心理的安全性のための恥と失敗のすゝめ
お疲れ様です。メタバースクリエイターズ若宮です。
今日は「心理的安全性」のためには、実は恥をかいたり失敗することも大事かも、ということについて書きたいと思います。
※こちらはVoicyで「#心理的安全性の作り方」というお題で話した内容を記事化したものです。聞くほうが良い方はVoicyをどうぞ
心理的安全性は「当たり障り」がないように気を使うことではない
「心理的安全性」という言葉をよく聞くようになりました。
数年前にGoogleが高パフォーマンスのチームを研究し、能力やスキルよりもチームのパフォーマンスに実は「心理的安全性」との相関があることを見つけ、ここ数年チームマネジメントの分野で注目されています。チームの心理的安全性が高まると、皆が気兼ねなくコミュニケーションを取り、新しいことにチャレンジする勇気も湧きます。そうすることで結果的にチーム全体のパフォーマンスが上がるわけです。
しかし、この心理的安全性については誤解されがちなところもあります。「心理的安全性」のためにはチームの中で他のメンバーにダメ出しをしてはいけない、とか「ネガティブなことを言ってはいけない」と思い込むと、逆に心理的安全性が下がってしまうのです。
本当は間違っているとおもっても、心理的安全性が下がることを気にして誰も指摘しない。そうしているうちに、チーム内のコミュニケーションが減り、かえって「物言えぬ組織」になってしまっている。これはむしろ心理的安全性が低い状態です。言いたいことも言えないこんな世の中じゃPOISONです。
一方、心理的安全性が高いチームは、家族のように、思っていることをちゃんと伝えます。時には喧嘩になることもあるでしょうが、それでも簡単には関係は壊れない、という信頼関係があるからしっかり言いたいことはいう。それが心理的安全性が高い状態です。
恥をかいたり失敗することも大事
今年、日本から世界で活躍するメタバースクリエイターを羽ばたかせるプロダクションとして、メタバースクリエイターズを立ち上げました。
この会社はJapan to globalをめちゃくちゃチャレンジしていくので、そのために今あらためて英語をがんばっています。
社内のslackでの公用語を英語にしたり、打ち合わせも半分くらいは英語でやったり。そして今度、人生初、英語でのピッチコンテストにエントリーしました。
先日Takeoff Tokyo主催のコンテスト参加者向けのピッチトレーニング会があり行ってきたのですが、他の参加者達はみんなすごく流暢な英語を話し、堂に入ったプレゼンテーションをしていました。
その中で僕は、おそらく最低レベルでした。準備不足だったところもあり、英語でのコミュニケーションも散々…(いちおうTOEICとかは900超え持っているのですが全然話せない…)
それでも、途中で逃げ出さずに、ちゃんと人前でプレゼンテーションをやってみて、恥をかいて、よかった、と心から思いました。これまでの自分だったらもしかするとなにか理由をつけてその場から逃げてしまったかもしれません。でも、ちゃんと、やってみた。そして恥をかいた。するとそれは次はもう、「やれること」になります。
年齢や肩書が上がるほど、恥をかくチャンスが減る?
恥をかいたり失敗する、というのは裏を返せばチャレンジした証でもあります。もちろん、失敗しないように、恥をかかないように準備をすることは大事です。先日の会で僕の出来が悪かったのは明らかに僕の準備不足でしたし、その点は反省です。
ですが、結果以上に、「挑戦した」ということ、もしかしたら失敗するかもしれない、恥をかくかもしれないと覚悟を持って挑戦した、ということが大事だし、恥をかくことで、次に向けての成長があるんだと改めて感じました。
恥をかかないように、失敗しないようにと思ってばかりいると、どんどん保守的になってしまいます。特に年を重ねていくと、その傾向が強まると感じます。
僕もアラフィフになり、今回改めて気づいたのですが、なんとなくそこそこいい年齢になると「恥をかく」機会が減るなーと。
なんでしょうね、年齢が高くなったり、経験とか肩書きがつくと、「恥をかく」ということを避けるようになる。子供の頃や若い時と比べると失うものが大きい感じがするのかもしれません。
だからこそ意識的に、年齢が上になったり役職や肩書がついた人ほど「恥をかく」ことを意識的にした方がよいのではという気がします。
「不安」を払拭するため、リーダーやマネジャーほど恥をかいたり失敗しよう
「心理的安全性」についての話に戻します。
心理的安全性が低下する要因としては、「四つの不安」があると言われています。一つ目は、「無知だと思われる」不安、二つ目は、「無能だと思われる」不安、三つ目は、「邪魔していると思われる」不安、四つ目は、「ネガティブだと思われる」不安だそうです。
