ふてほど(不適切報道)を繰り返すオールドメディアは信頼されているのか?約13000字かけて定量/定性で分析した
「今年ほどメディアの信頼が墜落した年はありませんね」と年末に言い続けて、いよいよ79年目に突入しようとしております。
今年は主に選挙報道をキッカケに、メディアに対して「偏向報道」「報道しない自由」などの言葉が飛び交い、テレビや新聞は「オールドメディア」と揶揄されました。2024年の流行語大賞は、誰も言ってなかった「ふてほど」が選ばれましたが、それに被せて「不適切報道(ふてきせつほうどう)」がネットでバズりました。
オールドメディアに対する信頼は、特に報道に対する信頼は、どこまで堕ちるんでしょう。
筆者自身は、右足のくるぶしまでメディアとニュースに浸かった人間なので「偏向報道」と言われると「右利きだから身体が左に偏るんですよね」と反省しきりです。
一方で、偏向報道といった「どぎつい言葉」は、学生時代に2ちゃんねるに浸っていた友人の口から聞く程度です。彼は何かあったらすぐ「マスゴミ」って言う。家族・友人の口から、そういう表現を聞いたことがありません。
信頼は墜落しているのだけれど、それは関係者かメディアが嫌いな人の範囲に限った話であって、大半の人は何とも思っていない(どうでもいいと思っている)のではないか、と思うのです。
ただし、それは私の確証バイアスかもしれませんし、「そもそもお前友人少ないだろう?」と指摘されたら返す言葉もございません。
そこで、インターネットリサーチのFreeasyを使って、(オールド)メディアに対する信頼度について、じっくり調査してみました。
メディアでニュースをチェックしていますか?
まず、メディアとの接触頻度を確認します。色んな観点がありますが、筆者の独断と偏見で「テレビ」「新聞」「X(Twitter)」「Youtube」「LINE」「ニュースアプリ・ニュースメディア」としました。
リアルとオンラインの棲み分けが難しいのがオールドメディアの特徴です。新聞なら「WEBサイトはどうなる?」「LINEニュースはどうする?」と判断が難しい。そこで、新聞社のニュースをLINEで見た場合は「LINE」、TV局のニュースをYoutubeで見た場合は「Youtube」で選ぶようお願いし、新聞については「紙、電子版」に限ることにしました。
「ここ最近(~3か月以内において)、どれくらいの頻度(回数)で「ニュース」をチェックしていますか?」と聞いた結果は以下の通りです。ちなみに、ニュースとは最近発生した政治や事件・事故・スポーツ・地域情報などの新しい情報・珍しい出来事を指すとしました。
圧倒的にチェックされているのは「テレビ」でした。「ニュースアプリ・ニュースサイト」「LINE」が続きます。「そこに載っている記事、大半は新聞社の配信なんだけどな~」とは思うのですが、まあ仕方が無い。
続いて年代別にチェックしましょう。
おーい、新聞、息してるか?
結果が返ってきた時、驚き過ぎて私の息が止まりました。10代~30代だと、月1回未満でもニュースをチェックしている割合は20%程度となりました。マジか。新聞の役割を「ニュースアプリ・ニュースサイト」が担っているんでしょうか。
年代別の頻度を見ると、以下のことが分かります。
「テレビ」はどの年代も半数以上がチェックしている。次いで「LINE」だった。(ただし「LINEでニュースを見ているか?」と「LINEで知り合いとメッセージ交換しているか?」を誤認している可能性が無くも無い)
「新聞(紙・電子版)」と「ニュースアプリ・ニュースサイト」は年代が高まるほどチェックする傾向が高まり、代わりに「X(Twitter)」は年代が高まるほどチェックする傾向が低くなる。今回の結果を見ても、年配(60代~70代)のデジタル化はほぼ済んでいると言って良い。(ただしインターネットリサーチに登録している時点でデジタル化していると言えるので、60代~70代全般がそうとも言えない)
Youtubeは、年代が高まっても、X(Twitter)ほどチェックする傾向が低くならなかった。皆さん、何の動画チェックしているんでしょうか?
さて、この結果から言えることは「オールドメディアって揶揄するけど、テレビでニュースをチェックしてるやんけ!」「でも若者(10代~30代)は新聞見なくなったねぇ…」でしょう。「見てんのかい!」と突っ込んじゃいました。
「テレビ」と「新聞」の傾向の違いは、報道が偏っているから…ではもちろんなくて、月額料金の有無でしょうか。テレビ受像機としてのテレビは買い切りなので、1度機体を買えばそれ以降は無料(タダ)です。
メディアを信頼できますか?
