GOTO無罪?それでもGOTO即停止しないと年内に全国5000人以上の感染者になる訳〜欧米第2波から学ぶ今は徹底した自粛を〜
欧米の春の第1波はやはり初動の遅れ、アジア人特有のファクターXは未だに存在しない
強いロックダウンにより、封じ込めたはずのヨーロッパで、この秋大きな感染拡大の第2波が起きている。各国死者は, 毎日500人レベル。日本のコロナ関連累計死者数を4-5日で超える感染拡大が起きている。
私は7月に、アジアと欧米の数10倍の感染者数の差を生み出したパンデミックは単に1-2ヶ月の初動対応の遅れが原因に過ぎないとした。同時に比較的感染が押さえられているアジア人について、かかりにくい、重症化しにくい要因があるはずというファクターXはない、と推定した。
今や経済はグローバル化し世界は距離に関係なくタイトに結びついている。保菌者は世界各国に長くても十数時間で移動できる。私自身は、欧米含めて2020年1月初旬には、第0号感染患者(Patient Zero) は世界各国に発生していたと考えてもおかしくないと推測する。(上記note)
やはり日本と同時期に、新型コロナ感染者は既にヨーロッパにいた。
”1月24日、フランスで初の感染者が確認された。感染者の3人は武漢市から来た人物だった。(中略)だが、他の多くの国と同様、フランス政府は無為無策だった。”- ジャック・アタリ「命の経済」
”1月28日、中東(ドバイ)とドイツで初の感染者が確認された。感染者はいずれも中国から来ていた。同日、イタリアでも初の感染者が確認された。感染者はミラノ空港に到着した中国人旅行者のカップルだった。”- 同上
”1月31日、イギリスで二人の感染者が確認された。” - 同上
しかし、「アジアの対岸の火事」との認識の各国政府、国民の初動対応は遅かった。
2月19日、ミラノでUEFAのサッカーチャンピオンズリーグのアタランタBC(イタリアベルガモ)とバレンシアCF(スペインバレンシア)の決勝トーナメントが通常開催された。
その後、北イタリアとスペインで大規模な集団感染が起きている。
ファクターXについては、これまでも様々な仮説が出てきては消えた。未だに決定的な論文は出てきていない。例えファクターXがあったとしても、感染リスクを多少下げる可能性があるだけで、通常の感染防止対策(3密回避、会食自粛)が不要だとする疫学的根拠はみつかっていない。
では、ロックダウン後の第2波は何故起きたのか
そうは言っても、初動は1-2ヶ月遅れたにせよ、感染拡大を一旦は強い強制的な施策(ロックダウン)で封じ込めたはずのヨーロッパ各国で何故、この秋冬第2波が来たのか。
第1波を経験したヨーロッパの人々は、夏以降のロックダウン解除以降は、マスクをして店舗でも通常の感染予防策を行っていたはずだ。
それおそらく、第1波で市中感染が広がった結果、表に見えない無症状の感染陽性者も相当数市中に広がり、その人達が、無自覚に移動して旅先で感染を拡大させたのではないかと考える。
一度感染爆発を起こしてしまうと、収束できたかに見えて、相当のウイルスキャリアを発生させてしまうのだ。(がんの再発のようなものかもしれない)
そしてその感染陽性者が夏季休暇に移動し、そしてそれに加えて通常のマスクをしない飲食等の日常活動を行った結果、再び感染拡大が起きたのだと推測している。
ヨーロッパの一部の国はロックダウン(都市封鎖)を唐突に解除し、「これで普通の生活に戻れる」という誤った安心感を人々に植え付けてしまった。
6月下旬、プラハのカレル橋ではディナーパーティーが催され、コロナの感染拡大終息を祝って人々がどんちゃん騒ぎしていた。スペインとイタリアは3月と4月にコロナの猛威に襲われたが、7月と8月には国境を開け放ち、バカンスを楽しむ人々を受け入れた。
スコットランド自治政府の首相は、「英科学者チームがウイルスの遺伝子配列を解析した結果、夏季の旅行によって英国内外からウイルスがスコットランドに持ち込まれた」と結論付けている。
