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和風ホラー再燃か、ドイツの日本トレンド追う

ドイツのマインツで11月、日本文化ファンをターゲットにした新しいイベント「怪談」(ドイツ語HP)が初開催されました。もしかしたら、和風ホラーが今、再燃しているのかもしれません。今回はイベント訪問に関連して最近の動向を見渡してみます。

はじめに

まずは筆者の認識を共有しておきます。かつて『リング』、『呪怨』が日本国外でも人気を博し「Jホラー」という言葉もよく見かけましたが、その後、ブームは過ぎ去ったようでした。ところが、近年、この和風ホラーをめぐる状況はドイツでもジワジワと存在感を増していて、今年はぐっと前面に押し出されてきたなと感じています。

ドイツの「怪談」とは?

というわけで、新イベント「怪談」から紹介してみます。アニメや漫画ファンが集まる総合イベントを指す言葉として「コンベンション」がありますが、「怪談」はホラーおよびその関連ジャンルに特化した「コンベンション」と言えます。動員規模は1500人程度(2日間のべ)でしょうか。入場は完全18禁で、未成年は参加できません。11月頭といえば、ドイツでも前後にハロウィーン関連のイベントが多く、「怪談」のコンセプトは、このハロウィーン需要と日本(文化)ファンの重なる部分がターゲット層のようです。

筆者が訪問した初日は入場券が完売してました。アーティストブースは和風ホラーにとどまらず、洋風もあり。さらに、18禁ということでBLなど同性愛の作品から、エロ配信者のブースまでジャンルはかなり多岐にわたります。ステージでは、和風ホラー系のイラストを制作するドイツのイラストレーターが制作プロセスを紹介していました。

「怪談」の様子。会場内は写真撮影禁止です。この写真は特別な許可を得て掲載しています。(写真撮影:sakaikataho)

キーパーソンは伊藤潤二さんなのかも

ドイツでは今年、和風ホラー関連の動向がこのほかにもありました。8月には欧州の主要アニメイベント「AnimagiC」(読み:アニマジック)にホラー漫画家の伊藤潤二さんが招待され、ファンとの交流を楽しんだようです。

イベント招待の背景には「富江」のドイツ語版の発売と関連していたわけですが、ドイツでは同じ時期にファストファッション大手ZARAの姉妹ブランドBershkaが伊藤潤二さんとのコラボアパレルを販売していました。

来年のドコミでは、、、

さらに、同時期にドイツ最大のアニメ・日本エキスポ「Dokomi」(読み:ドコミ、日本語HP)が、来年の夜の部のプログラムとして「Akuma no Mori」(おそらく「悪魔の森」、ドイツ語紹介ページ)の開催を発表しました。ショーコンセプトはホラーと説明されており、日本イベントの一部となれば和風ホラーを前面に打ち出してくると筆者は予想しています。ちなみに、ドコミの夜の部はこれまでコスプレ舞踏会とDJライブの2本立てでした。

鬼太郎のドイツ語版

マンガの翻訳出版では、ベルリンの出版社Reproduktによる「ゲゲゲの鬼太郎」の刊行開始が2021年9月でした。今のホラーマンガを理解するためにも古典的傑作と言っても良い『ゲゲゲの鬼太郎』のドイツ語訳が登場したことは、和風ホラー文化人気の下地づくりに貢献しているのかもしれません。

イベント「コンニチ」でのホラー系プログラム

時期が前後しますが、2022年10月ドイツの老舗大型ファンイベント「Connichi」(読み:コンニチ)で筆者は日本のホラー映像作品の制作者によるトークパネル(イベント公式情報、ドイツ語)を聞いていました。『リング』や『呪怨』のブームが過ぎ去った後にチープなホラー映像への需要はあったものの、予算が少なく撮影には様々な工夫が必要だった等々の苦労した経験が語られていましたが、会場は超満員で日本でのブームは去ったのかもしれませんが、ドイツでの関心の高さはいまだに健在していると感じました。

まとめ

ざっくりとまとめてみます。ドイツでは今年に入り、和風ホラー関連の動きが顕著になっていて、もしかしたら和風ホラーのブーム再燃の兆しかもしれません。一方でもう少し長いスパンでみると、マンガが翻訳されたり、日本の関係者のトークパネルが盛況だったりと、ドイツでの関心は継続し、かつ醸成されてきたようにも思いました。もっとも、伊藤潤二さんのマンガはドイツに限らず各国語版が出ているので、ドイツだけの「ブーム」でない可能性もあります。皆さんはどう思われますか?

ホラーマンガといえば、先日、楳図かずおさんが亡くなられました。もし、海外でのホラー人気を耳にする機会があれば喜ばれたのでしょうか。改めて御冥福をお祈りいたします。


タイトル画像:マインツの新イベント「怪談」のパンフレット(撮影:sakaikataho)


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