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「バイトありきの学生生活」からの脱却でキャリアに差をつけよう

コロナ禍でバイトがない!

全世界がコロナ禍で新たな生活様式が求められるようになって、早1年が過ぎた。これまでの当たり前が当たり前ではなくなり、変化の中で新しい立ち振る舞いを求められた人々も多い。そのような中、大学生も変化の渦中で振り回された当事者の一人だ。

突然のオンライン授業、卒業式や入学式の中止など、数々の変化に混乱の声が一年を通して聞かれた。4月からの新学期も、対面中心とする大学も出てきたが、完全に対面とする従来の方法に戻る大学はほとんどない。コロナが収束しない中で、どのような授業形式が最適なのか手探り状態だ。

このような中で、大学での活動のほかに、学生にとって大きな変化だったのがアルバイトの有無だ。学生のアルバイト先として大きな役割を担っていた飲食店をはじめとしたサービス業が、コロナ禍で営業自粛や時短営業が続き、雇用を維持することが困難になった。そのため、学生のアルバイト先が激減した。この状態は、現在も引き続き継続している。

このような状況に、アルバイトでの収入を前提として学費や生活の予定を組んでいた学生の計画が崩れている。収入に余裕のない家庭から来ている学生にとっては、まさしく死活問題だった。

反面、キャリア教育の面から言うと、学生のアルバイトがなくなったことは良い面もある。引用した日経新聞の記事にあるように、有料インターンシップのように卒業後の進路を意識して、収入を得ながら自己研鑽に励むというスタイルが浸透するようになったことが好例だ。

キャリア教育の最大の敵「学生バイト」

大学生のキャリア教育をしていると、最も大きな障害がアルバイトの存在だ。居酒屋やレジ打ちのようなシフト制のアルバイトは、自分の予定を自分で組み立てることができない。そのため、企業や自治体との連携プロジェクトや海外との合同イベントなど、経験を積むことでビジネスマナーや論理的思考能力、ビジネスパーソンとして成果を出すために効果的な認知能力や姿勢、他者と共に協業するのに有効なソフトスキルを身に着ける機会の見逃してしまう。

学生が持つ最たる優位性は、自由にできる時間が豊富にあることだ。その期間をモラトリアムに消費するのではなく、自己の成長と社会に出た後のキャリア選択のために投資できるのかが重要になっている。このことは日本だけの傾向ではなく、全世界的な傾向だ。世界中の大学で、学生はキャンパスだけではなく、社会に出て大学での学びと実務での経験の両方を研鑽することが求められ、評価されている。そのため、学生時代に半年や一年間といった長期のインターンシップに参加し、そこで成果を出すことで就職先を決めるルートが諸外国の大企業における新卒採用の主流になっている。

ポイントは、学生生活中に能力開発できているか

学生がアルバイトで社会の一端を知り、学生という守られた立場から一歩進んだ大人の世界を垣間見るという経験は、まったくの無価値というものではない。それどころか、伝統的な日本的経営とは相性がよく、合理性もあった。

それは、多くの日本企業で基幹人材のモデルが「終身雇用を前提として就職した新規学卒者をゼロから育て上げて社内特殊技能に長けたゼネラリスト」を求めていたためだ。アルバイトでは、通常、事業活動において最も現場に近く、特殊な技能が求められない単純作業で構成された業務が任されられる。そこでの経験は、定められた業務手順を着実に遂行する能力を鍛えるのに適していたし、多少の理不尽があっても飲み込むことのできるストレス耐性の獲得にも役立った。同様の理由で、上下関係が厳しく、苦しい訓練を通して目標遂行能力を育むことができる体育会系の学生も歓迎された。

しかし、新規学卒者であっても即戦力が求められるようになり、ゼネラリストで身に着けることができる専門性ではグローバル競争で不足する時代へと変化することで、「終身雇用を前提として就職した新規学卒者をゼロから育て上げて社内特殊技能に長けたゼネラリスト」というモデルに限界が来ている。かみ砕いていえば、新入社員をゼロから育て上げるほど、現代のビジネス環境は牧歌的ではなくなったのだ。そのため、学生時代から即戦力として活躍できるように自己投資することが求められている。

日本電産の永森会長が大学改革の必要を声高に叫ぶのも、似たような問題意識が背景にあるように思われる。

もし、飲食業界に就職したいのならば居酒屋のアルバイトは有益な経験となる。しかし、そうではないのならば居酒屋で経験を積んだ学生よりも、アルバイトと同じ時間をかけてビジネスプラン・コンテストで事業計画書を何度も作り上げてきた経験を持つ学生の方が、多くの企業で求めている人材像に近しい。

もちろん、アルバイトに精を出してきた学生も、個人としては素晴らしい資質を持っていると評価されるかもしれない。だが、採用活動は何千、何万という応募者の中から最も適した人材を選び出す作業であるため、同じような能力や資質を持った学生を比較した時に選ばれるのは、その会社の事業内容と近しい経験を持った学生が有利だ。

重要なことは、何をやったかよりも、社会に出た後に活躍するために必要な能力やスキルを開発することができたかである。能力開発のために、自分の時間を投資できるかどうかが重要なポイントだ。

「時間の所有権」を他人に握らせない

学生生活の4年間というのは、長いようで短い。1年目は新生活に慣れることで精いっぱいであり、最後の4年生は就職活動と卒業論文・単位取得だけで手いっぱいだ。そのため、自己投資ができるとすると大学2年生から3年生にかけての2年間しかないことになる。

まだ十分な数があるとは言えないものの、数か月以上の長期インターンシップや有給インターンシップもどんどん数が増えている。大分県のような地方都市であっても、地元の元気のある企業が積極的に有給インターンシップを実践している。また、完全オンラインで実施される有給インターンシップも出てきている。

学生にとっての最大の強みである「時間の所有権」を他者に握らせるのは、自己成長とキャリア開発の観点から避けるべきだ。大学がテーマパークだった時代は終わり、変化のスピードが早いビジネス環境で付加価値を生み出すことができる人材へと成長できるかが求められている。全世界で同時に起きているこの変化に適応できないと、日本のビジネスパーソンは世界で最も能力が低いと評されるようになるリスクすら孕んでいる。

コロナ禍でアルバイトが激減したこのタイミングは、アルバイトありきの学生生活を見直す好機と捉えることもできるのだ。

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