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米大統領選挙で試される民主党のデジタル・キャンペーン戦略




2020年に行われる大きなイベントとして注目を集めていることの一つに11月に開催される米大統領選挙があります。2016年11月の投票終了直後に大きな衝撃をもたらして誕生したトランプ大統領ですが、好景気に支えられていること、巧みなデジタルキャンペーン、そして現職大統領を倒しうる強力な民主党候補がなかなか見いだせない、という中で、トランプ氏再選の可能性も頻繁に話題に登りつつあるように感じます。



そんな中、以下のフィナンシャル・タイムズの米国版編集長ジリアン・テット氏による記事は大統領選におけるデジタル戦略に関しての俯瞰的な過去・現在・未来を分析しつつ、面白い取り組みをしている団体が紹介されていて、とても印象に残るものでした。

タイトルには『デジタルの不正行為(卑劣なふるまい)なしで選挙に勝てるか?〜対トランプの闘いにおける個人データの使用を巡る民主党のジレンマ』とあります。



記事で書かれていることは、民主党は2008年2012年のオバマ大統領を生み出した選挙戦の勝利の後、油断をしてしまい、2016年のトランプキャンペーン、そして今回の2020年の選挙戦を見据えた際に、完全にデジタルイノベーションの分野で大きく遅れをとっている、ということです。同じレベルでデジタル戦略に本腰を入れない限り、決して民主党はトランプ氏の再選を防ぐことは出来ない状況が描かれています。



2018年に明らかになった英ケンブリッジ・アナリティカによるフェイスブックの個人データ不正利用スキャンダル、ロシアからの政治干渉の疑惑などもあるものの、既存のプラットフォームを徹底的に使い倒す際の資金力・ノウハウにおいて、トランプ陣営は民主党を圧倒していて、一方で民主党陣営は十分でなく、未だにテレビCMのほうに重きを置いている様子なども紹介されています。



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*アクロニム(Acronym)ホームページより↑

今回の記事の中で特に目を引いたのは民主党系のプログレッシブな政治団体、アクロニム(Acronym 頭文字という意味)の存在です。2017年3月に出来たばかりのこの非営利団体は、元オバマ大統領再選キャンペーンチームでデジタル戦略を担当したタラ・マクゴーワン(Tara McGowan)氏により設立され、民主党陣営に対してデジタル時代の選挙のノウハウを提供することをミッションにしている団体です。

2018年の中間選挙の際には300万ドルの予算を投じて展開した『若者は投票しないで』のキャンペーンは話題になり、結果65名もの進歩的な議員の当選をもたらしたそうです。このキャンペーンは後に2018年の参院選の際に日本版も登場することになり、ご存じの方もいるかもしれません。



特徴的なこととして、2016年の選挙キャンペーンの際にフェイスブック社から各陣営に派遣された人物など、デジタルキャンペーンの専門家が既に約40名以上で構成され、今年の秋の選挙においてトランプを当選させないことを目的に掲げていることです。
アドバイザーとして、昨年春にフェイスブックを退社したプロダクト部門の元幹部のクリス・コックス氏が名を連ね、資金調達や採用の支援をしているそうです。

既に7,500万ドルの資金を調達し、遅れをとっている民主党陣営のデジタルキャンペーンの巻き返しを図ることを目指しているそうです。

接戦州においては消滅してしまった地方ニュースサイトの代わりに民主党系のメッセージを届けるためのオウンドメディアサイトを作成したり、ポッドキャストを運営するなど、トランプ大統領再選阻止のためのデジタルキャンペーンの支援を行っているようです。

本格的な活動はまだこれから、という印象ですが、2020年を通じて注目に値する存在になりそうです。

アクロニム(Acronym)創業者/CEOのタラ・マクゴーワン(Tara McGowan)氏がホストを務める隔週配信のポッドキャストはこちらから聴くことが出来ます。

こちらのエピソードではトランプ陣営とヒラリー陣営に派遣された元フェイスブック社員で現在はアクロニムに参画している2人のスタッフをゲストに迎えてのインタビューです。今後も重要な主戦場となるフェイスブックの存在、その中で葛藤を抱えながらもトランプ当選に貢献し現在は異なる立場で民主主義のために取り組んでいる元フェイスブック社員の想いが紹介されています。

2月3日には中西部アイオワ州で開かれる党員集会と、同11日の東部ニューハンプシャー州での予備選挙が行われる予定で、3月3日には全米14州で一斉に予備選が開かれる「スーパーチューズデー」へと候補者選びが進む中、どのようにデジタルイノベーションが進むのか、興味を持って見つめていきたいと思います。

Photo by Marc Schaefer on Unsplash

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