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会えない時間に愛を育てない勇気。

会えない時間が愛を育てる。

という説がある。

年末年始のこの時期、帰省などの影響で恋人や想いを寄せる相手に会えない人は多いだろう。そんな会えない時間、相手を思う時間にこそ愛が育まれるという一説。

今日はそんな説を少し違う角度から考えてみた。

■会えない時間に育つ3つの感情

突然だが、僕はポリアモリーという恋愛スタイルを選択している。

ポリアモリーとは、合意を得た上で複数の人と同時に恋人的な関係を持つ恋愛スタイル。「相手を縛らない」という意味ではfacebookのステータスにあるオープンな関係(オープンリレーションシップとも近い考え方だ。

これまでポリアモリーについて書いたシリーズはこちら

今日はそんなポリアモリー経験から「会えない時間が愛を育てる」説について考えてみた。

僕はポリアモリーを実践してから会えない時間に相手のことを考えるのはやめた。きっかけは「会えない時間 = 他の恋人と会っている時間」かもしれないからだった。

「今、(想いを寄せる)あの人は何をしているだろう?」

これはポリアモリーに限らず、誰にでもある感情だ。ただポリアモリーの場合、それは他の恋人と会っている時間である可能性が高い。そんな時間に育つ感情はと言うよりも不安、場合によっては疑心嫉妬心になってしまう。

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それらのネガティブな感情を持たないためにつくったルールが「会えない時に相手のことを考えるのはやめる」だった。

しかし「会えない時間が愛を育てる」説からすれば、このルールは愛が育ちにくいルールということにもなる。

会っている時間だけで愛は育てられるのか。それがポリアモリーを実践して最初にぶつかった壁だった。そしてその突破口になったのは、意外にもある物理学だった。

■そもそも「会えない時間」なんて存在しない?

物理学の世界には「時間の捉え方」について説が複数存在する。その一つに「現在主義」という捉え方がある。

現在主義をざっくり言えば

1.実在するのは現在だけ。過去も未来も存在しない。
2.現在の中でも実在するのは目の前で起こっていることだけ。

ということ。図にしてみるとこんな感じだ。

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「いやいや、少なくとも過去は存在するでしょ」と思う人もいるだろう(僕も最初は思った)。

しかしそれに対してイギリスの物理学者ジュリアン・バーバー博士は

「あなたが先週存在したという唯一の証拠は、あなたの記憶です。記憶は"現在の"脳が生み出します。」

と主張する(らしい)。そう言われてしまうと返す言葉がない。

こういった時間や記憶の捉え方については「もはや哲学の領域」とも言われる。だとすると、それが正しいかどうかより「そう捉えて、生きてみる」ことにこそ、この説の意味がある。僕はそう考えた。

例えば、現在主義の「今目の前で起こっている事実以外は、すべては脳内で作り上げた空想に過ぎない」という視点で「会えない時間」を捉え直してみるとこうなる。

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会えない時のAさんなんて「僕の脳内にしか存在しないもの」。そんな存在しないものに対して育てていた愛やら不安なんて感情は無に等しい。

「会えない時に相手のことを考えるのはやめる」というルールはここから生まれた。

もちろん「実際にそう思っている」というより、ポリアモリーを実践する僕としては「そう捉えた方がネガティブな感情を回避できる」という意味の方が大きかった。

しかしこのルールを採用するようになってから、僕にとっての愛情表現は目の前にいる人にきちんと伝えることがすべてになった。

そしてこの影響は恋愛以外にも派生していく。

■現在主義という「一次情報至上主義」

これまでの話をあくまでも哲学的な話として「現実とは別」とすることもできる。

しかし近年、現実社会の権化とも言えるビジネスの世界で「哲学」が注目されはじめた。今は「アート」がビジネスの世界でのホットトピックだが、それが哲学に移行するのは時間の問題だ。

哲学が現実社会とかけ離れたことではないとしたら、先ほどの現在主義も空想的な恋愛に限った話でない。

現在主義を現実社会やビジネスと結びつけて表現するとしたら「一次情報至上主義のはじまり」だ。

一次情報とは「自分が五感を通じて得た実体験」であり、それは現在主義にとって「唯一、存在する」とされるものだ。

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身近なケースで例えると、Aさんに「小島さんのことが嫌いだ」と言われる体験は一次情報だが、Bさんに「Aさんは小島さんのことが嫌いって言ってたよ」と言われる体験は二次情報だ。

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これを現在主義の視点で捉えるとこうなる。

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つまり「Aさんは小島さんのことが嫌いって言ってたよ」という存在しない(可能性がある)二次情報に対する感情は無に等しいとするのが現在主義であり、一次情報至上主義だ。

つまりビジネス上でも「○○市場は○○億円と言われており〜」といった二次情報は無に等しく、自分で実際に見聞きした情報だけを元に判断、行動することの重要性が問われているということだ。

■会えない時間に愛を育てない勇気

今、世界は二次情報や三次情報に溢れている。僕たちはSNSやネットを通じて日々「○○さんがこう言っていた」という情報に囲まれてくらしている。

しかしそんな二次情報、三次情報によってネガティブな感情が生まれそうになった時は現在主義を思い出してほしい。そんな情報や感情は無に等しいのだ。

そういった意味で「会えない時間に育つ愛」もまた無に等しいのかもしれない。恋愛や結婚のスタイルも多様化するこれからを生き抜くには「嫌われる勇気」と同じくらい「会えない時間に愛を育てない勇気」が必要なのかもしれない。


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小島 雄一郎
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