急がれるコロナ後の組織作り
国際競争力を引き上げるための賃上げ
コロナ禍も3年が経過し、ビジネスに対する影響力もかなり小さなものになった。対面の機会も増え、海外出張もコロナ前のように頻繁にみられる。私生活でも、日本以外の国ではマスクの着用がほとんどなくなり、日本でもマスク着用のルールを早くなくそうという動きが出ている。スポーツやコンサートなどの劇場型エンターテイメントも観客を入れて楽しむことができる。
コロナ禍では、テレワークやWEB会議の普及など、数多くの変化があった。これらの変化はやむを得ない事情で行うことになったところもあるが、コロナ前は躊躇していた変化や実験的な働き方を試行する良い機会でもあった。
テレワークは2015年から多くの企業で試験的な導入や検討が行われており、ワーケーションや兼業解禁など、この3年間で私たちの働き方は大きく変化した。そして、コロナの影響力が収まり始めるとともに、これらの試験的な試みに対して、企業によって多様なスタンスを取るようになってきた。
今年に入ってからの象徴的な動きの1つが賃上げだ。賃上げの文脈では、ウクライナ戦争に端を発した世界的なインフレに応じたものと、国際競争力の強化を目的としたものがある。日経新聞の引用記事でファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が語っているように、コロナ禍で海外との分断が生まれたことによって人々のマインドセットが国内を重視するように内向き志向が強まった。賃金水準を欧米と同レベルまで引き上げ、国際的な雇用の流動性を高めることで、ビジネスの国際競争力を高めることが狙いだという。
Netflixの創業者CEO退任
コロナ禍の影響は、働き方の変化だけではない。巣ごもり需要と言われるように、家の中で楽しむことが出来る商品やサービスを取り扱う企業は売り上げを大きく伸ばすことができた。しかし、このような需要は一過性であり、コロナの影響力が下がってくると売り上げも下がってしまう。
Netflixは、このタイミングを世代交代の良い機会だと捉えた。創業者のリード・ヘイスティングス氏が退任し、現COOのグレッグ・ピーターズ氏が昇格し、テッド・サランドス氏とともに共同CEOを務める。同社は、広告ありの低価格プランの新設やオリジナル動画の制作方針の変更など、コロナ禍を見据えて事業戦略を見直している最中だ。そのような中、10数年前から進めていた世代交代に踏み切っている。
このことは、コロナ前と渦中・後の3時点でビジネス環境の変化が激しく、これまでの延長線上で考えることが危険だということを示しているようだ。コロナ直後には世界的に盛り上がりを見せていたEVシフトも、ウクライナ戦争による世界的な電力不足を背景に不透明さが増してきた。一方で、中国のEVメーカーであるBYDは2022年の販売台数を対前年比3倍超に急増させ、世界トップのテスラを猛追している。
世界で最もスタートアップの盛んな国となっているインドでも、ユニコーン企業がIPOに向けて、事業変革と組織再編に直面している様子が見られる。オンライン教育サービス最大手「バイジューズ」やホテル運営・集客受託「OYO」は大幅な人員削減と、国際競争力を高めるために事業変革が求められている。
ビジネスの不確実性が増しているにも関わらず、変化のスピードは一層早まっている。ひょっとすると、コロナ後の世界に向けたビジネス環境の変化は、コロナ禍による変化への対応よりも劇的なものになるかもしれない。