"弱み"を見せられるコミュニティの"強さ"
コミュニティにおける重要なポイントはなにか。常々考えているテーマなのですが、1つの解としてコミュニティのメンバーがどれだけ"弱み"を見せられるかというポイントがあると考えています。
以前、リモート活動におけるコミュニティ活動ではコミュニティメンバーの心理的安全性をどのように高めるかが最大のチャレンジであるという記事を書かせていただきました。
今回はそのキーワードである"心理的安全性"を少し掘って考えていきたいと思います。
心理的安全性ってなに?
以前書かせていただいた内容と重複しますが、そもそも心理的安全性とは「コミュニティのメンバーが他のメンバーに非難される不安を感じることなく、安心して自分の意見を伝えることができる状態」を意味します。
そしてその心理的安全性を高める上で重要な要素が関係の質の向上からスタートする事なのです。こちらはダニエル・キム教授が提唱する成功循環モデルの考え方ですが、コミュニティに関わるメンバー同士の「関係の質」をまず高めることで、お互いが安心して発言することが出来るようになります。
ダニエル・キム教授「成功循環モデル」 (拙著「コミュニティづくりの教科書」より)
お互いが否定されることはないという関係になると、コミュニティにとってより良い活動は何か、自分自身が貢献できることはないかと能動的に考えるようになり、「思考の質」が高まります。するとより良いアイデアや気づきが生まれやすくなるのです。お互いに信頼関係が出来ている「関係の質」が高いコミュニティにおいて、コミュニティをよりよくする為の「思考の質」が高まると次になにが起こるでしょう。
コミュニティが掲げているビジョンを達成するためにどうするのが良いかというアクションに対しての解像度が明確な「思考の質」が高い状態になると当然ですが、アクションつまり「行動の質」が高まるのです。行動の質が高いコミュニティでは積極的にメンバーが助け合いながら能動的に動くようになります。
お互いの信頼関係が確立し、解像度が高いアイデアを生み出し、能動的に動くコミュニティでは、当然ですが良い結果が出るようになります。「結果の質」が高まることにより、共通の成功体験を得たコミュニティのメンバー同士の「関係の質」はさらに良くなります。こうして好循環のサイクルが繰り返されることで、より心理的安全性の高いコミュニティになっていくのです。
決めつけや否定は禁止しよう
主に2000年以降に成人を迎えたミレニアル女性向けのキャリアスクールを運営するSHEの代表である福田恵里さんのこちらの取材記事の中で、福田さんは下記のように述べています。
"『私なんて』と決めつけることや、人の夢を否定することを禁止している。心理的な安全性を確保して、『私はこうありたい』というマインドチェンジができる場にするためだ。自分のキャリアの手綱をしっかりと握り、人生を肯定して前を向くことで、自分らしく生きられる"
SHEでは、決めつけや否定を禁止することで心理的安全性を確保しています。そうすることでマインドチェンジが出来る場づくりをしているのです。
コミュニティ醸成においてもメンバー同士が否定しない環境をつくることでそれぞれのメンバーがポジティブに考え、能動的に、そして自分らしく活動していけるのではないでしょうか。
「のび太力」をあげよう
心理的安全性の第一人者であるZENTeck 石井遼介さんのベストセラー「心理的安全性のつくり方」 の中で石井さんは"「のび太力」をあげよう"と述べています。
"オープンに助けを求めたり、ダメな自分で合っても晒すことができたりする能力を、私たちは『ドラえもん』に出てくる「のび太力」と呼んでいます。"
石井さんはこのようにのび太力を定義しているのですが、この「のび太力」こそがコミュニティ醸成において重要な要素なのではないかと思うのです。
心理的安全性を高めることによるポジティブな側面は書かせていただきましたが、「とはいえどうやって関係の質を高めるのよ」という疑問は出てくると思います。心理的安全性を高める上で起点となる関係の質を高めるためのキーポイントが他ならない"のび太力"にあります。コミュニティのメンバーがお互いに「自分は完璧ではない。」ことを自認して、自分が得意ではない部分は「他のメンバーに助けてもらう」ことが出来るようになると互助の関係となり関係の質は高まっていきます。そしてその上で大切なことが自身の過去の失敗について、素直に語る「自己開示」なのです。自分自身の過去の失敗をネガティブに伝えるのではなく、その失敗があったからこそ今の自分があるという視点で語ることで、「失敗はネガティブなことではない」ことを伝え、失敗を恐れずにオープンにコミュニケーションが取れるコミュニティとなっていくのです。
最初の一歩は弱みを見せること
様々な記事やメディアの発信によって、心理的安全性が高い組織やコミュニティが良さそうであるということを感じている人はこの1,2年でかなり増えてきていると思います。私自身も様々なコミュニティ活動に関わる中で"心理的安全性"の重要性は肌身に感じています。しかし、言うは易し行うは難しで、そう簡単にはいかないこともあるでしょう。そうした状況であれば、お互いに弱みを見せ合う時間をつくることで最初の一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
それぞれのメンバーが「自分自身にとって過去の大きな失敗とそこからの学び」を語るワークショップやリラックスして語れるランチ会などを開催することで、成功循環モデルの歯車を回してみてはいかがでしょうか。