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GAFAなどの巨大テック企業やtiktokなど国内巨大テック企業に対する中国の対応を整理する

アメリカからの中国への規制が強化されているニュースは、日本でも報道されたりSNSでたくさん投稿されていますね。一方で、中国がアメリカを中心とした巨大テック企業に対してどういう姿勢をとっているかは中国以外ではほとんど報道されないので、意外と知らない人が多いのではないかと思います。

最近日本でもGAFAなどに対して規制を強化しようという姿勢があります。個人的にはもっと前から行うべきだと思ってました。

アメリカの影響力が大きすぎる日本は難しい立場なのでしょうが、市場の独占や詐欺広告放置なんかは酷すぎるなと感じています。また、この記事の議論では中国のアリババやテンセントなどには一切言及がないことが気になっていました。

■海外での中国IT企業への規制への影響と海外プラットフォームへの中国の規制

中国ITテック企業は海外、特にヨーロッパによるITプラットフォームへの規制についてはかなり意識していて、学界での議論も盛んです。

最もインパクトがあった2022年のEUで施行された「デジタル市場法(DMA)」法律は、ITプラットフォーム大手の市場支配的地位の濫用を防ぐことが目的。大手IT企業6社が提供する計22のサービスが規制対象となる「ゲートキーパー」なるものに指定されていて、対象サービスにはGoogleやMetaの他、中国バイトダンスのtiktokも対象なのです。

「ゲートキーパー」が違反した場合の制裁金の規模として、最大で全世界売上高の10%と定義されています。つまり、tiktokもこの法律に違反したとされれば、前年度の世界全体での売上高の10%を上限とする高額の制裁金が課される可能性があるということです。

GDPRの時もそうでしたが、EUはこういった規制について先行してルール化してくる印象。ただ、中国の行動もかなりはやいです。

中国側の巨大ITへの規制といえば、まずはGoogleの話になると思います。2010年3月23日にGoogleは中国市場からの撤退を発表しましたが、当時の海外メディアは、言論の自由への侵害や政府による内容審査について散々批判していたと思います。ただ、今振りかえってみればどうでしょうか。

その地域の法規制(新たに施行されたものも含めて)を守ることにより地域のビジネスが発展するという観点で見れば、結果としては海外企業による独占を防ぎ、Baiduなどの国内企業が大きく伸びました。

欧米もそうですが、中国でもデータセンターの設置やデータの扱いについてはシビアで、基本的には国内にデータを保管しなければなりません。2017年6月に施行された「ネット安全法」に従って、例えばアップルは2018年に貴州省でiCloudのデータセンターを作り、中国のアップルユーザーのデータを中国国内に保存するようになりました。

■中国国内の成長しすぎたジャイアント企業をどう規制しているのか

海外のプラットフォームに規制を設けてコントロールしても、国内のテックジャイアントたちが好き放題やっていては問題です。中国のインターネット企業は急成長を遂げてきましたが、急成長の負の側面として無秩序な市場競争や独占行為も一部にありました。

なかでも、企業側のデータ収集や利用における適切なルール作りが不十分だということや、インターネットプラットフォーマーの独占的地位と市場支配力が新規参入企業の参入障壁となっているとの問題提起が盛んに行われています。

これは、合併や買収による過度の独占が進行し、もはや公正な競争環境になっていないという点。さらに、ビッグデータやアルゴリズムなどにより巨大ITの独占や寡占がどんどん進む構造という、アメリカのGAFAなどと同様の問題。プラットフォームの独占行為を回避し、社会的責任を強化するという目的で、欧米で様々な規制が作られるのと同様に、中国も以前から関連政策を次々とリリースしました。

例えば、2019年に「EC法」、2021年に「反独占委員会がプラットフォーム経済領域のための反独占指南」、2022年に「反独占法」の修正案といった感じです。

そして、これらの政策によってビッグデータやアルゴリズムによる差別化価格への禁止、優位的市場地位による出店の二社択一など不公平なビジネス活動への取り締まりが進んでいました。

二社択一の代表的な企業であるアリババに対して、2021年4月に180億超の罰金が課されたことは日本でも報道されたかと思います。海外メディアは政府からのジャックマーやアリババへの仕返しとの報道も多かったですが、実際にアリババのサービスを利用したときに不公平を感じていた中国ネット民から見れば、妥当だと思う人も多い訳です。

また、10億以上のネット民がいる中国では、数億のユーザーを持っているプラットフォームも多数あります。これほど巨大なプラットフォームへの監督管理も、社会の安定におけるネット民への管理と世論環境の維持も正直相当な難題ですね。

この難題に関しても、中国は早い段階でプラットフォームの社会的責任や監督管理責任を考えていて、2021年9月に「データ安全法」、2021年10月に「インターネットプラットフォーム分類指南(公開草案)」、「インターネットプラットフォーム主体責任指南(公開草案)」、2021年11月に「個人情報保護法」、「ネットデータ安全管理条例(公開草案)」などプラットフォームのゲートキーパー権利を制限しユーザーを保護する法的対応があげられます。

プラットフォームが過剰に自主規制を行なっていることでコンテンツが削除されることなどはコンテンツ制作側やユーザー目線からは大きな問題ではあるのですが、メカニズム上は賢いやり方だと思います。

例えば、福島の処理水が炎上したりプラットフォームで過剰に削除されたりする例を以前紹介しましたね↓

このように中国の国内外のテック企業への規制は日本よりもずっと先行していて厳しいものです。国内でTwitterやGoogleが見えないことは中国ウォッチャーの皆さんはご存知かと思います。言論統制や過剰すぎる規制と考えることもできます。

ただ、こうした規制があったことで中国企業のサービスが発展している側面があることも事実だと思います。日本国内から世界で通用するようなITのサービスが生まれるためには規制を取り入れながら推進していくことが必須で、そのために中国を参考にするのは悪くないと思います。

(参考資料)

https://m.qikan.cqvip.com/article/ArticleDetail?id=7111418355



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中国情報局@北京オフィス
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