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格差の見える化でダイバーシティ&インクルージョンの積極的取組を動機づけしよう

解決しない男女の賃金格差

各種調査で度々取り上げられるように、日本における男女間の賃金格差は依然として大きい。メルカリが行った調査でも、男女間の賃金格差が浮き彫りとなった。特に、等級や職種といった「説明できる格差」以外の「説明できない格差」があった。これは、同じ職種、等級でも男女で7%の差があるという。
男女間の賃金格差を生む要因は、性役割期待や社会慣習、非正規の割合など多数ある。問題を解決しようにも大掛かりな改革が必要で簡単にはいかない。

体感としての変化と数値としての不変

会社員というと、男性正社員ばかりで、女性はいても補助的な事務員という構造は、1990年代までは当たり前の光景だった。それが現在では大きく変わり、女性が総合職として働くことも珍しいものではなくなっている。職場でのコミュニケーションも、「男性だから」「女性だから」という言葉も禁句とされるようになり、一昔前では許容されてきたような女性を軽く見るような言動も大きく減った。体感としては、1990年代と今では明らかな違いを感じられる。ネット配信でバブル前後のトレンディードラマを観ると、今では想像できないような場面がいくつもあり、隔世の感を覚える。
しかし、残念ながら、OECDをはじめとした国際比較調査では、日本の男女間の格差は世界最低水準の評価だ。加えて、賃金格差をはじめとした各種統計指標も大きな変化はみられない。唯一、女性の雇用率だけは他国と比べても大差なく、「働く」ではなく「活躍」のほうに問題があることが明らかとなっている。
前述したように、このような問題を解決することは簡単ではない。しかし、それは社会単位での話であり、企業レベルでの努力で改革はいくらでもできる。
女性の活躍に関しては、「アンコンシャス・バイアス」や「ガラスの天井」、「女性の逆選択」と様々な理論が提示されているように、阻害要因が数多くあり。これらの問題を解決するには、まずはじめに既存の仕組みは男性が有利なようにデザインされているという気づきからスタートする必要がある。
先に引用している日経新聞の記事でもあるように、早稲田大学の大湾教授が勧めるアプリの導入は効果的だ。既存のシステムが男性有利だという気づきを得て、何が問題かを明らかにするためにも、客観的なデータとして格差を視覚化することは有効だ。
格差を減らすためには、意思をもって積極的な是正策を講じることが必要だ。アファーマティブアクションとも言うが、そこまで本腰を入れて取り組むのは容易ではなく、動機づけの仕掛けが必要だ。欧州のビジネスパーソンとプロジェクトを一緒にするとよくわかるが、「格差をなくすことは最重要事項だ」という非常に強い意志を至る場面で感じる。ほぼすべての意思決定で「格差はないか」をチェックし、自分に対しても他者に対しても、そのような姿勢を強く求める。そこまでしないと格差は是正できないのだ。
しかし、日本でビジネスを行う上で、そこまで強い意志を持つ必要性を感じることは少なく、意識しているビジネスパーソンと出会うことも稀だ。本当に格差を是正するのであれば、自然発生的な動機に期待するのではなく、アプリのようなツールを用いて、動機づけの仕組みを作ることを推奨したい。現状の多くの取り組みは、性善説で自然発生的な動機に期待しすぎている。


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