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人生100年時代は多くの人にやってくるが多くの人にとってキャリア自律は難しい


こんにちは。弁護士の堀田陽平です。

以前、ジョブ型雇用と企業の人事権との話を書きました。

今回は、企業の人事権とも関係する、キャリア形成の話を書いていきたいと思います。

人生100年時代の到来と「終身雇用」

「人生100年時代」という言葉は、今となってはよく聞く言葉になりました。

リンダグラットン教授の「LIFE SHIFT」(東洋経済新報社)で記述されているように、これから、日本の人口の半分が100歳まで生きると予測されており、これが人生100年時代と言われています。

これを働き方の観点から見てみると、「終身雇用」の問題に関係してきます。
すなわち、仮に、65歳(又は70歳)で仕事をリタイアしたとしても、人生100年時代においては、残り35年(又は30年)の人生が残っていることになります。人生100年のうち、約3分の1が残っています。

そうした長い期間を仕事もないままに過ごすことは、経済的にも精神的にも難しく、何らかの形で仕事(ボランティア的なものかもしれません)をするなどして、社会的な接触関係を保つ必要があります。

そうすると、仮に65歳(又は70歳)まで雇用が保障されていたとしても、それは“長期”雇用であったとしても、“終身”雇用とは到底言うことはできず、「終身雇用」はもはや成立しないということになります。

“長期”雇用がもたらすキャリア形成上の問題

私は、“終身”雇用と“長期”雇用には、表現の違いにとどまらない大きな差異があると考えています。

すなわち、長期間、一社において、企業の広範な人事権を背景として様々なジョブローテーションを受けながら勤続することは、生活の安定等のメリットがある一方で、キャリア形成が他律的になる危険性をはらんでいます。

ここで、“終身”雇用が成立していた時代においては、その一社での勤続によって人生のほとんどを安定的に過ごすことができるため、合理性があるといえるでしょう。

しかしながら、これが“終身”でなく、単なる“長期”雇用となると、単に長期間、他律的にキャリアが形成され、その後、自ら社会的接触関係を構築していかなかればならなくなります。

これは、これまで職務無限定の雇用契約による広範な人事権を背景として会社主導で他律的にキャリアを形成してきた人からすると、非常に難しいといえ、かえって「自律的なキャリア形成」が阻害されるという問題が生じます。

ジョブ型雇用と自律的キャリア形成

自律的なキャリア形成を促すためには、ジョブ型雇用以外にも社内公募制等様々な方法がありますが、ジョブ型雇用の下では、キャリア形成は自律的になるとされています。

すなわち、ジョブ型雇用のもとでは、職務等が雇用契約によって限定されているため、企業は広い人事権を持ちません。そのため、企業が、契約外の職務に就かせようととするためには、個別に同意を得る必要があります。
そのため、働く側にとっては、このタイミングで、自らのキャリアを考える契機があり、キャリア形成が自律的になっていきます。
また、ジョブ型雇用の下では、(一方的に様々な部署に配転されるのではなく)自ら当該職種の専門性を向上させていくこととなり、その意味でもキャリア形成が自律的になります。

自律的にキャリアを形成できる人がどれだけいるか


このように、人生100年時代においては、多くの人が自律的なキャリア形成に迫られます。


しかしながら、社内公募制やジョブ型雇用に適切に乗っかることができ、自らのキャリアを自律的に形成していける人はそれほど多くはないのが現状であろうと思います。
少なくとも現在の大学教育等や、新卒一括採用といった慣行を前提とすると、就労期間の初期は、企業が主導して個人のキャリアを形成させていく必要があるでしょう。
しかしながら、もはや“終身”雇用が成立しないとすると、一定期間を経た後は、自律的にキャリアを形成していく必要があり、企業もそれを推進していく必要があるように思います(その方法の一つが、冒頭で引用しているような取組かもしれません。)。

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