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もはや水際対策とは言い難い日本入国の現状ー入国者上限撤廃の朝に帰国してー

 本日より海外からの入国者の制限がなくなりました。ようやく日本も諸外国と足並みが揃い始めたという印象です。今回はまさにその現場に立ち会いましたのでそのご報告です。

 私は2019年8月のマダガスカル出張を最後に海外渡航は控えておりましたが、9月に入国時の検査が条件付きで撤廃になったことを受け、先週末の連休(10/8-10)を利用してベトナムに出張してきました。ベトナムは2007年に外務省に出向した際に日本大使館勤務を2年間行いましたので知人も多く、実は2019年・2020年に予定していたのですが、COVIDのほか諸事情によりいずれもキャンセルになってしまいました。今回は3度目のリベンジでもあり、久しぶりに知人との面会の機会も得られました。勤務医の時と違い、平日は毎日診療があるので、土曜の午前診療が終了後、夕方の便でホーチミンに入り、翌日夜にハノイに移動、本日の診療に間に合うように羽田便を利用するために昨夜ハノイからホーチミンを経由して、今朝(11日)6時過ぎに羽田空港に到着しました。

 予想通りでしたが、本日からの入国制限撤廃を受け、ゲートでは多くのプレスが待機し、外国人にインタビューをしていました。以下の写真は関連記事であり、取材時間からすると私もこの時にゲートから出てきていました。降機してからゲートを出るまでの行程についてをご説明します。

 降機してから出口まで歩く距離が長いです。途中で滞ることはなかったのですが、まず降機する前に検疫官の配置が済むまで機内で数分待たされます。降機すると本来であれば到着ロビーの方向に向かうはずですが、逆方向の一番遠いサテライトに誘導されます。この間にアプリ(My SOS)の色の確認を促され、青(検査なし)とそれ以外でルートが分かれます。青であればひたすら突端のサテライトまで進み、多くの机が並ぶところでQRコードを見せると、入国審査に必要な緑の紙(以下の写真)を渡されます

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これを持って突端から通常の検疫ブースまでひたすら歩きます。本来は動く歩道とそうでない廊下の2ウェイがあるのですが、完全に分けられて(対面通行になって)いて、緑の紙を受け取った旅客だけが動く歩道を利用できます。そして従来の検疫ブースでは紙を見せるだけで通過入国審査ブースは顔認証なのでスタンプを押さなくてよければこの紙を見せずにそのまま通過でした。あとは通常通り、税関を通り出口にたどり着きます。以前のように検査を待つような時間はなく、サテライトを端から端まですべて使用して詰まらないように工夫されているのを感じました。その一方で、ここまでして水際対策する必要性があるのかと疑問も感じました。

 日本は世界でもCOVID感染者が多く、外国人や在留邦人にとっては流行国に渡航・帰国するわけですので、他の人にうつすというより自らの感染リスクの方が高い可能性があるわけです。それなのに日本入国にはワクチン接種歴やアプリの確認など多くの規制が残っており、これは以前の水際対策の緩さから得られた教訓であると思われます(ちなみにベトナムではCOVID前と同様に、パスポート提示の入国審査のみで通過しCOVID関連の問診や規制などはありませんでした)。また日本人にとっては海外で感染する病気は山ほどあるにもかかわらず(先日も検疫では問題がなかったベトナム人のインフルエンザの患者さんが来られましたが)、その注意喚起などはなくなりCOVIDだけに集中している印象であり、しかも上限撤廃による入国者の急増に伴う対応と思われる非常に多くの外国人を含むスタッフを雇用し、それをすべての航空便のすべての旅客に対して今日から毎日実施することになるのでしょう。業務にかかわる方々は本当に大変だと思いますが、諸外国が入国に対する規制をほぼCOVID前と同様に戻しているにもかかわらず、ここまで固執する日本の検疫は如何なものか、その一方で今までの流れから一気に解禁するわけにもいかないのだろう等々考えながら職場に戻り、この現状をいち早くお知らせしたく記事にしてみました。

 ちなみにマスクの着用に関してですが、ベトナムではもともとPM2.5やバイクの排気ガス対策としてマスクをする習慣があるので、屋外でもマスクをしている人も散見されましたが、さすがに日本ほどではありませんでした。マスク議論も然りですが、もはや日本のCOVID対応の現状は「感染対策」の範疇を超えた「見えない圧力」を感じざるを得ませんし、責任問題がつきまとうので仕方がないとは思うのですが、追随する(あるいは後ろ盾する)有識者にも問題があるように感じます。

#日経COMEMO #NIKKEI

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