今や、コロナによる死者数が1日590人に達し、同国の過去最多を記録したドイツではメルケル首相は珍しく感情的な強い口調で、訴えている。
「クリスマスで人々の接触が増えれば、祖父母たちとの最後のクリスマスになることもある」(メルケル首相)
世界で唯一日本と似た施策を取っていたスウェーデンの悲劇
春先に欧州各国が厳しいロックダウンを続けるなかで、唯一スウェーデンだけは「国民の自主性を尊重」し「大人の対応」を期待し、ワクチンの開発には時間がかかるとして国民全体での「集団免疫」の獲得を目指していた。
つい2ヶ月前までは、自由な生活、経済活動の維持と感染拡大防止に成功した国と称賛されていた。
”6月時点で、ストックホルムでの抗体保有率は20%程度でしたが、新型コロナに対し、感染を防いだり軽症化させたりする細胞性免疫が存在する可能性が次々と報告され、公衆衛生庁は7月17日、“集団免疫がほぼ獲得された”という見解を発表しました。”- スウェーデンカロリンスカ大学病院勤務宮川絢子医師
それがこの1ヶ月で、その優等生スウェーデンが悲惨なことになり、ついにその戦略を断念、変更することになった。
”スウェーデンのコロナによる累計死者数は先週、7000人を突破した。同規模の隣国であるデンマーク、フィンランド、ノルウェーの累計死者数はそれぞれ878人、415人、354人だ。隣国は第2次世界大戦以来で初めてスウェーデンとの国境閉鎖に踏み切った。”
スウェーデンで、何が起きているのか具体的にはわからない。
ただ恐ろしいのは、異なる戦略を取っていた隣国とこれまでと大きく変わらなかった死亡者数がここ1ヶ月足らずで、一気に10倍以上増え米国並の1日当たり死者数に至っていることだ。
何らかのパンデミックや、医療崩壊が起きていると考えられる。
“高齢者施設への訪問”も、4月から禁止されていましたが、こちらは10月から解禁されています。” - スウェーデンカロリンスカ大学病院勤務宮川絢子医師
おそらく、施設での感染爆発が死者急増の原因ではなかろうか。このように、医療介護施設で、医療従事者含めてクラスターが発生すると一気に死者は急増する。米国の春のパンデミックの死者も確か8割近くが医療崩壊を起こした高齢者施設だった。
スウェーデンはロックダウンは行わず通常の経済活動を継続させ、国民の「大人の対応」を要請することでのみ、収束を図ろうとした。日本の戦略に酷似している。(唯一の違いは、何故かスウェーデンの公衆衛生局はマスクの着用を未だに推奨していないことくらいだ。)
日本は今の所、欧米と比較すると感染は押さえられており、政府はよくやっているとエコノミスト誌も褒めている。
ただ油断ができないのは、スウェーデンのように数ヶ月で状況が変化する可能性があるからだ。
最新医学論文から読むCOVID-19について
脳神経内科がご専門ではあるが、岐阜大学大学院医学系研究科の下畑享良先生は、参考にある論文を紹介されている。
例えば、論文によると感染に至るウイルス粒子数は一定であることがわかってきている。一定以下の暴露であれば感染者と濃厚接触しても防げる可能性高まるということは、とにかく自身が無症状でもマスクをする事が大切と理解できる。
また、この新型コロナによる肺炎の炎症反応は、体の様々な箇所(例えば脳)等の後遺症を残す可能性があるらしい。なのでただの風邪などでは決してない、等がわかる。
但し、最も重要な論文は、”JAMA Intern Med. Nov 24, 2020”の「大流行が1年続いている米国でも,集団免疫はまったく実現されていない」といったものだ。累計20万人以上の死者を出しても、抗体陽性率は10%未満。先のスウェーデンや、当初の英国のような「集団免疫戦略」はCOVIC-19において完全に破綻した。
ほとんどの人が感染の既往を得られなかったことになる.自然感染によって集団免疫を獲得するには「多くの死者や経済的損失といった犠牲をこれから何年も要する」 - 岐阜大学大学院医学系研究科下畑享良先生
GOTOは無罪?
