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社員の成長実感を高めるための7つの方法。働きやすく、働きがいもある企業への進化をいかに遂げるのか。

皆さん、こんにちは。今回は「成長実感」について書かせていただきます。

今回引用した記事には、「大手企業、希望の職種、少ない残業時間、職場の人間関係も良好」という、一見何ら問題のないような状況から、会社を辞めた人の事例が紹介されています。現在の大手の職場環境において、比較的負荷がかからず、想像通りの仕事につき、特に大きな不満もないにも関わらず、自分は別の会社に入社した同年代と比べて成長が遅いのではないか、このままでは将来的に市場価値がなくなってしまうのではないかと不安を払拭できずにいるのです。

以前、こちらにも若手社員の離職理由について書かせていただきましたが、「きつすぎる職場」でも「緩すぎる職場」でも、社員は離れていってしまいます。

今の時代に若手社員や中堅社員が求めているものは、何なのでしょうか。
社員の“自立心”や“成長実感”をどのように満たしてあげることが、企業の生き残りに繋がるのでしょうか。

会社と社員の力関係が変わってきた。人手不足や転職の増加で主導権が従業員に移り、若手や中堅は職場環境が良くても成長機会の乏しい組織に背を向ける。資本市場も人材を育てられる企業に投資を絞り始めた。社員の「自立」が企業に新たな生き残りの条件を突きつける。

■社員が企業に求めるもの

これまでの企業と従業員の関係性は、社員は生活の“安定”と引き換えに、異動や転勤の辞令や人事評価を巡る処遇に“服従”するという関係性でした。その分、大手企業に入社してしまえば将来の「安定」「安心」を手に入れられるため、極端に言えば、一部の「出世したい」という強い意欲がある人であれば自ら厳しい環境の中で様々な困難を乗り越えながら成長実感を得られるものの、そうでない人からするとどのように働いていようが、一定の年齢になれば必然的に給与も上がるというような“保証”を得ることになるのです。

今、そのような環境から抜け出そうとする人が増えているのは、「このままでは成長できない」という不安や焦りからです。それは、

若手や中堅が会社に求めるのは安定よりも自分の成長に変わった。転職をスキルの習得できない職場からの「脱出」と位置付け、成長にもタイムパフォーマンス(時間効率)を追求する
タイパの象徴が大企業から新興企業への転職だ。エン・ジャパンの運営する34歳以下を対象とした転職支援サービスでは4〜9月に大手から新興に転じた人が5年前の18倍になった。

とある通り、大手企業から新興企業に転職した人が5年前の18倍になったというデータも示しています。

若手社員を引き留められない企業の特徴としては、以下のようなものがあります。

  • 業界や企業の成長スピードが遅い

  • 年齢や社歴、配属部署などで横並びの評価をする

  • 年功序列により、管理職に就ける時期が決まっている

  • 人から与えられた仕事やタスク型の業務のみやらされる

  • 社外で通用する経験やスキルが習得できない

  • 居心地だけが良すぎて働きがいがない

この逆で、年齢に関係なく大きな仕事を任されたり、若いうちから管理職に就けるなど、明らかに自分が速いスピードで成長できる環境へと優秀な若手社員が引き寄せられているのです。

今の時代に社員が企業に求めている職場環境としては、

  • お互いに助け合い、チームとして同じ目標に向かって共に切磋琢磨できる職場

  • 個性や個人の意思を尊重してくれる職場

  • 仕事に必要なスキルや知識を効率よく習得できる職場

  • 一人ひとりに対して丁寧に指導してくれる職場

  • 自分の成長が少しずつでも実感できる職場

  • 人間関係が良好で居心地の良い職場

  • 仕事だけでなく、プライベートの時間も確保できる職場

などです。自分のことを理解し、丁寧に指導し、認めてくれるような環境で、「無理なく、無駄なく、効率よく」成長していきたいのです。

社員が職場に対して「成長できない」という不安を抱えているということは、企業側も同じように社員の成長鈍化について悩み、成長速度を上げるにはどうすれば良いか、成長実感を持ってもらうにはどうすれば良いか、早期離職を防止するにはどうすれば良いかについて必死に考えています。

とは言いながらも、企業が求める個人の成長スピードや成長レベルと、社員が企業に求めるものとに乖離が大きくなればなるほどミスマッチが発生し、せっかくもともと持っていた会社に対する貢献意欲や個人の成長意欲がなくなってしまいかねないため、そのバランスを取ることは予想以上に難しいことなのです。

