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正解がない世界へ、変われない大人を導くアートプロジェクトを #妄想まちづくり

今の仕事をやめたら何をすればいいかわからない。そんな風に考えている40〜50代の声をよく聞く。

先日お会いした50代後半の大学教授の方ですら、『自分は定年したら何の役にも立たない』『何をしていいのかわからない』とこぼしていた。

高度経済成長期を支えた大人たちの忍耐力には脱帽する。私にはきっとできない。

その一方で、その『忍耐力』は『自分を変えない力』にもなり、時代が変わった今、変化しづらい性質として出てしまうのではとも感じる。
そして、高度経済成長時代は、美徳や強みとされていた忍耐力が、変化が速いこれからの時代には逆に足かせになるとも言える。

だからこそ、日経COMEMOチームから『世の中を変えるお金の使い方は?』とお題を出された時、私はまっさきに”変われない大人を変えるために”お金を使えたらとおもった。

人を変える手助けをすることが、世の中を変えることになるから。

そうして思いついたのが、変われない大人の心を解きほぐすプロジェクト。

変化しづらい、変われないという大人たちの心をアートで解きほぐすというもの

『変われない大人を導くアートプロジェクト』

唐突感があると思うが、わたしがワクワクと妄想した未来について、書いていこうと思う。


黒字なのにリストラ加速、飛び出さざる得ない中高年

2020年になり、オリンピック景気も手伝って、日本では好業績を叩き出す企業が多い。しかしそのような企業ですら、過去最大の人員削減策を打ち出している。前年度、最終損益が黒字だったにもかかわらず、中高年を中心に前年比3倍(計9千人)を外に出し、優秀な若手を取ろうとするもの。業績が堅調で体力があるうちに、組織の新陳代謝を良くしようというものだ。

人材の流動化は重要だ。その一方で、一度も転職したことがない中高年のおじさんたち(40-50代)は、組織から飛び出した後、すぐに自分の好きなことを見つけられるのだろうか。または、地域社会とちゃんと接続できるのだろうか?きっと私が伺った大学教授の言葉『何をしていいのかわからない』は、多くの人が心にもつ言葉だと思う。

だからこそ私は思う。
大きな変化を生み出す前の、”いけす的な役割”として、正解がない世界へ飛び込むおじさんたちに、**地域でのアート鑑賞を実践すると効果があると。 **

アート鑑賞おじさんだけでなく、誰でも楽しめる

地域のアートプロジェクトといえば、今、最も日本で有名なのは『瀬戸内国際芸術祭』かもしれない。3年に1度、瀬戸内海の12の島と2つの港を舞台に開催される現代アートの祭典。

ベネッセの配当金からなる福武財団が20年前から実施しているもので、2019年は投資額12億円に対して、全体売上139億円で運営されていた。

この大規模なアートプロジェクトでは、経済効果だけでなく、地域の子供からおじさんをつなげる。

それだけでなく、言葉が通じない外国人ですら共に楽しめるイベントのため、会場となっている地域には日本人だけでなく外国人の移住者も増えているという。

新たな気付きを与えるアート鑑賞とは?

ここで私が勧めたいのは、このアート鑑賞を地域で多くの人が体験できるようにするというもの。できれば、そのアート鑑賞は、作品の時代背景や、作家の人となりを聞くような一般的な鑑賞ではなく。参加者が自由に自身の気付きを口に出せる『対話型のアート鑑賞』がいい。

「対話型アート鑑賞」とはニューヨーク近代美術館(MoMA)が教育プログラムとして開発した鑑賞法だ。参加者全員が一つの作品をじっくりと鑑賞し、その後、決められたテーマで自由に語り合うというもの。1人の学芸員(ファシリテーター)と10人未満の参加者で開催されることが多く、現在アメリカでは100以上の美術館と300以上の学校で実施されている。

対話を通じて、正解のない世界を疑似体験

「対話型アート鑑賞」が、なぜ変われないおじさんたちにいいかというと。多様性を受け入れる/考えを変化させる練習になるからだ。作品と真剣に向き合って、テーマに対して想像する。それを語り合う中で「自分」という人間性や、これまでの生き方などを出せる。

同時に、子供や若者それぞれの意見を聞き合うことで、コミュニケーションが生まれる。出てくる意見は、本当にさまざま。その多様性を受け入れて、認める。そこに上下関係や優劣はない。

新しい環境で「多様性を受け入れよう」とよく言われるが、長い間、ビジネスの環境で一定のルールのもと働いていた人たちにとって、新しい世界の多様性を受け入れることはなかなか難しい。でも、対話型アートで多様な意見に出会うと「人はみんな感覚が違う」ということを体験できる。

多様性を受け入れるということは、「正解がない」ということを受け入れること。そうして、これまでの社会人人生とは違い、自分は何をやってもいい、何を発言してもいいと考える練習ができると思った。

小さなアート鑑賞イベントをやってみた

ということで私も、自分の住む地域でイベントを開催してみた。私の町は美術館がないので、地域にある職人さんの作品で。先生は、たまたま、故郷を旅してくれた友達で。かなり簡易的だったけど、そんなイベントをしてみると、本当に以下のメリットを感じることができた

・メリット1)教養につながるという文句で始めやすい
・メリット2)正解がない世界に飛び込み、自己肯定感を上げられる
・メリット3)地域や歴史と繋がれる


(当日の様子は以下のブログから)


誰もが自分らしく認められる社会をつくるための投資を

これから、経済、企業組織、個人のキャリアにいたるまで、ありとあらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な時代を迎えていく。

(いろいろな会場で聞くのだが)地域のおじさんは使えない、変われない。プライドが高くて、どうしようもない。そんな言葉で、まだまだ働きたい、頑張りたいと思う人を置き去りにしていくのはとても悲しい。

まずは、人はいくつになっても変われると信じること。そして、それぞれの地域でその入口にアート鑑賞プロジェクトを置いていきたい。

アート鑑賞は、ボランティアのナビゲーターと10人以下の参加者で実現できる。毎週末に、小さく小さく、何度でも。年齢別やテーマ別で、地域の人が発言する場があったらいい。そんな景色を見たいから、私がいる地域でも是非、実践していきたいと思う。

人を正解がない世界へエスコートしていくためのお金が、私は長期的にも世の中をより良くしてくれる投資になるのではと思う。地域としてそんな時間やお金の使い方をしたいという方がいたら、いつか、その変化を一緒に作れると嬉しいなと思う。

#日経COMEMO #COMEMO #世の中を変えるお金の使い方 #妄想まちづくり




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