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情報商材・スクールビジネスの事件化/未経験・微経験フリーランスが直面する2029年問題

5月に発生した品川一家4人死亡事件は、父親が情報商材やスクールに依存していたことが注目されています。

2023年4月から始めたというXアカウントの返信は動画編集の受注に向けて様々な情報商材に手を出す一方、本人からの発信は薄い感想付きリポストのみという厳しさがありました。

これに対し、情報商材屋からはご冥福をお祈りする旨を表明しながらも、確率論を持ち出しながら「こういう人も居るよね」という論調で収めようとしています。

私のnoteでも幾度か情報商材・スクールビジネス周りについて警鐘を鳴らしてきましたが、それなりに読まれてはいるものの、どうしてもリーチできない層があり、力不足を感じるばかりです。

時折こうした情報商材やスクールに課金をしている方からもご相談いただくことがあるのですが、今回の事件に近いような形で「家庭を支えるためにこうした商材を経て現状を変えたい」という方も居られます。

こうした状況を踏まえると、事件化していないまでも大小のトラブルは存在しているのではないかと予測しています。今回のnoteはこうした情報商材やスクールビジネスに課金してしまう界隈のまとめと、今後の予測についてお話します。


なぜ情報商材の被害者は増えるのか

キャリア相談に来られる情報商材課金済みの方の中には、「しっかり比較検討したので大丈夫だと思います!」と熱く語られる方も居られます。こうした方々に「学校法人に行ったほうが良いのでは」「せめて就職支援に実績があるところに行ったほうが良いのでは」とアドバイスをしても、効かないことがあり、「自分の選んだ道は正しかったと第三者から証明して欲しい」というモチベーションで相談に来られている様子です。

どういった背景で入信に至るのかについてまとめました。

情報商材のカモになりやすい思考パターン

これまでキャリアに関する有料コンテンツやスクールへの課金をして来た方にも複数お会いしてきましたが、次の3点が共通として見られます。

  • 自身が設定したゴール(年収1,000万円など)を短期で達成したい

  • キャリアについて他人の意見を聞く場合、(その真偽はさておき)再現性が高いと思われる半歩先(半年〜1年程度)にロールモデルを求めたい

  • より良いキャリアに繋がる可能性が少しでもあるのであれば、自称成功していると言われる有料コンテンツに課金する

現状の低収入や、恵まれていないと感じている環境(実際は恵まれている場合もある)を打破したいという気持ちに漬け込まれている傾向が見られます。「ただちに現状を何とかしたい」という思いが強ければ強いほど、こうしたものにハマってしまいます。

「寝て起きたら異世界転生して無双したい」という状況に近いモチベーションに対し、「コツコツやるのが良いですよ」というアドバイスは響きづらいですし、既に一度信じてしまった教えを棄教することは困難です。自分の信じた人に対して疑問を感じている場合を除き、不機嫌に鳴って帰られることもありました。

フリーランスエージェントの増加と、一般人への過度な煽り

フリーランスエージェントの増加もまた、こうした過度に一般人をIT人材にするために煽るものが多く見られます。フリーランスエージェントの業態はSESと似ているものの、エンジニアを正社員として抱えるわけではありません。案件が決まったら売上になりますが、決まらなくても不良在庫を抱えるわけではないので気軽に始める方々が増えています。

そこに特に志があるわけではなく、初学者にとって都合の良いSEO記事やSNS投稿を継続しているため、安易にIT人材を目指す人材を増やす原因に加担しています。

未経験、微経験層が直面するで2029年問題

現在、人材界隈で話題になりはじめているのが2029年問題です。学習指導要領が変わり、2022年から高校で情報Iの授業が始まりました。私も教科書を買い求めてみたのですが、東京大学の坂村名誉教授が出されていることもあり、しっかりとコンピュータ・サイエンスの基礎が組み込まれていることが確認できました。

人事界隈で話題になり始めている2029年問題は「ITリテラシーが高い世代に対し、企業がDXに遅れることによって愛想を尽かされてしまうのではないか」という論調です。しかし、この動きは現状の未経験・微経験界隈にも大きな影響があります。

2029年4月、この世代が社会人になります。2031年にはある程度まとまって転職市場にも流入してくるでしょう。

少子化による人数減少などは多少はあるでしょうが、現状の未経験・微経験層で見られる「数ヶ月の実績不明のスクール教材で駆け出し、ただちにフリーランス化したり、すぐに成長意欲を失ったりして同じ業務レベルのタスクを繰り返している人たち」と、2029年以降の新卒がバッティングした場合、大きな差が産まれますし、十分な失注理由になるでしょう。

ベースの整った29新卒以降の登場と生成AIの成長により、急速に未経験・微経験界隈への簡易な業務委託案件がなくなるでしょう。すると今回のような悲しい事件も増えていくと考えられます。

駆け出してしまったフリーランスたちにお勧めしたい、正社員化

現状駆け出している皆様については、できることや顧客から頼られるポイントを増やし、29新卒以降に備える必要があります。そのためには似たような業務をこなすスタイルではなく、正社員を目指して教育機会を得つつ、できることのバリエーションを増やしたり、スキルアップしたり、スキルチェンジしたりすることが手堅いでしょう。

今後も手を変え、品を変えで搾取される未経験・微経験層

28新卒以前の人材が未経験・微経験でフリーランスを継続した場合、次のようなリスクに見舞われることを予想しています。

29新卒以降では、高校の段階でベースがある程度整っている2029新卒以降の世代に対し、動画編集やプログラミングなども含めて「IT人材になろう」系コンテンツは売れなくなっていくでしょう。

そのため、情報商材屋は誰に対して売り物を作るかというと28新卒より前の世代で未経験・微経験層で駆け出している人たちをターゲットにリスキリングなどの名目で新しい商材を売りつけてくることが考えられます。どこかでこのスパイラルを断ち切り、正社員キャリアに合流したほうが身のためです。

情報商材には薬事法のように規制が必要では?

個人による情報商材や、スクールビジネス界隈にも薬事法のような広告表現の規制が必要なのではと感じています。

  • 年収が100万円アップ

  • 私にもできた年収1000万円

  • フリーランスでいつでもどこでも働ける

  • 人生、逃げ切り などなど

再現性が必ずあるかのような年収アップなどの売り文句や、楽に稼げるような表現は罰せられる頃合いではないかと思います。今回の事件はそうした動きに繋がるに十分なインパクトがあると考えています。

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久松剛/IT百物語の蒐集家
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