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どうなる?2025年の物価と家計負担!

実質賃金24年0.2%減、迫るプラス転換 食料高騰が影 - 日本経済新聞

●2025年の物価は年前半伸び加速の可能性

直近の消費者物価の伸びが加速している背景には、政府の電気・ガス代への補助金が縮小し、エネルギー価格が物価を押し上げたこともある。さらに2025年を展望すれば、足元ですでにガソリン負担軽減策が出口に向かっていることや、電気・ガスの負担軽減策も3月から出口に向かう可能性等もあり、少なくとも春頃までは明確なインフレ率鈍化の可能性は低いだろう。加えて、足元ではエネルギー価格の元となる原油価格が上昇基調にある。また、ドル円レートも150円台後半まで円安が伸長していることもあり、インフレは再加速の可能性すらある。

特に、昨年末ごろから上昇基調にある輸入化石燃料価格の影響が遅れて電気・ガス料金に反映されることからすれば、電気ガスの負担軽減策の出口に相まって多くの地域でこれら料金が値上げされることになる。というのも、政府による電気・ガスの価格抑制は25年3月に半減となり、4月以降は終了とされているため、政府が予定通り政策を遂行すれば、年度明け以降のエネルギー価格が大きく上昇することに注意が必要だろう。

 一方、食料品の価格についても、足元で生鮮食品の価格などが値上がりしていることから、今後もしばらくその価格転嫁が続く可能性が高いだろう。特に、コメ類の価格が過去最高の伸び率で上昇している。また、世界的な異常気象を受けて輸入チョコレートやコーヒー豆に加えて、国産の生鮮野菜や果物の価格も高騰している。このため、こうした食材を原材料とした加工食品や外食なども、今後値上げペースが加速することが予想されよう。

●カギを握る為替相場

 加えて、日本のエネルギーや食糧自給率は構造的に低いため、引き続き為替の動向も2025年の物価を大きく左右しよう。

 そして、これまでの物価上昇の主因となってきたドル高・円安もぶり返している。というのも、そもそもドル高のきっかけが、米国大統領・議会選でトランプ大統領誕生と上下両院が共和党多数となるトリプルレッドだったことに加え、米国経済の上振れ観測に伴うFRBの利下げ観測後退が追い打ちをかけている。事実、FRBのドットチャート、すなわちFOMC参加者の政策金利見通しの中央値を見ると、昨年12月時点では25年に2回の利下げが予想されているが、市場ではそれを下回る1回の利下げしか織り込まれていない。

 また、米国のインフレ率を左右する一次産品価格は、堅調な米経済やエネルギー需要の上振れなどを受けて上昇基調にある。となれば、年明け以降の米国インフレ率も明確な低下は期待できないだろう。事実、FRBが+2%をインフレ目標とするPCEコアデフレーターの直近3か月平均前月比が、今後も続くと仮定してインフレ率を延長試算すると、+2%を上回る水準で推移することになる。となれば、すでに利下げサイクルに入っているFRBも、追加利下げの必要性がさらに低下する可能性があるだろう。

 一方、円安の一因となっていた日本の貿易赤字も、一次産品の輸入価格上昇や自動車を中心に輸出が停滞していること等から拡大に向かっている。

こうした中で、今後の数少ない円高圧力となりそうなのが日銀の金融政策だろう。というのも、すでに日銀は昨年3月のマイナス金利解除から利上げサイクルに入っている。そして、日銀がオントラックと想定する範囲内で経済・物価動向が推移すれば、今後も追加利上げを続ける可能性が高い。

●今年の家計負担は+2.7万円/人程度

以上を踏まえれば、今年のインフレ率も特に前半は低下する可能性が低いだろう。というのも、先に見た通り、これまでの生鮮食品価格の上昇や円安が加工食品や外食に今後も転嫁されることに加え、政府のもろもろのエネルギー負担軽減策が春にかけて出口に向かうためである。

なお、日経センターが公表している最新(1月分)のESPフォーキャスト調査によれば、CPIコアインフレ率は年後半以降に伸びが鈍化する見通しとなっている。

持続的なインフレ率の維持にはディマンド・プル・インフレが必要であるが、そもそも日本は内閣府と日銀が推計するGDPギャップを見ても、直近で依然として需要不足が続いている。こうしたこともあってか、特に25年後半以降は実質的な購買力の低下などにより日本のインフレ率は低下トレンドに入り、エコノミストコンセンサスによれば、25年10-12月期のコアCPIのインフレ率は+1%台まで下がる見通しになっている。

仮に、25年1月分のESPフォーキャスト通りに今後も消費者物価が推移するとすれば、2024年のインフレ率+2.5%に対して2025年のインフレ率は+2.3%に鈍化することになる。そして、2023年家計調査の二人以上世帯人員と消費支出データに基づけば、家計の一人あたり負担増加額は2024年に前年から+3.1万円(4人家族で+12.5万円)増加した後に、2025年はそこから+2.7万円(4人家族で+11.0万円)増加すると試算される。

一方で、25年は「103万円の壁」引き上げが実施される見込みである。このため、平均的な家計ベースでは、こうした所得控除の拡充による減税分で値上げによる負担増を一部相殺できる可能性がある。しかし、現時点での与党における税制改正大綱案(所得税は基礎控除と給与所得控除を10万円ずつ引き上げ、住民税は給与所得控除のみ10万円引き上げ)では減税効果が0.6~0.7兆円となり、国民民主党案(所得税も住民税も基礎控除を75万円引き上げ)の減税効果とされる7.6兆円の10分の1以下にとどまることになる。したがって、現状のままでは家計負担軽減効果が限定的になることには注意が必要であろう。


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