もちろん、この接触頻度だけでは信頼度は判断できません。テレビをチェックしていることと「偏向報道」「報道しない自由」は両立するからです。
続いて、(オールド)メディアに対する信頼度を明らかにするため、信頼度を数値で表現する調査を行いました。具体的には、0点なら「全く信頼できない」、100点なら「完全に信頼できる」、50点なら「信頼できる場合もできない場合もある」と基準を提示したうえで、0点~100点での評価をお願いしました。
「それぞれのメディアを、どれくらい信頼できると感じていますか?」と聞いた結果は以下の通りです。25%タイルと75%タイル、中央値、平均値を算出しました。
X(Twitter)やYoutubeよりも、オールドメディアと呼ばれるテレビや新聞が「信頼できる」と回答している人たちが多くいました。
とくに、新聞に対する信頼の高さよ。赤日新聞とか反日新聞とか揶揄され続けていますが、一部の人たちなんだろうなぁ…と思いました。
時間軸で評価しているわけではないので、おそらく中長期的に見ればオールドメディアの点数は下がっているのでしょうが、それでもX(Twitter)やYoutubeよりも相対的には点数は「上」です。
ただ、これは接触頻度の影響があるようにも思えます。信頼しているから接触頻度が高いのか、接触頻度が高いから信頼しているのか。いずれにせよ、緩やかな相関関係はありそうです。接触頻度別に得点の分布も確認しておきましょう。
違ったわ! X(Twitter)なんて信用ならねぇとツイ廃が1番知ってたわ。最近はエロ動画も広告で流れてくるぐらいだからね。
それにしても、です。やっぱり、新聞に対する信頼の高さよ。どっこい、どっこい、新聞社。それなのに、経営は苦しい。つまり、信頼をビジネスに活かしきれていないのではないでしょうか。ビジネスとはマーケティングの問題であり、経営の問題でもあります。
さらに、点数だけでなく点差でも見てみましょう。テレビや新聞といったオールドメディアにつけた点数が、X(Twitter)やYoutubeにつけた点数を上回っている人は各年代でどれくらいいるでしょうか。
20代、30代で50%をやや下回りましたが、大半の年代で50%を超えました。
つまり、テレビや新聞は、大谷の家を特定したり、サンゴを傷付けたり、靖国神社行っていないのに行ったと言ったり、お亡くなりになられた方の家族に押しかけ「今の気分は?」と問い掛けたりして「偏向報道」「報道しない自由」など不適切報道を繰り返すのかもしれませんが、X(Twitter)やYoutubeよりはマシだ、と思っている人が多い。そう解釈できるでしょう。
或いは、「偏向報道」「報道しない自由」と発言しているのは、50点未満の得点を付けたマジョリティなのかもしれません。大半の人は、テレビや新聞が「偏向報道」「報道しない自由」を繰り返していることを知らないし、知っていたとしても問題視するべきほどではない、むしろそんなこと言っている人の方がなんか怖いと思っているのではないでしょうか。
テレビや新聞が、自らの「偏向報道」「報道しない自由」ぶりを報道していないからだ、という指摘はあるかもしれません。しかし、インターネット等で様々な情報に接触しているであろう50代以下の大半が、特に10代が、それでもテレビ、新聞を信頼しているとした結果は重い。
もし、メディア関係者が「偏向報道」「不適切報道」という数万の声に悲しく辛い思いをしているなら、むしろ「そこまで思っていないから(良くも悪くも興味が無いから)何も言わない自由」を謳歌している数千万人の市井の人々がいることに目を向けるべきではないでしょうか。
もちろん、当たり前ですが、これらのデータをもってして、実際に発生している「偏向報道」「不適切報道」の存在を無きものにすることではありません。反省しろよ、共同通信。フジテレビ。家行くなよ。
また、新聞が中長期的に見てチェックする頻度が下がっている中で、ニュースアプリ・ニュースサイトをチェックする頻度や信頼度がテレビ・新聞と同等であることは留意するべきかもしれません。ニュースを見る方法は、私たち消費者が先行してDXを済ませているのです。あとは、メディアの経営者たちが、この難局をどうやって乗り越えるかです。
テレビ・新聞を信頼できる理由は何ですか?
