10月18日朝刊の広告から、ファミマの戦略を想像してみる
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10月18日朝刊の広告から、ファミマの戦略を想像してみる

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読者の皆さんは、10月18日朝刊のこの広告、ご覧になりましたか?
ファミリーマートが「業界1位のコンビニ」(=セブンイレブン)を対象とした比較広告です。

ちなみにヘッダーの写真は渋谷駅の屋外広告です。こちらは同じ戦略を屋外広告版に変換したもので、どちらも強烈なインパクトを放っています。

日本では、比較広告があまり一般的ではないので、とかくその手法ばかりに目が行ききがち。しかしよく見ると、このキャンペーンは単純な比較広告ではなく、その背後に緻密に考え抜かれた戦略があることが見て取れます。

本記事では、筆者が感じた「ファミマの戦略」をいくつかのポイントにまとめて記したいと思います。

(1)王者とチャレンジャーという構図の意味

ファミマはこの広告で、セブンイレブン=王者、ファミマ=チャレンジャーという関係性を示しています。この関係性が消費者の心にうまく定着すると、以下のような効果が期待できます。

(1−1)王者&チャレンジャーとそれ以外、という構図を作ることができる

セブンイレブンが王者であり、自社はチャレンジャーであれば、その帰結として、それ以外のプレイヤーは「それ以外」という十把一絡げな括りになります。
これにより、消費者の心の中のコンビニ業界地図では、主役級の2社とその他の企業というグルーピングがなされ、それに伴ってマインドシェアもその線を境に離れていくのではないかと思われます。
その他のプレイヤーがこれを回避するためには、ファミマのコミュニケーションに匹敵するインパクトを出していくことが必要になりますが、すでにチャレンジャー席は埋まっていますので、それはかなり難易度が高いことになります。
このように考えると、王者・チャレンジャーという競合関係は、それが一旦成立すると特にチャレンジャーにとっては資産として機能していることがわかります。競合が保有している「王者」というポジションをレバレッジする形で、自社をポジショニングしている、ということですね。

コカ・コーラとペプシの競争で、ペプシが仕掛けたペプシチャレンジは有名ですので、ご存知の方が多いのではないかと思います。そして世界のコーラ市場がこの2ブランドによって席捲されていることは、ご案内の通りです。

(1−2)この構図により2社間のゲームがファミマからの一方的な攻勢となる
ファミマとしては、この宣言に対して、セブンイレブンからの反論・反撃を望んでいるはずです。その流れでファミマ対セブンの議論が起きたら、再宣言・反論を重ねることによりさらに自社に話題・関心を集中できるからです。つまり、セブンは迂闊に反論するとファミマに塩を送ることになってしまう訳です。
加えて、特に日本では王者側からチャレンジャー側に反論すると、弱いものいじめのようにも見えてしまうことから、なかなか正面きった喧嘩が仕掛けにくい、という事情もあります。
ので、結果として、ファミマが仕掛けているこのマーケティングゲームは、チャレンジャーが王者に挑戦し続ける、一方的な攻勢になると思われます。そして攻勢が重ねられるたびに、「美味しさでセブンに挑戦する」ファミマのイメージは強固になっていく、という次第。


(2)競合の強みを逆手にとる

セブンイレブンの強みとして想起されることの1つに、PBであるセブンプレミアムの品質・美味しさがあると思います。
これはつまり、消費者の心の中でセブンイレブンは「美味しさ」ポジションを確立しており、他社をリードしている、ということ。そこに調査データを使って「それはイメージの世界だけのことである」と自社の美味しさをアピールするこのやり方は、セブンイレブンが持っている美味しさのオーソリティをやはりレバレッジして、自社に取り込むという構図になっており、極めて戦略的です。
セブンプレミアムの中でも美味しさの象徴的な商品である、ハンバーグで調査をしているところも、細かい点ですが巧妙だと感じます。「ハンバーグで互角なら、では他の商品では?!」という想像を消費者の心に引き起こす絶妙なチョイス。

(3)大目的は、ファミマルのロンチよりリポジショニング

コミュニケーションを通じたメッセージは、普通に読むと新PB ファミマルのお披露目に見えます。

しかしここまで記してきたように、このコミュニケーションに込められた戦略はそこを大きく超え、ファミリーマートというブランドを(美味しさを軸に)リポジションすることです。

コンビニでは数千という商品が品揃えされるので、ヒット商品ひとつ飛ばすことによる効果は限定的です。しかしファミリーマート=一番美味しいコンビニ、という認知が出来れば積極的にファミマを選ぶ強い理由が構築されます。

「一番美味しい」というポジションを作るのは、セブンイレブンの美味しさイメージが非常に強いために、そう簡単にいかない、と思われる向きもいらっしゃるかもしれませんが、それでもなおこのリポジショニングには大きな意味があります。なぜなら広告でも語られているように、今までは希薄だった美味しさというイメージを、その象徴であるセブンイレブンと比較することにより励起させられることになるからです。こうしてできたイメージに、今後の商品開発や、消費者による評価のコミュニケーションをリンクさせていけば、「美味しさ」のイメージが揺るがぬファクトとなり、コンビニ市場は本当に、味を軸とした、2社とそれ以外、という競争構造になるかもしれません。

以上、勝手に今回のファミマのコミュニケーションの背後にある戦略を推測してみました。最後にもうひとつ。

(4)おまけ:戦略よりも実行が大変

今回のファミマのようなコミュニケーションは、企画するのも大変ですが、実行するのはもっと大変です。なぜならばマーケティング部門が起案し、マネジメントに諮る時に

・もし競合が反撃してきたらどうするんだ?

・炎上したらどうするんだ?

といったような懸念が示されがちで、これに阿らない形で企画を通すのに大きなパワーが必要だからです。(これに阿り、足して二で割る形でこれらの声を取り入れていくと、企画がどんどん丸くなり、インパクトがなくなります)

自動運転やワクチンの議論でも見られるように、何か新しいことに取り組むとき、人々はゼロリスクを求め、ありとあらゆる事態を想定しようと、必要以上に防御的になります。企画を実行するには、これを払拭しなくてはならないのです。

そういう意味で、今回の施策を企画された、足立さんをはじめとするファミマのマーケティングチームの方には、大いなる敬意を表するものです。



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9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。