見出し画像

日本のスタートアップ振興施策に、グランドデザインはあるか

日本政府や東京都が相次いで日本の相次いでスタートアップ振興施策を打ち出している。

いつも思うことであるが、今回もやはりどこに焦点を絞ってスタートアップを振興するのか、どのようなエコシステムによる成長シナリオを想定しているのか、ということがはっきり伝わってこない、というのが私の印象だ。

 スタートアップといえば「シリコンバレー」という言葉が条件反射のように出てくる人が多いのが日本だが、そのシリコンバレーがあるアメリカのスタートアップのエコシステムは、誤解を恐れず非常に単純な言い方をすれば、大きな資金力を持った VC がスタートアップに対して十二分に資金提供し、それによってスタートアップは、大企業とのオープンイノベーションに頼らなくても、成長に必要な条件をお金で買うことが可能になっている。

アメリカ政府は、特段スタートアップ振興ということを正面に掲げておらず、新興企業のモノやサービスでも抵抗なく受け入れる国民性もあるのだろうが、政府としてはスタートアップを調達先にすることで、間接的にスタートアップの成長に寄与している。これは、日本政府や東京都が示す行政の関わり方とは、対照的とまで言わなくても、かなり異なるといえるだろう。

一方で、ヨーロッパ型の典型としてフランスの状況を見れば、経済大臣の時代から現大統領であるマクロン氏がスタートアップ振興を国家政策としてこの10年ほど推し進めており、アメリカとは対照的に大きく行政が関与しているとみることができる。

フランスも、アメリカに比べれば VC の持っている資金力は相対的に小さいために、大企業とのオープンイノベーションをスタートアップ成長の原動力として活用しようとしている。それを端的に表しているのが、スタートアップのイベントではなくオープンイノベーションのイベントと言うべきVIVATECH・ビバテクノロジーだろう。このイベントでは、大企業のブース内にスタートアップが同居する形で出展しており、まさにオープンイノベーションを体現する見せ方になっていて、アメリカ型のスタートアップイベントとは一線を画すものだ。

こうした、2つの異なる対照的なスタートアップ・エコシステムのお手本の中で、日本はどのような道を取ろうとしているのだろうか。オープンイノベーションを推進するように見える点ではフランス型をとるようにも見えるが、一方でシリコンバレーを意識している点ではアメリカ型を志向しているようにも見える。

ユニコーンが何社出るかを気にするという点は、アメリカもフランスも同じかもしれないが、日本の場合、アメリカなどと比べて IPO するためのハードルは総体的に低いと言われ、その結果、ユニコーンに達する前にIPOしてしまうので、ユニコーンが生まれにくいと言われている。この問題を解消しないままに、日本のスタートアップから生まれるユニコーンの数を気にすることに意味があるのだろうか。

また、フランスでは、まず フレンチテックという共通のシンボルを同国のスタートアップであれば誰でも使えるようにし、こうしたスタートアップが国内だけでなく CES など海外の展示会にも多数出展することによってブランディングを行い、存在感を高めるという、フランスの文化戦略の王道をなぞっており、これによって外部(外国)からの投資を呼び込むことなどにも成功している。質より量からスタートして、量が質に転化してきていることは、同国のユニコーン数やスタートアップの投資額の推移からも推察できる。

日本では、フレンチテックを参考にしたかと思われる「 J スタートアップ」というものがあるが、これは言ってみれば国が選別をしてお墨付きを与える形になっている。最初から質を求める日本らしいスタイルではあるが、それによってどのように日本のスタートアップが世界的に成長するのか、というシナリオが見えない。少なくても、フランスとは全く異なるアプローチということができるだろう。

もちろん、日本がアメリカ型とフランス型どちらかとまったく同じスタイルを取る必要があるとは思わない。しかし、アメリカ型・フランス型それぞれに成功したエコシステムの形成の仕方があり、それを日本はどのようにして、良いところを取り入れ上手くいかないところを捨てて独自のエコシステムを作ろうとしているのか。その点がはっきりしないように思うのだ。グランドデザインないしロードマップがないままに、個々の要素を断片的に取り入れようとしているように見えてしまう。

本当はエコシステムのグランドデザインがあるのかもしれないが、まずそれを明確に示し、どのように日本のスタートアップが世界で成長していけるのかというシナリオを提示した上で、個々の施策を取っていく目的を示すこと。国や地方自治体の担当者にはこの点を期待したい。せっかく税金を使って行うことでもあるので、今からでも良いのできちんと個々の施策をグランドデザインの上に位置付けて、税金の無駄遣いにならないようにして頂きたいと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?