「信頼」を少し違った角度で掘り下げます。なぜ、テレビや新聞を信頼できるのでしょうか。その根拠を定性的に把握します。
そこで、「「テレビ」「新聞(紙・電子版)」に対して、なぜそのような点数だったのでしょうか?」と以下の文章完成法を用いて聞いてみました。
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そのような点数を付けた理由は( )だから。
もう少し詳しく言うと( )だから。
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ワードクラウドで表現すると雰囲気が掴めそうと考えたので、ユーザーローカルAIテキストマイニングによる分析( https://textmining.userlocal.jp/ )を用いて、点数別ワードクラウド(TF-IDF法による重要度スコア降順)を作成しました。
傾向としては、テレビの点数が下がるほど、「テレビ」「新聞(紙・電子版)」に対して「信用の出来なさ」に対する言及が増えます。
例えば、どの点数区分でも登場する「兵庫県知事選」が分かりやすい。テレビの点数が高いと「SNSの影響を強く感じた」「Twitterとテレビでの斎藤知事に対する評価が違いすぎる」「事実はいったい何だったのか?」と現実とのギャップに言及する一方で、テレビの点数が低いと「世論を煽る事を目的として真実を伝えていない」「選挙前のTV放送に騙されて洗脳されたように感じた」「裏取りをせずに報道しているから」といったオールドメディアに対する批判が並びます。
テレビや新聞の信頼が高い人(75点~100点)は、要約すると「SNSはフェイクニュースが多くてファクトチェックが曖昧、新聞やテレビを100%信じているわけじゃないけど、情報源もしっかりしてて信憑性・信頼性があり、公共性のある役割を担う」でしょうか。
テレビや新聞の信頼が低い人(0点~50点)は、要約すると「新聞やテレビは報道しない自由を駆使して恣意的な偏向報道を繰り返している。兵庫県知事選もそう。スポンサーに忖度し、情報操作が行われ、とても真実とは言えないし、信用できない」でしょうか。
テレビも新聞も、受け取った情報は同じはずなのに「あれには裏があるはずだ」「あの情報を配信していないのはおかしい」と言われています。要は、得点が低い人ほどテレビや新聞を絶対視して「間違えた!」「あってはならない!」と批判し、得点が高い人ほどテレビや新聞も間違いを犯す存在として「100%ではないけどキチンと取材してる」と思っているようです。
学校のクラスに1人はいた、「色んな人がいろんな噂を流しているけど、ちゃんと話したこと無かったから声掛けてみたら意外と普通の人で、噂を知らない人は何も気にせず付き合っている」みたいな、そんな感じだと思うんですけどね。
もっとも信頼できるメディアは何ですか?
新聞にしろテレビにしろ、それらは総称であって、本来なら「朝日新聞」やら「日本テレビ」やら、もっと言えば「天声人語」やら「zero」やら個別具体と接することで「信頼」を実感しているはずです。
そこで、自由回答方式で「様々なメディアの中でも、あなたが最も信頼しているメディア(可能な限り詳細)について教えて下さい」と聞いてみました。
ちなみにNHK(563人)、Youtube(217人)、X(Twitter)(156人)、日経新聞(125人)、朝日新聞(104人)、読売新聞(88人)、テレビ朝日(14人)、TBS(9人)、日本テレビ(8人)、フジテレビ(6人)と、大きな括りで書かれた方も多かったのですが、その中でも詳細が書かれた回答を列挙します。(目視でパッと見たので網羅できている自信はありません)
■番組名(テレビ局)
めざましテレビ(フジ系列)…36人
報道ステーション(テレ朝系列)…32人
ZIP!(日テレ系列)…31人
羽鳥慎一モーニングショー(テレ朝系列)…13人
news zero(日テレ系列)…8人
THE TIME,(TBS系列)…6人
every(日本テレ系列)…6人
報道特集(TBS系列)…6人
ひるおび(TBS系列)…5人
Newsモーニングサテライト(テレ東系列)…5人
情報ライブ ミヤネ屋(日テレ系列)…5人
教えて!ニュースライブ 正義のミカタ(テレ朝系列)…5人
Nスタ(TBS系列)…4人
ワイドナショー(フジ系列)…4人
