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外食自粛で需要が急上昇するミールキットサービス

緊急事態宣言の発令により、全国では飲食店舗を中心とした休業が相次いでいる。休業する店舗では、雇用調整助成金や、各自治体の休業補償制度により、当面は従業員の雇用を維持する道を探っているが、休業期間が長引けば、家賃や人件費を払い続けることが難しくなり、廃業の決断をする店も増えてくることになるだろう。

コロナウイルスの感染拡大がピークを過ぎたとしても、消費者が外食を控える傾向は、当面続くとみるのが妥当なため、飲食業者はこれまでとは違ったビジネスモデルを考える必要もありそうだ。ヒントとなりそうな動向として、米国では、コロナ流行以降、家庭で手軽な調理ができるミールキットサービスの需要が急拡大している。この業界大手の「Blue Apron(ブルーエプロン)」では、3月以降の注文が急増していることから、同社の株価は5倍以上に高騰している。

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海外では夕食の調理材料を箱詰めしたセットを宅配するミールキットサービスが5年程前から人気化して、2017年までには150社以上に増えている。サービスの内容は、サブスクリプション型で会員顧客を集めた後、週に1回のペースでレシピ付きの食材セットが自宅に届く。キット化された料理は、30分以内に作れることを想定した内容で、アレルギーやベジタリアン向けに配慮されたメニュープランも用意されている。

ミールキットに対する消費者側のニーズは、「できるだけ簡単に調理ができるもの」「食材の鮮度や安全性が高いもの」「健康(持病)に配慮されたメニュー」など細分化されているため、地域の食品業者にとっても、それぞれ参入の余地がある。

たとえば、サンフランシスコ在住の元シェフが創業した「Sun Basket」が販売するミールキットは、食材の品質や安全性にこだわることで、年収レベルの高い顧客層からの人気が高い。野菜、果物、穀物は99%がオーガニック、肉と卵は抗生物質や成長を促すホルモン剤が使われてないもの、魚介類は養殖ではなく、天然で収穫されたものを揃えている。

その分だけ料金設定も高く、1人1食あたり11~13ドルの設定で、4人家族で週2食のコースを選ぶと、1週間あたりの料金は87.92ドル(約9,700円)になる。契約は、毎週ミールキットの箱が送られてくる、サブスクリプション型である。

ミールキットの開発には、レストラン・飲食店にとっても参入商機がある。 ミールキットの出発点は、外食と同レベルの食事を家庭でも手軽に作れるようにすることにあるため、自分が好きなレストランのミールキットがあれば購入したい、という潜在ニーズは存在している。

ネットで注文できるeコマース型のミールキットは、配達されるまでに食材の鮮度が落ちやすいことと、食材の料金に送料が加算されるのがネックだが、レストランは店舗で鮮度の高い食材を手渡しすることができる。

調理された料理のテイクアウトサービスは、コロナ禍で多くの飲食店が手掛け始めているが、ミールキットはそれよりも家庭料理に近く、冷凍食品やテイクアウトメニューに飽きてしまった家庭から、プチ贅沢な夕食プランとして支持される可能性もありそうだ。

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