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お金の話と人手不足の話はつながっている

お金の話は難しい。 なぜ難しいのだろうかと考えると、過去の高度成長期であれば、日本経済は右肩上がりに伸びており、家を買っても地価が上がっていた背景があって、しばらく住んでも買った以上の値段で売れた。また定期預金の利率が5%を超えるなど、現在の株式投資の一般的なリターンと同じかそれ以上の預金金利だったため、リスクをとって投資しなくても銀行に預けておけば安全かつ確実に資産は増えていった。

しかし、現在はそうではない。 日本は人口が減り始めており、それに伴って 経済の規模は縮小するのが必然となっている。海外に進出すれば良いといっても島国である日本は物理的・心理的にそう簡単には行かない部分も少なくない。 こうした状況の中で、賃金は上がらないし、またここしばらくはゼロ金利政策ということで、定期預金に預けておいたとしても 利息はほとんどないようなものである。そして人口が減るということは 一般的には土地の需要が減少する分、地価も 下がることになり、下手に不動産を買えば「負動産」になりかねないという状況が起きてしまっている。

加えて、高度成長期に比べると人々のキャリアパスも特に若い人を中心に複雑化しており、転職することも当たり前だし、またここに来て副業するといったことも一般化しつつある。こうした中で、 みんなが似たようなキャリアパスをたどり、似たような お金に対する対処すれば良い、という時代はすでに過ぎ去った。

ところが、なかなか人間の意識はこうした変化に追いついていない。いまだに「昔は良かった」的な反応も、特に一定の年齢以上の人では多く見受けられる。そして、かつての感覚で、国・行政機関が丸抱えでいいようにしてくれるのが当たり前だという考え方の人も少なくないのだろう。 昨今始まった 「資産運用立国」の施策についても、若い人を中心にそれを歓迎する動きもあれば、一方で、国民ではなく国がどうにかするべきことであり、国のやることなどは信用できないといった、いささか矛盾する(と筆者は感じる)反応の人に大きく分断されているように思う。これを機に「売らんかな」という動きが多々見られる金融機関の姿勢も、国民の不信感を助長しているのだろう。

こうした状況で日本人が豊かに暮らしていこうと思えば、人間がやらなくて良いところはできる限り デジタル化を進めて関わる人数を減らし、一方で人口の減少によって人手不足になっている領域にマンパワーを当てて、全体として社会が効率化され、 それが賃金の上昇につながっていくというスパイラルの構図を描きそれが広く共有されなければいけない。

細かいことを無視してとても単純に図式化して言えば、これまで10人の人手がかかっていた業務を、 DX 化などによって3人で回るようにし、DX化に伴うコストを人件費 2人分で済ませられるとすれば5人分の人件費が浮くことになる。そうすれば賃金も数%ではなく数十%のレベルで増やすことができる、といった形の効率化を進めていかなければいけないのだろう。 そして こうした業務に関わっていた7名の人は、人手不足が言われる他の仕事につくことができれば、世の中全体としての人手不足も解消していくのだと思うし、効率化が社会全体で起きるなら、この7名の賃金も上がるだろう。

物事はさほど単純にはいかない、ということは承知しつつ、大きくはこうした流れに沿っていかなければ、日本人の賃金が上がらない問題や人手不足の問題は解消していかない。

しかしながら、人手がいないにもかかわらず、またDX化が進んでいないにもかかわらず、単に人が足りないという声だけが大きく、社会全体を効率化させていこうという動きにはなかなかなっていないように思う。賃金を上げたとしても、人手が増えるわけではないのだ。

実は、お金の話と人手不足の話といった社会全体の問題は、根っこのところで繋がっている問題である。単純に賃金の上昇を図りましょう、という掛け声をかければそれが実現するというようなものではない。

全体としての社会の仕組みを考えながら動いていかないと、お金の問題も人手不足の問題も解決しないし、他の社会課題についても同様である。


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