ニュース23(TBS系列)…3人
おはよう朝日です(テレ朝系列)…3人
NHKニュース7(NHK)…3人
NHKニュースおはよう日本(NHK)…2人
ヒルナンデス!(日テレ系列)…2人
Live News イット!(フジ系列)…2人
そこまで言って委員会(日テレ系列)…2人
めざまし8(フジ系列)…2人
サンデージャポン(TBS系列)…1人
ドデスカ!(テレ朝系列)…1人
とびっきり!しずおか(テレ朝系列)…1人
真相報道 バンキシャ!…1人(日テレ系列)…1人
林先生の初耳学(TBS系列)…1人
クローズアップ現代(NHK)…1人
■人名
池上彰さん…16人
マツコ・デラックスさん…6人
立花孝志さん…3人
ひろゆきさん…3人
辛坊治郎さん…2人
藤井貴彦さん…2人
有働由美子さん…2人
谷原章介さん…2人
田原総一朗…1人
安住紳一郎アナウンサー(TBS)…1人
玉川徹さん…1人
岡田斗司夫さん…1人
上念司さん…1人
高村薫さん…1人
森永卓郎さん…1人
小籔千豊さん…1人
■番組名(Youtubeなど)
虎ノ門ニュース…5人
ReHacQ−リハック−…3人
ニュースあさ8時!…2人
ABEMA Prime…1人
後藤達也・経済チャンネル…1人
■企画名(新聞)
編集手帳(読売新聞)…1人
他にも、赤旗を上げた方が5名いて、「強いな…」と思いました。
これら傾向から分かるように、テレビ局は「番組名」が多く、新聞社は「社名」が多くあがりました。天声人語も私の履歴書も0人です。
店舗運営で例えると、テレビ局は「場所貸し」モデルのように店子の名前で勝負していて、新聞社は「自社編集」モデルのように社に所属する記者の力量で勝負しているような印象です。
どんな時、ニュースが必要になりますか?
ここまでのメディアの現状を端的に振り返ると、「まだ信頼はされている。しかし、経営は苦しい。さて、どうしよう?」と言えるでしょう。
つまり、信頼をビジネスに活かしきれていないのではないでしょうか(特に新聞がそう)。ビジネスとはマーケティングの問題であり、経営の問題でもあります。大事なことなので二度言いましたよ。
こういう場合、まずやるべきことは「顧客理解」です。顧客はメディアやニュースに何を求めているのか。そもそも、どんな場面や瞬間にニュースが必要になるのか。
ニュースを「テレビ」「新聞」「X(Twitter)」「Youtube」「LINE」「ニュースアプリ・ニュースメディア」いずれかで月1回未満でもチェックしていると回答した7,208人に聞いてみました。
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Q.どんなときにニュースを知らせるメディアが必要だと感じるでしょうか?
私は、( )という状況・場面で、ニュースが必要だと思った。
そう思ったきっかけは、( )という出来事があったから。
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すると、色んな声が浮かびました。
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私は、( 地震など、多くの人たちに関係があるような災害が起こった )という状況・場面で、ニュースが必要だと思った。
そう思ったきっかけは、( 東日本大震災で、避難場所や帰宅手段を即座に把握して動き方を判断することが難しかった )という出来事があったから。
私は、( 11月27日午後に衆議院議員選挙の投票を終えたあと、選挙区の速報が必要 )という状況・場面で、ニュースが必要だと思った。
そう思ったきっかけは、( 投票所を出たあと出口調査をうけ、私たちの選挙区が注目されていると感じた )という出来事があったから。
私は、( 毎朝の米国市場チェックの時間、やたら指数が落ちているような日や、逆に急激に上昇している日 )という状況・場面で、ニュースが必要だと思った。
そう思ったきっかけは、( だいたい政治的な発言があったり、金利について声明があったり、アノマリーが関係していると分かった )という出来事があったから。
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こうした声を集約すると、18個の場面や瞬間でニュースが必要になると分かりました。これらは7,208人から帰納法的に集約したものであり、また別のリサーチを行えば、違った場面や瞬間が現れるかもしれない点に留意が必要です。