■職場がホワイト化した弊害

企業は、法令順守のため社員の残業時間の削減などに積極的に取り組んでいます。労働環境から勤務状況、健康に関することまで、広い範囲にわたって職場環境を健全に保つための安全配慮義務が企業に課されています。その対応の一環で職場がホワイト化すればするほど、社員の成長環境がなくなってしまうというのは、なんとも皮肉なことです。

さらに近年、「人的資本経営」の必要性が叫ばれ、人への投資に対する意識が上がってきたことで「ホワイト企業」が増える一方、「ホワイト過ぎる」または「緩すぎる」職場が、逆に「ブラック」である、というような見解を持つ人も増加してきました。

社員が自社の労働環境を評価する情報サイト、オープンワークによれば、21年までの約10年間で平均残業時間は月46時間から24時間に半減した。「待遇面の満足度」も5段階評価で2.6から2.9に高まった。
半面、成長についての満足度は下がり、「20代成長環境」への評価は3.0から2.9に低下した。業種別では大企業中心の銀行や鉄鋼の落ち込みが目立つ。職場の「ホワイト化」と成長への期待が反比例している格好だ。

厚生労働省によると、2020年に入社した大企業の大卒社員は3年以内に4人に1人が辞めているそうです。退職意向のある社員が出た場合に引き留めるための材料は、確実に「残業時間などの職場環境の改善」から「より成長できる環境」に変わってきている、とも言えます。

このように、「いかに自分自身の市場価値を高められるか」に意識が移っているとするならば、企業側がそれに見合うような仕事内容や役割を提供できないと、どんどん人材が流出していくだけです。

こちらの記事にもあるように、

  • 配属後もお客さん扱いされる(短時間で終わる仕事しか任されない)

  • 育成の負荷がかからない、難易度の低い仕事をやらされる(仕事におけるやりがいや達成感がない)

  • パワハラを恐れて上司が若手社員に対して指摘できない(必要な指導を受けられない)

  • コロナ禍を経て多様な働き方が普及したことで、一定の緩さが生まれた(監視されない時間があるなど一定の甘えが発生しやすい)

など、若手社員にとっての「成長実感を得られるような機会」を創出できていない企業は、それを「配慮」としてきた考え方や方針を、今一度見直すタイミングに来ているのではないかと思います。

上司と部下のゆるい人間関係は、部下にとってはラクな面も多々ありますが、結果的に、本人にとっては成長機会が奪われるだけでマイナスです。それに気づき始めた人が転職や起業を計画し始めるのです。

何かと自分の世代とは就労観の異なる若い世代と、距離を置いたり、遠慮したりする潮流が、上司と部下のコミュニケーション不足や連携不足、指導不足、育成不足を招いてしまっているのではないでしょうか。

職場のホワイト化を過剰に求める弊害がホワイト化のメリットを大きく凌駕し、企業の成長を停滞・鈍化させることにつながっていかないか、何らかの方法でチェック機能を働かせなければならないと思います。
 

■社員の成長実感を高める7つのポイント

次に、前述のような状況を踏まえて、どのように社員に成長実感を得てもらうかについて考えていきます。

自分自身が成長している実感を持ちながら行動できる状態が「成長実感がある」状態ですが、それは決して簡単なことではありません。客観的に自分自身の能力や強み・弱みを理解した上で、自分自身の成長や成果を肯定していくことは実は難しいことです。特に、現時点で自分自身に不足しているスキルや能力を直視し、成長していることを発見・肯定し、自信をつけていくプロセスの中で成長実感は育まれていきます。

社員の成長実感を高めるために意識すべきポイントは以下の通りです。

①現時点の実力よりも難易度の高い仕事を任せる
→「以前よりも難しい仕事を担当している」とか、「実力は足りていないがその少し上のレベルの仕事を与えられた」といった状態があると、結果を出すために集中力を引き出し、本来期待できる効果よりも高いパフォーマンスを発揮しやすくなります。あまりにも現時点の能力と、求める能力レベルに乖離がある状態だと逆効果ですが、適度なレベル差を認識しやすい状況を生み出せると本人のやる気に火をつけることに繋がり、理想と現実の能力ギャップが縮まる度に成長実感を生み出すことになります。

②責任感と達成感を引き出す
→最初からいきなり「仕事に責任感を持て」と言われても、本質的にその仕事のゴールや、それによって得られる成果や影響範囲などを理解できていないと、当事者意識を持てません。一つ一つの仕事が周囲にどのような影響を与えるのか、それによってどのようなことが起こるのかを理解してもらうことが重要です。また、上手にゴール設定ができると、そのゴールに到達するまで仕事を全うしようと、責任感が生まれます。その結果、目標を達成すれば達成感が生まれ、周囲からの信頼を得て、さらに大きな仕事への挑戦心が芽生えます。その過程でさらなる成長を実感していくのです。