全ては「不安」、そして周囲からどう思われるかへの不安が、心理的安全性を低下させるのです。これが続くと、周囲の評価を恐れて行動を起こさないようになってしまうでしょう。そうなるとチーム全体が硬直化し、新たなシナジーが生まれにくくなります。チーム内に「失敗したらどうしよう」「恥をかいたらどうしよう」という恐れが蔓延すると、心理的安全性は低下してしまう。
逆に考えると、チーム内で「失敗してもいい」「恥をかいてもいい」という雰囲気があると、心理的安全性は向上するでしょう。
そしてそのためには、リーダーやマネジメントが恥をかいたり、失敗したりすることを率先して行うことが大切な気がします。
先程述べたように、年齢とともに「恥をかくこと」や「失敗すること」に対する恐れは増していきます。また、「20世紀型のリーダー像」でいうと「失敗してはいけない」というイメージもあったかもしれませんが、リーダーがそれに囚われすぎると、チーム内に「失敗できない」という空気が蔓延してしまいます。
反対に、リーダーが日常的に失敗を犯したり、恥をかいたりする姿を見せることで、チームメンバーは「失敗することがダメなことではない」、「チャレンジするからこそ、恥をかくこともある」というメッセージを受け取ります。それにより、チーム内の心理的安全性が向上し、一人ひとりがチャレンジしやすい環境になるかもしれません。
「完璧なリーダー」は業務遂行上ではハイパフォーマンスで、みんなの尊敬を集めるかもしれませんが、その分、チームメンバーにも「完璧であらねばならない」というプレッシャーを与えてしまうかもしれません。適度なプレッシャーはよいパフォーマンスを引き出す上では重要ですが、「たった一度も失敗できない」というストレスの元で伸び伸びと仕事ができるでしょうか?
もちろん、大事な局面で失敗し続けたり、失敗の責任を感じていないようなリーダーは問題です。しかし、失敗から学び、それを次に活かそうとする姿勢を見せ続けてさえいれば、完璧なリーダーよりむしろ恥をかくリーダーの方が、チームの成長やパフォーマンスを高めるのではないでしょうか。なぜなら、彼らは「失敗はチャレンジの証であり、成長のきっかけである」というメッセージを、チームメンバーに自らの行動で示しているからです。
「恥をかいたらどうしよう」「失敗したらどうしよう」と思うのは、誰しも同じですよね。でも、その不安が行動や発言を阻害してしまうといけない。それを解消するために、リーダー自ら恥をかくこと、失敗することを恐れず、率先してその姿を見せる。そうすれば、チームメンバーも「このチームでは失敗が許されるんだ」「ネガティブに受け取られることはないんだ」と感じ、自由に意見を出したり、新たなチャレンジをできるようになる。その意味で、「リーダーの恥や失敗」がチームの心理的安全性を向上させるといってもいいかもしれません。
失敗や恥ずかしさへの寛容性
失敗や恥をかくことに率先して向き合うリーダーは、心理的安全性の面でチームに対してプラスのメッセージを発します。
そしてさらに「恥」や「失敗」の経験は、自身の「寛容性」も高めてくれる気がします。
どんなことでも最初から完璧にできる人なんていません。どんな人にでも、どんな仕事にでもDAY 0の初心者であった時があります。
先ほど述べたように、「恥をかく」という経験は次に繋がります。ただし、それから目をそらしたり無かったことにしてしまうとダメで、ちゃんと失敗経験から学ぶことが重要です。そして恥ずかしい経験を次につなげることができると、「恥をかく」こと自体何でもない、と思えるようになり、自分に対する寛容性も高まります。自分で自分を許せるゾーンが広がるのです。
一方、恥や失敗を恐れてそれを避けると自分が許せる範囲がどんどん狭くなっていく感じがします。あれもだめ、これもだめと言っているうちに足場が小さくなり、息苦しい人生になってしまう。そして自分への寛容性が失われると、そのうちに、そのストレスを他の人にもぶつけるようになります。「オレも我慢してるんだからお前も我慢しろよ」みたいな。
自ら恥をかいたり失敗することは、寛容性の面でもメリットがあるのです。
失敗や恥を恐れない態度は、チームの中で共有されます。そしてそれが「心理的安全性」を高め、チーム全体の活力を引き出します。
これは子育てでもそうで、自分の失敗を話すことで、家族の中の心理的安全性も高まる気がしていまう。かつては、無理をしてでも「親は完璧であらねば」という考え方もあったと思いますが、それももしかしたら単なる親のエゴだったのではという気すらします。
もちろん、家族から「恥ずかしいからやめて?」と本気のたしなめをいただくこともありますので、程度はありますし、「オレは恥ずかしくないから」と開き直ってはいけませんが、親が恥をかいたり失敗したりをポジティブに捉えてチャレンジしていたら、自然に子どもたちも恥や失敗を恐れずチャレンジするようになるのではないかという気がします。
大人のみなさん、恥の多い生涯を送っていきましょう!
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