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「貪り、怒り、非がわからない」三毒とんじんち

あけまして…という言葉がはばかれるくらいに、お正月元旦から連続で「どうしちゃったんだ?ジャパン」のような悲しい出来事が続きましたが、せっかくなので、1年の始まりにふさわしいお話を。

貪瞋痴(とんじんち)という言葉がある。仏教で心の三毒と言われている。

貪(とん)とは、その漢字の通り、むさぼることで貪欲に際限なくあれこれ欲すること。「あれがほしい」という物欲に関しても、たとえ最初にほしいと思ったものが手に入ったとしても、それだけでは満足せず「あれもほしい」となってしまうこと。際限なくなってしまうこと。

お金持ちのくせに「まだまだ儲けよう」とするのも同様だし、権力欲にとりつかれた人が、往々にして晩年その権力をより強固なものにしようと、または、誰からも奪われないようにしようとしてライバルを皆殺しにするというなんてのは歴史上の権力者がよくやってきたことだ。

とはいえ、仙人じゃないので「欲がない」人間なんていないわけで、無欲である必要はないのだが、そんなに欲張るなって話だ。

次の、瞋(じん)とは、感情をぶちまけてしまうこと。不快なものに対して激しく怒ったり、妬んだり、恨んだりすること。

これもまたよく見るあるあるだろう。X(旧ツイッター)の中では毎日毎時間毎秒のように、自分の個人的な不快感をぶちまけている人を見かける。もうそれが生きがいのように。

最後の痴(ち)とは、無知であることだが、いわゆるソクラテスのいう「無知の知」を知らない者のことだろう。
人間すべてを知っているわけではないのだから、知らないことがとあってもいい。しかし、変なプライドのある人間だと「そんなことも知らないのか」と言われることが何より不快なので、知らないくせに「いや、そんなことは知っているけど、俺の言っているのは…」などと論点をすりかえや詭弁を弄したりして自己弁護に走ったりする人、いるよね?
そういう人の行為のことです。
知識があるとかないとかじゃなくて、そういう行為を愚かというのだそうだ。

で、この三毒は不幸なことに循環する。三毒スパイラルに陥る。

貪欲すぎて何でも手に入れようとしたって、そんなに全部うまくいくはずがない。しかし、自分が手に入れられないものを他人が手に入れたりするのを見ると非常に不快になる。
その不快感を胸にしまっておけないから、感情爆発させて文句を言ったりしてしまう。ただの文句だといわれたくないので、屁理屈つけてなんとか周りの共感を得ようとしたりする。
しかし、所詮屁理屈にすぎないのが見破られて、「それさ、違うよ」などと指摘されようもんなら「お前は何もわかってない」などとむしろ上から目線でそっちにも攻撃をするようになる。

そんなのいたらどう思います?普通、「相手にしないでおこう」ってなる。そして、誰からも相手にされないで無視されるようになる。

すると、「無視するなよ。構ってくれよ」という貪欲さがとまらなくなって以下同文…。

自分はそんな人間ではない、と思っているかもしれないが、こういうのは「そういう人間がいる」のではなく「誰もが何かのきっかけでそういう感情に支配される恐れがある」ことを認識した方がいい。

うまくいっている時はそうはならない。しかし、人生うまくいくことばかりではない。不条理にも、何も自分に非がなくても、やることなすことうまくいかない時だってある。
そうした時「なんで私だけこんな目に…」と思ったりするだろう。そこに「そんな目にあわないでいるあいつのような境遇になりたい」という貪が生まれ、「なんでそうならないんだよ」という瞋が生まれたりする。

人間だもの、貪瞋が生じるのはしょうがない。強欲にならないようにしようとか、怒らないようにしようとするのもいいが、結果的にそうなっても最後に修正できればいい。
なぜなら、最後の痴は「智」にすることで回避できる。単に知識が豊富ということではなく、知らないことは知らないとわきまえることが「智」である。どうにもならない時はジタバタしないでおこうとわきまえることでもある。

そのうち何の因果かわからないが、やることなすことすべてうまくいかないという運周りが改善されているだろう。そもそもやることなすことうまくいかない時は動かないことだ。

あと、どの段階でも「笑う」ということで回避できる場合もある。特に声を出して笑うこと。自分の笑い声を聞くと脳が勘違いして「ああ、俺って今楽しい!しあわせ~!」って勝手にバグってくれる。これホント。「笑う」って大事。

そういうことを知って実践することもまた「智」である。


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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。