③長期的なゴールと中間目標のマイルストーンを設定する
→設定するゴールが短期的なものになると、得られる成長実感もそれに比例して小さいものとなります。小さな成長を積み重ねることで得られる成長実感もありますが、長期的なゴールを設定し、その長いプロセスを踏む過程で何度も壁を超えることで、その度に成長しているという実感を得やすくなるはずです。長期的、かつ成長し得るだけの適切な難易度の目標をセットすることが、人材育成においての必須条件です。長期的なゴールに向けて達成に近づいているかどうかを測るための、中間目標地点のマイルストーンを置くことも大事で、ゴールまでの道のりを細分化することで成長実感を得るタイミングを増やすことにもなります。

④相手の納得度の高いフィードバックを行う
→上司が部下にフィードバックをする際に大事な点は、「率直に話すこと」「相手の意見を傾聴すること」「(人格)否定をしないこと」「結果やファクトに基づく具体的なフィードバックをすること」など様々ありますが、「相手の納得感を醸成すること」が特に重要だと思います。納得感を引き出せると、フィードバックによって指摘した点を反映させた“行動”に繋がります。その結果、以前よりも良い成果が残せると、一つのステップを乗り越えたという実践の伴った成長実感を得ることになるのです。

⑤承認や賞賛の機会を頻度高く設ける
→人が成長を実感するのは、目標を達成した時や何かをやり遂げた時だけなく、周囲の人から褒められたり評価された時にも成長を実感することが多いです。結果が出るまでのプロセスや、定量的な成果以外にも仕事に向き合う姿勢などを見て、意識的に相手を承認する機会を設けることが大事です。部下のやる気を引き出すことが上司の重要な仕事の一つであり、「褒める」「認める」「評価する」以外にも複数のパターンを持ち合わせている管理職は非常に貴重です。個人の特性をよく理解した上で、成長意欲や成長実感を引き出すためのコミュニケーション方法や育成施策のバリエーションを複数持っておく必要があります。

⑥新しい知識などのインプットを習慣的に行う
→日々の業務が単調で、一度覚えたことを繰り返すような単純作業ばかりだと、仕事に慣れていくことで徐々に成長実感を持ちにくくなります。領域を広げ、新しい知識や経験を定期的に身につける機会がある方が、刺激を受けながら成長することが可能になります。常にあらゆる知識や情報をインプットし、さらにアウトプットする習慣がある人の周りに、刺激や情報や人脈を求めて人が集まるように、現状に満足することなくより多くの知識を積極的に取り入れ実践に生かすことこそが成長実感を得ることに直結すると思います。

⑦仕事やキャリアに対する「余裕」や「安心」を引き出す
→仕事の量、クオリティ、スケジュール、仕事に向き合う気持ちなど、全てのおいてある程度の“余裕”や“安心感”がある状態だと、自分自身を客観視できたり、俯瞰しながら物事を進められたり、内省や自己啓発に充てられたりと、成長実感を得るために必要不可欠な状態を作り出すことができます。常に時間やタスクなどに追われている人ほど、本当にやるべきことを取捨選択しながら、自ら余裕を生み出す工夫を施すことが重要です。

最後に、こちらの記事にも、

20代前半で会社を移る早期転職をする人がいる。最初に入った会社を勤め上げようと考える人が減り、若手の人材不足に悩む企業も受け入れる事例が増えているためだ。

とあり、「成長実感が得られず、所属している部署や会社でしか通用しないと不安があって転職に踏み切る人が多い」という内容が紹介されています。

そのような流れを受けて、年齢ではなく、業務における成果で待遇を決めたり、昇進に必要な年数を短縮し、20代でも管理職になれる制度を導入したりと、大企業が積極的に新たな施策を打ち出しています。昔のような「石の上にも三年」は通用せず(企業によっては、“石の上にも十年、または二十年”のような大企業もいまだにありますが。)、組織の中での成長機会を確実に提供し続ける仕組みがないと、優秀な人材を引き留められないことは明らかです。


働きやすく、働きがいもある「真のホワイト企業」への進化をいかに遂げるのか。
少子高齢化で人材不足はさらに深刻化する中、働き手の成長実感や達成意欲などを満たすために、横並びの処遇や評価、育成手法から脱却し、社員の成長を支援できない企業は、これから先に大きな成長を遂げることは難しいのではないかと思います。




#日経COMEMO #NIKKEI

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