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グローバリゼーション vs. スローバリゼーション【日本への追い風】

米国のおかげで「steady」な世界経済
4月16日、IMFから春季世界経済見通し(WEO)が公表されました:

世界経済の実質GDP成長率は今年1月の暫定改定値から+0.1%ポイント引き上げられ+3.2%とされています。筆者は毎回、WEOのサブタイトルを記録してその推移をエクセルで管理しています。

今回のサブタイトルは「Steady but Slow: Resilience amid Divergence(安定かつ緩慢、まちまちな様相の中、強靭性も)」となっており、インフレ高止まり、欧州および中国の低迷、2つの地域にまたがる戦争の継続などの逆風にもかかわらず大崩れすることのない世界経済の近況を良く表していると思います。WEOのサブタイトルはその時々の、世界経済を端的に表しており、見るだけでもお勧めです。日本語HPもあるのですが、あまりその訳文はしっくりこないものも多いので、英語で見る方が良いかなと感じます。

とにかくWEOは無料で読める経済分析としては最高峰ですので(しかも内容が難し過ぎるということもないので)、経済・金融情勢について「サクッと理解したい」のような次元を卒業し、レベルアップを図りたい方は原文を覗いてみるのも面白いと思います:

なお、現在の世界経済の大崩れを支えているのはほぼ米国であり、同国の2024年の成長率は+2.1%から+2.7%へ3か月で+0.6%ポイントも引き上げられています。これに対し、ユーロ圏は+0.9%から+0.8%へ▲0.1%ポイント、日本は+0.9%で横ばい、中国も+4.6%で横ばいと殆ど上方修正に貢献できていません。米国だけであれば「steady(安定)」だったところ、他国も合わせると「slow(緩慢)」というのが実情でしょう。
 
スローバリゼーション、再び
ところで、1年前となる2023年4月のWEOでは地政学リスクを背景に世界の直接投資行動が分断化(fragmentation)しており、それはグローバリゼーションの巻き戻し、さしずめ「スローバリゼーション(slowbalization)」であるとの議論が展開されました。実は筆者も1年前に顧客向けレポートでこれを議論させて頂いたところ、かなり関心を引きました。その後、モーサテなどTVでも解説をさせて頂いたところです:

今回のWEOではスローバリゼーションというフレーズこそ使われていなかったものの、レポート内のBOX欄で「国際貿易に既に影響を敢えつつある分断(Fragmentation Is Already Affecting International Trade)」と題した分析が披露されています。これが世界経済の今起きていること、そしてこれから起きるであろうことを端的に示しており、興味深いものでした。このBOX欄自体、僅か1ページ程度の分析ですから、ご関心のある読者はオリジナルをお読み頂いてもあまり負担にはならないかと思います。

以下ではBOX欄の分析を筆者が簡単に解説してみたいと思います。

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