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クラウドファンディングで次世代リーダーを地元社会が育成する

日本全国に定着したクラウドファンディング

クラウドファンディングが本格的に日本国内で展開されるようになってから10年ほどが経ち、資金調達や新規事業の立ち上げ施策として定着してきた。都市部だけではなく、地方都市でもクラウドファンディングのプロジェクトは数多く立ち上げられている。

コロナウイルスの流行による経済損失を補うために、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる地方都市もある。岐阜県高山市は、観光客が減少し、イベントのキャンセルも相次ぐ中、地元住民向けの誘客施策を行うためにプロジェクトを立ち上げている。

また、地方都市の中小企業が設備増強や事業拡大のための資金調達をクラウドファンディングで行う例も数多くある。長野のサツマイモのスイーツ店「おいも日和」は芋けんぴの増産のためのクラウドファンディングをスタートさせている。岡山県では、水揚げされても食卓に上がることが少ない「未利用魚」や「低利用魚」の活用に向けてクラウドファンディングを企画している。北陸唯一のウイスキー蒸留所である富山県砺波市の若鶴酒造は、クラウドファンディングを使って設けた「三郎丸蒸留所」を持つ。

これらの事例が示すように、クラウドファンディングは地方都市の中小企業にとって、重要な資金調達やPR手段となっている。地方都市のクラウドファンディングに特化したプラットフォームも多数(FAAVOいしわりSandwich)存在し、盛況だ。

地方都市に特化したクラウドファンディングは基本的に「地元を盛り上げるための活動を、地元民同士で助け合おう」という考えが根底にある。資金調達目的であれば、支援者の母集団が大きなプラットフォームのほうが向いている。しかし、地方都市のクラウドファンディングは地方の課題を解決するための試みに対して、志を同じくする賛同者からの支援を募る。

この、志を同じくする賛同者からの支援を募るという性格から、地方都市のクラウドファンディングは資金調達以外の社会的意義も持つ。それは、地方の若者の人材育成だ。


人材育成としてのクラウドファンディングで若者が出ていかない街を創る

筆者はありがたいことに、ここ数年、地方自治体の職員を対象とした研修所にて働き方改革や人材採用・育成に関する集合研修の機会をいただいている。そこで受講生から自治体の抱える課題を必ずヒアリングしているのだが、ほとんどの自治体が若者の流出による人口減を大きな課題として挙げている。

若者の流出が地方都市に及ぼす影響はかなり大きい。日本創成会議が発表した「消滅可能性都市」の定義は、2040年に向けて20-39歳の女性の数が半分以上減少する都市であり、若者の流出は地方都市の消滅に直結する。

若者が流出してしまう理由はシンプルで今も昔も変わらない。就職や進学など、高校卒業後の魅力的なキャリアの選択肢が地元にはないためだ。都会に出ていきたい、地元以外の世界を知りたいという要望も中にはあるだろうが、地方都市の多くが若者にとって魅力のある将来を提示できていないのは残念ながら事実だ。

それでは、若者にとって魅力のある地方都市であるために何ができるのだろうか。地方特化型のクラウドファンディングは、その一助となる可能性を秘めている。

英国 University College London のトゥーカ・トイボネン上級講師が指摘するように、日本は若者が夢を持ち、挑戦することが歓迎されにくい。この傾向は大都市圏でも地方都市でも大きな差がなく、若者の挑戦が歓迎される街は若者を呼び込む1つの手段となる。

自己成長の機会に溢れ、挑戦を歓迎する環境があれば、日本のどこであっても若者が集まってくるのは、大分県の立命館アジア太平洋大学や沖縄県のN高等学校などの成功事例が既にたくさんある。

しかし、大学の誘致は大事業であり、そう簡単に行うことはできない。そこで、地方都市のクラウドファンディングを活用し、地元の若者の挑戦を応援する風土を作る手段が活きてくる。

事例紹介:地場企業が若者の応援をする(大分県別府市の大学生のクラウドファンディング・プロジェクト)

大分大学2年生の三浦 里芳さんは発展途上国への教育支援の団体Recordを立ち上げ、発展途上国への教育支援のクラウドファンディングに挑戦している。この活動は、三浦さんが高校在学中にコーヒー豆の麻袋を再利用したペンケースの開発を行い、販売した経験が切っ掛けとなっている。プロジェクトは、株式会社コトナスの前田 頌太氏をメンターとして迎え、大分の地場企業である三洋産業本社と協力関係を築くなど、地場企業が若者の挑戦を歓迎している好事例だ。

プロジェクトの詳細については、是非、下記リンク先を見て欲しい。

若者が出ていくと嘆いている地方都市は、このような地元にいる「挑戦したい」と思っている若者の声に耳を傾け、彼ら彼女らの背中を押すような活動をしているだろうか。

<高校時代に三浦さん達が文房具セットを送った時の御礼ビデオ>

まずは地方自治体や地元企業が地元にいる若者の挑戦を応援し、助けることで若者が自分の将来の夢を地元で叶えることができるのだという環境を整えることが重要だろう。数多くある、地方都市に特化したクラウドファンディング・サービスは、このような若者を応援する環境作りのための優れたツールとなるポテンシャルを秘めている。



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