身近な人が事件・事故・災害に巻き込まれた可能性があるとき
仕事や家事の合間に休憩時間が出来て一息つきたいとき
世間で「当たり前」とされることを疑いたいとき
仕事の都合で経済や政治などを常に把握しておきたいとき
皇室問題やコロナなど、よく分からない複雑な問題の詳細を知りたいとき
自分の事に精一杯で、世の中の出来事を知らないと気付いたとき
これまでの報道は一方的で真実ではないと気付いたとき
災害・選挙・スポーツなどリアルタイムの速報を知りたいとき
職場の同僚やママ友など顔見知りと世間話をするため情報を仕入れたいとき
「これ知ってる?」とニュース速報を教えて貰ったが知らなかったとき
資産運用に必要な経済・社会・政治情報を知りたいとき
気持ちが塞ぎ込んだので、明るく心温まる情報が欲しいとき
今日の行動の予定を立てるとき
友人・知人の訃報を確認したいとき
デマや得体のしれない情報が飛び交い、本当のことを知りたいとき
自分の生活圏内で事件・事故・災害が発生して詳細を知りたいとき
最近の世の中の流行や話題を知りたいとき
今日1日、世界と日本で起きた様々な出来事を満遍なく知りたいとき
インターネットリサーチのFreeasyを使って、これら18個の場面や瞬間毎に、「どのメディアでニュースをチェックしようと思いますか?」と確認してみました。結果は以下の通りです。
このメディアでニュースをチェックしようと思うと回答した結果を出力しました。ニュースが必要だと感じた場面・瞬間で、チェックしようと思ったメディアは、「テレビ」か「ニュースアプリ・ニュースサイト」が大半を占めました。
そして大半の場面・瞬間で「ニュースアプリ・ニュースサイト」が上回っていました。ヤフーニュースとか、スマニューとか、ウェザーニューズとか、NHK「政治マガジン」とか、TBS NEWS DIGとか、便利ですもんね。あ、政治マガジンは圧力で閉鎖させられたか。
新聞、大半の場合で「チェックしようと思う」って言われていないなぁ…。Youtubeと比べても「最近の世の中の流行や話題を知りたいとき」「仕事や家事の合間に休憩時間が出来て一息つきたいとき」「気持ちが塞ぎ込んだので、明るく心温まる情報が欲しいとき」に、新聞よりYoutubeでチェックしようと思うようです。
「それは新聞社に求められることなのか?」という声が新聞社の中から聞こえてきそうですが、それは皆さんが決めてください。それで売上になって、新聞社に求められていると判断できたら、やるべきなんじゃないですかね。知らんけど。
冒頭の接触頻度を含めて考えると、何かしらの手をうたなければ、YoutubeやX(Twitter)にも負けていくだけです。そのためには紙に限らずデジタルで会員を獲得するか、広告収益を増やしていくしか無いのですが、全国紙・地方紙見渡しても日経新聞ぐらいしか成功事例がありません。やる気あんのか、経営陣は。
この得点傾向が表しているように、デジタル時代のニュースメディアは、ニュースアプリ・ニュースサイトに収益基盤が収斂していくのでしょう。それをテレビ局や新聞社が、どうやって対応していくかが鍵を握りそうです。これはマーケティングの問題であり、経営の問題でもあります。大事なことなので三度言いましたよ。
さて、18個の場面や瞬間毎に、どのメディアが思い浮かぶか聞いたわけですが、続いて「どの新聞(紙か電子版)でニュースをチェックしようと思いますか?」についても確認します。
「身近な人が事件・事故・災害に巻き込まれた可能性があるとき」であれば「新聞」が浮かぶと回答したのは174人でした。この174人に「具体的にどの新聞社が浮かんだの?」と聞きます。また「デマや得体のしれない情報が飛び交い、本当のことを知りたいとき」であれば「新聞」が浮かぶと回答したのは258人でした。この258人に「具体的にどの新聞社が浮かんだの?」と聞きます。すなわち、以下の結果は行単位で見て分母は違います。(行単位の比較は可能ですが完全なApple to Appleでは無い点に留意)
強いぜ、地方紙! 「仕事の都合で経済や政治などを常に把握しておきたいとき」「資産運用に必要な経済・社会・政治情報を知りたいとき」など経済系の場面や瞬間で想起されている日本経済新聞も強いぜ!
