性を「活用」しチームや組織のパフォーマンスを最大化するのが仕事だということになります。「リスクマネジメント」もただ想定外が起こらないようにcontrollするのではなく「リスク活用」(リスクを吟味し適切にリスクテイクして機会に変える)積極的な活動なのです。
「管理」ではなく「活用」だと考えると、「セルフ・マネジメント」を「自己管理」ではなく「自己活用」です。
「自分を大事にする」とは自分を殺さず生かして自分の可能性を広げていくことではないでしょうか?
そのために「自己活用」や「自己開花」としての「セルフマネジメント」がこれからますます必要なスキルになるでしょう。自分の特性や可能性を引き出し、自らのパフォーマンスを最大化する活動として捉えるなら、セルフマネジメントには3つのポイントがあると思います。
①自分の「いびつさ」を歓迎する
自分を「活用」するためには、「自分らしさ」を殺すのではなく、生かす意識が重要です。そしてそのためにはの第一歩は、自分の「いびつさ」を知ることです。
ただこれは就活などの時にする「自己分析」とは少し違うので注意が必要です。「自己分析」では基本的に誰かに対して自分をアピールすることが目的になるため、どうしても「あるべき自分」「ありたい自分」を抽出してしまいます。
エントリーシートや履歴書の「長所」「短所」は、自分の基準に拠っているようでその実「一般的に価値があると思われているか否か」という基準でピックアップされています。「コミュニケーション能力が高い」は「長所」に書かれるでしょうし、「コミュ障」は「短所」の方に書かれます。「長」「短」のとらえ方がすでに「一般的な価値観」を前提としており、自分らしい基準ではないのです。
しかし「コミュ障」というのも単なる特徴値に過ぎず、それがプラスになるかマイナスになるかは環境や他者との関係の中ではじめて定まるのです。
このように「良し悪しによらずとにかくそういう特徴がある」ということを僕は「いびつさ」と呼んでいます。いびつさの対義語は「正しさ」です。「正しくない」というのは「不正」と書きますが、これをぎゅっと一文字にすると「歪さ」という字になるんですね。「正円」や「正方形」など「正」は規格化されていますが「歪」はそれぞれの形がちがい、ユニークです。
自分を大事にすることはまず、自分の「いびつさ」を受け入れるところが出発点となります。「いびつさ」は時にあまり自分でも認めたくない形をしていたりします。アート思考的にいっても、コンプレックスや黒歴史が「自分らしさ」に通じることはよくあるのですが、ついそれを隠したり目をそらしがちなのですよね。
いびつさを「受容」するのが第一歩ですが、もっといえば「受容」よりも「歓迎welcome」するという感じのほうが近い感覚を持っています。
「セルフマネジメント」とはいわば自分というリソースの「マネージャー(活用職)」になる、ということです。たとえばチームに新しいメンバーがきた時、受け入れる、というのはちょっと消極的で、ともすると「仕方なく」というニュアンスさえある気がします。そうではなく、メンバーをより積極的に「歓迎」するという感じで自分のいびつさを捉えることで、その活用の意識が強まります。
いずれにしても、「いびつな自分」を「否定」したり「排除」したりするのはマネジャーとして失格です。自分のいびつさを封印し、無理に周りに合わせたり我慢したりしていては、最高のパフォーマンスは出ません。また、「普通」や「正解」に合わせて自分のいびつさを「殺す」とみんなが同じ形になり、自分ならではのユニークのないコモディティ的存在になってしまいます。
②甘やかさず、伸ばす
一方で、「自分を大事にする」というとなんとなく自分がやりたいことだけを優先したり、自分がやりたくないことはしない、というように、「自分に甘くする」のと混同されることも多い気がします。
しかし、僕はそういう風に「自分を甘やかす」のは、セルフマネジメント的にはむしろマイナスだと考えています。
なんとなれば、すでに述べたようにセルフマネジメントとは自分の可能性を最大化することです。これに対して、「自分を甘やかす」=「スポイルspoil」は自分の可能性の芽を摘んでしまう恐れすらあります。
子育てでもそうですが、やりたいことだけやってていいよと「楽」や惰性に流れてしまうと、むしろ自分らしさは減ってしまいます。「楽」に流すと長期的には自分の可能性が減ってしまうのです。そうではなく、自分を本当に大事にするなら、自分の可能性を伸ばすためのストレッチも必要です。
短期的には面倒に思えたり困難に思えても、「乗り越えられる」と自分の可能性を信じること、それが本当の意味で自分を大事にするということではないでしょうか。これに対して「甘やかす」とは、乗り越えられるはずがない、と自分の可能性をハナから信じてあげないということに他なりません。
③世界の中に価値付ける
「自分を大事にする」ことの3つ目のポイントは「世界の中に価値付ける」ということです。
自分のいびつさを否定したり我慢したりせずに歓迎し、甘やかさずにそれを伸ばす。すでに述べた2つのポイントを大事にすれば、自分らしさを殺さずに無理なく生かせるようになってくるでしょう。
そしてその上で最終的に、その「自分らしさ」を社会の中に価値付けることによって、本当の意味で「自分を大事にする」ことが出来るように思います。というのも、人間は社会的な動物なので、自分を本当に大事に思えるためには、この世界の中で自分には価値がある、と信じられることが大事だからです。
その意味で、「自分を大事にする」というのはただ自分だけをむいた自己完結の行為ではないのです。
自分のいびつさを生かしそれを伸ばすことで、社会にどんな価値を届け、誰を幸せにすることが出来るのか。家族や会社、地域コミュニティでも、起業でも家事でもでも失敗でも対話でも笑顔でも構いません。重要なのはそれが「自分らしさ」を殺さず、生かすことです。
自分が自分にとってだけではなく、世界にとっても「大事」な存在だと信じられることで、自分をますます大事にできるようになるでしょう。
「管理」にとどまらず自己を「活用」し「開花」させ「価値付け」ていくことが本当の意味で自分を大事にするセルフマネジメントなのではないでしょうか。
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