① 欧米のような感染拡大は避けられるというアジア人特有のファクターXは存在しない
② 人の移動とそれに伴う旅先での飲食が感染拡大を誘引する
③ 一度、感染爆発を起こしたら、相当数の無症状陽性者を発生させるなどその影響は長期に渡り、結果として経済活動にも致命的な影響を与える。
④通常の経済活動を継続し、徐々に国民が感染後回復することによって抗体をつくり集団免疫の獲得するという戦略は不可能
欧米の2回の感染爆発とこれまでの検討から以上の4点が学べるとした時、今話題になっている「菅総理」肝いりのGOTOキャンペーンはどうすべきか?
観光庁の集計結果の観光経済新聞による報道なので、もちろん割り引く必要はあるが、人の移動だけで感染は広がらないことは、そこそこ満員の通勤電車状態を1年近く続けていても、それが感染拡大要因にならないことからも明らかだ。
数日前、東大准教授のこちらの研究が話題になっていた。
大規模調査ではあるが、GOTOと感染拡大の直接の因果関係が証明することは難しい。例えばGOTO利用者は、そもそも外出好きで行動範囲が広い人だとしたら、「普段から外出して活発な行動を取る人は感染しやすい」という自明の事の「擬似相関」を示しただけかもしれない。実際は2.6%と1.7%の差=1.5倍であり2倍というのは誇張しすぎのように思う。
菅総理も、GOTO自体は悪くないのに、犯人扱いされていると不満そうだ。
GoToキャンペーンの見直しについて「そこは考えていません」と語った。
それでも、GOTO停止を年末年始までに発すべき
但し、GOTOキャンペーンを継続することは、国民に誤ったメッセージを出し続ける。
”現在、新型コロナウイルスの新規感染者数や重症者数が過去最多となり、極めて警戒すべき状況が続いています。既に先週から重症者向けの病床がひっ迫し始めており、強い危機感を持って対応しています。”(菅総理記者会見)
医療崩壊を避けるため、感染防止に向けてできる限りのことを行う時期に国内旅行の代金補助の経済喚起策も必要なのだというメッセージを出し続けべきかということだ。
明確に意図したわけではないだろうが、「GOTOトラベル」(=「旅行にいけ」)のネーミングのアナウンスメント効果(メッセージが人々の行動に与える影響)は大きい。
緊急事態法のような法的強制力を持った私権の制限が行えず、国民の自粛活動に頼るしかない日本において、政府が国民行動に対して出すメッセージは重要だ。
さらに、ヨーロッパのように、移動の旅先で、結局ロックダウンの開放感から騒いだ夏の欧州の人々(真面目に自粛を続けていた人も多いと思うが)のような行動を取ると、日本でも年明けに見たくない数字をみることになるかもしれない。
ワクチンはもうすぐ、ここ数ヶ月は耐えるときでは
医療崩壊を起こしているスウェーデンを横目に、英国ではワクチンの摂取が先週(12/8)始まった。
日本でも5月頃には、供給される見通しだ。
全く先がみえなかった春の状況ではない。
GOTOの財源があるのであれば、厳しい医療環境で働いている医療従事者への感謝の気持ちとして、収束宣言後に使用できるGOTO旅行券として支給することを、今約束してみてはどうか。
そうすれば、医療従事者の意気もあがり、少し先にはなるがGOTOの施策効果も期待できるのではないか?
少なくとも、不要不急の移動と行楽に補助金をつけて誘発するタイミングではない。
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