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住宅ローン利用者が高齢化している問題とリバースモーゲージ活用法

 マイホームを購入することは、数十年先までのローン債務を背負うことになり、なかなか決断に踏み切れない人達も多い。特に最近では、収入の減少によってマイホームの購入年齢が上昇していることも、新たな社会問題として浮上している。

35年固定金利ローン(フラット35)の利用者調査(2022年)によると、新規契約者の平均年齢は、建売住宅が40.5歳、新築マンションが44.0歳、注文住宅が45.1歳となっており、16年前の調査と比較すると4歳~7歳の高齢化がみられる。3000万~4500万円の住宅購入額に対して約8割をローンで賄っているが、40代から35年ローンを組むと、完済するのは70代後半となり、定年退職後も返済を続けなくてはいけない。

しかし、60代以降は老後の介護資金を確保する必要もあることから、住宅ローンの処理は、新たな終活作業としても重要な課題になってくる。法律では定年延長が義務化されたことで、金融機関は住宅ローン完済年齢の上限を引き上げる方向にあり、今後は80歳近くまでローンを返済する世帯が増えていく。しかし、現実問題として高齢になるほど収入は減少していくため、自宅には住み続けながら、所有権を売却して身軽になりたいというニーズは高まることが予測されている。

【リバースモーゲージによる住宅建て替え】

 高齢者がマイホームを活用して老後資金を確保する方法としては、リバースモーゲージという方法もある。こちらは、所有しているマイホームを担保に融資を受けて老後資金として活用することができる。借り入れ後は、利息のみを毎月返済して、家主(老夫婦)が亡くなった後に物件が売却されて、元金が一括返済される仕組みになっている。

マイホームを手放さずに、まとまった資金を確保できるのは利点だが、住宅ローンの返済が残っている物件では、融資後に手元に残る資金が少なくなってしまうことや、住宅ローンよりも金利が高く設定されており、変動金利制のため、金利水準が上昇していく時代には、毎月払う返済利息も高くなってしまうのが欠点になる。

国内のリバースモーゲージは、大手の銀行が独自の商品を開発している他、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)が「リ・バース60」というリバースモーゲージ型の住宅ローンを立ち上げて、民間金融機関との提携により商品化をしている。

高齢者が、いま住んでいるマイホームの老朽化により、リフォームや建て替え、新しい物件への住み替えを検討しているケースで、リ・バース60型ローンを利用すると、60代や70代からでも長期の融資を受けられるようになり、存命中は利息分のみを毎月払うだけで、元金は死亡後に一括返済される仕組みになっている。

死後の一括返済方法には、相続人が遺産の中から債務を解消する「リコース型」と、相続人に返済義務は無く、家の売却で債務が精算される「ノンリコース型」があるが、利用者の99%はノンリコース型を選択している。

利用者の平均属性は、申込年齢が69歳、年金を主体とした年収は388万円。マイホームの建て替え資金として必要な平均額 3000万円のうち、1600万円を同ローンで調達している。毎月の返済額(利息のみ)は、2022年時点の金利水準で 約3.4万円となっている。利息は生涯にわたり払い続けることになるが、相続する子供が居ない夫婦、または単身の高齢者にとって、死亡後に家が処分されることは、むしろ好都合であり、利用実績は前年比20%増のペースで伸びて、人気が高まってきている。

一方、リ・バース60の欠点は、借入限度額が担保評価額の50~60%までとなるため、50%前後の自己資金が必要になることと、変動金利制のため、金利情勢によって毎月の利息返済額が高くなる可能性があることだ。標準で設定される金利も、2022年の時点で年率2.5~3%となっており、通常の住宅ローンよりも1.5%程度高い。

リバースモーゲージにも利点と欠点があるため、その両方を理解した上で、人生プランに合った商品を選択していく必要があるが、不動産取引や住宅金融の詳しい知識が必要になるため、サポート役となる専門家も必要になってくる。

個人住宅についての金融サービスは急速に進化しており、上手に活用すればマイホームに投じる生涯資金を減らしたり、人生のステージ別に家を住み替えていくこともできる。日本でも、金利は上昇へと向かい始めていることから、住宅ローンの見直しをすることで、将来の返済負担を軽減できる潜在顧客層は、数千万世帯の規模になるとみられている。

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