欧州でも高まるインフレ懸念
12月の欧州インフレ率は過去最高を記録したとともに、6か月連続でコンセンサス予想を上振れるという状況にある。上振れた要因のうち、40bpはユーロ圏全域における電力・ガス価格上昇の直接的な影響に起因し、残り20bpは同間接的な影響(たとえばレストランの暖房など電力・ガス価格の上昇分の一部を消費者への価格転嫁とした場合など)である。
基調的にはインフレ圧力の急速な高まりが見受けられる。第一に、投入コスト(輸送および肥料)の上昇や昨年の世界的な農産物価格の高騰を背景に食品価格の上昇が加速している。通常9か月程度のタイムラグがあることを踏まえると、食品価格の上昇は今後数か月にわたって加速する可能性がある。第二に、サプライチェーンの混乱に伴うコア財への波及的影響はまだ出尽くしていないかもしれない。企業の算出価格に関する調査は、こうした影響がピークに達している可能性を示唆しているものだが、コア財価格への圧力が弱まったと言える程、サプライチェーンが安定的になったわけでもない。第三にサービス価格の上昇が加速している。サービス価格指数は12月に2か月連続でパンデミック前のトレンドを上回っている。しかも、オミクロン株の感染拡大によって、目先的な物価上昇圧力の推移に影響を及ぼす公算が大きい。影響は不明瞭だが、インフレ圧力を生じさせる傾向に働く。
実はテクニカルな要因として、大幅なマイナスのベース効果があった。それらは、ドイツの付加価値税VAT減税措置の終了と炭素税引き上げ、さらには冬のセールの延期から1年を迎えることなどで、ユーロ圏の総合インフレ率を100bp程度押し下げることがわかっていた。しかし、一方でユーロ圏全域におけるエネルギー価格の上昇がその多くを相殺してしまうため、下押し分は気にしないでよくなってしまったこともある。
こう考えると、2022年のユーロ圏インフレ率はどこかの時点で伸び率は鈍化するであろうが、水準は高止まりとなるであろう。2022年のインフレ率は平均4.1%、年末まで2%を上回る水準というところ。
ラガルドECB総裁は米国対比で見たインフレ圧力や景気回復が強くないことを挙げ、FRBほど積極的にインフレに立ち向かう必要はない、と述べるなど、金融引き締めへの転換が差し迫った様子を示していない。しかしながら、こうしたインフレ圧力が煮詰まっていかないかには十分に注意しなければならない、とは言えるであろう。