発行部数で言えば、読売新聞、朝日新聞が浮かぶのは分かりますが、毎日新聞より日経新聞が浮かぶのは謎です。そして、右寄りスタンスの記事を配信し続けている産経新聞の弱さ。岩盤保守層なんて本当は「まぼろし~!」なのか、18個の場面・瞬間では支持していないのか、彼らはインターネットリサーチに参加していないのか。どれでしょう。
続いて「どのテレビ局が浮かんだの?」についても確認します。(計算の仕方は新聞と一緒です)
強いぜ、NHK! 速報に強く、政治・経済の動向に強く、事件・事故・災害の報道に強い。それってニュースそのものじゃん。ニュース=NHKという不動の位置を獲得していると言っても良い。
民放は「仕事や家事の合間に休憩時間が出来て一息つきたいとき」「最近の世の中の流行や話題を知りたいとき」「職場の同僚やママ友など顔見知りと世間話をするため情報を仕入れたいとき」「気持ちが塞ぎ込んだので、明るく心温まる情報が欲しいとき」といった、情報番組系が強いようです。だから先ほどの信頼できるメディアで、情報番組系も名前が挙がったんだな。
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18個の場面や瞬間毎に見て、比較的多くの方が「メディアをチェックする」と言ったのが以下5つです。想起されるメディアと合わせて再度掲載しておきます。
災害・選挙・スポーツなどリアルタイムの速報を知りたいとき
地元の地方紙(42%)、読売新聞(28%)、朝日新聞(27%)
NHK(69%)、日テレ系列(32%)、TBS系列(30%)
今日1日、世界と日本で起きた様々な出来事を満遍なく知りたいとき
地元の地方紙(33%)、読売新聞(32%)、朝日新聞(30%)
NHK(65%)、日テレ系列(34%)、テレ朝系列(30%)
自分の生活圏内で事件・事故・災害が発生して詳細を知りたいとき
地元の地方紙(57%)、読売新聞(19%)、朝日新聞(15%)
NHK(64%)、日テレ系列(29%)、TBS系列(27%)
最近の世の中の流行や話題を知りたいとき
地元の地方紙(39%)、読売新聞(29%)、日経新聞(26%)
日テレ系列(45%)、NHK(40%)、TBS系列(40%)
仕事や家事の合間に休憩時間が出来て一息つきたいとき
地元の地方紙(46%)、読売新聞(29%)、朝日新聞(29%)
日テレ系列(43%)、テレ朝系列(38%)、TBS系列(38%)
とりあえず、日本テレビ・読売新聞グループとテレビ朝日・朝日新聞グループは安泰ですね。もちろん、ニュースだけがメディアじゃありません。ドラマやバラエティもありますから、軽率なことは言えませんが。
ただ、2030年代には、テレビと新聞の合併だったり、地方紙と全国紙の合併だったり、全国紙同士の合併が起きても不思議じゃないんだろうな、と思った調査結果でした。
なぜなら、メディアの資産は「過去配信した記事のストック」でも「記者数の多さ」でもなく、「消費者からの信頼」だからです。信頼があるから、メディアの配信する記事が信頼される。
いま、デジタル化が進み、様々なメディアが登場する中で、その信頼を緩やかに食い尽くしている(それでもまだ膨大な信頼が残っている)オールドメディアは、いつまで生き残れるでしょうか。
おわりに
本noteのテーマは「(オールド)メディアに対する信頼度」でした。Freeasyを用いて調査した結果、X(Twitter)やYoutubeよりは信頼されているけどニュースアプリ・ニュースサイトと同程度だと分かりました。テレビ局や新聞社が運営しているニュースサイトもありますしね。
2024年はSNS選挙元年と言われました。都知事選、総選挙、兵庫県知事選いずれもSNS無くしては起きえない事態が起きました。ですので、SNSはもっと信頼度高いんじゃないか、と思っていました。そんなもんか、という印象です。もちろん、これは筆者がツイ廃なだけで、世間一般からすれば「そんなもんです」という声が返ってきそうです。
では、今後はSNSこそが民意を左右していくのか、と考えると、どっこい、どっこい、オールドメディアだと思うのです。そもそもX(Twitter)でランキング1位に入るドラマやバラエティが未だ多い。テレビ局のコンテンツでSNSを動かす力がまだまだあるのです。
SNS選挙元年は「ソーシャルメディアの使い方が上手い人が陣営に参加されましたね」ということではないでしょうか。その結果、想定しえなかったことも起きました。ですので、なんらかの規制が加わることもあるでしょう。無視はできないメディアだけど、過大評価し過ぎるのも良くないと思っています。
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本調査の生データを所望される場合、テレビ局・新聞社に勤務されている方に限って公開します。私のプロフィール欄に記載されたメールアドレス宛に連絡ください。また、データの見方を詳しく知りたい方も、ご連絡下さい。
以上、お手数ですがよろしくお願いいたします。