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女性活躍推進のカギは、働きやすい環境を作ることよりもチャレンジできる環境を作ること


皆さん、こんにちは。
今回は「女性活躍」について書かせていただきます。

ガバナンス(企業統治)改革の一環として、取締役会にダイバーシティ(多様性)を持たせる動きが加速している。米カリフォルニア州では9月末に、人種的マイノリティーなどを取締役にすることを義務化する改正会社法が成立した。日本でも女性取締役を登用する企業は増えている。企業の意思決定の質の向上につなげる狙いだ。(中略)
日本でも取締役会の多様性確保については、東京証券取引所と政府による企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)が、ジェンダーや国際性などの面からの取り組みを求めており、企業の対応も広がっている。
30年までに取締役会における女性の構成比30%達成を標榜する味の素では現在、9人の取締役の内2人が女性。社内取締役の野坂千秋氏は「投資家からは、女性の社内取締役は非常に珍しいと、前向きな評価を受けている」という。エステーでは、商品の購買層が女性中心ということもあり、08年から継続的に女性取締役を設置。社長も女性だ。取締役兼執行役の吉沢浩一氏は「管理職も視野に入れたキャリア目標をたてるなど女性社員の意識改革が進んだほか、育休復職率も高くなった」と指摘する。社員のモチベーションが上がっただけでなく、顧客からも製品デザインなどを褒められる機会が増えた。
組織のかじ取りを担う取締役会へのダイバーシティ導入は、社会の変化に企業が対応するための手段である一方、それ自体が社会的責任という面もある。企業はそれぞれの立ち位置に合った多様性のあり方を探る必要がある。

2021年度よりガバナンス強化を目的に、経営の監督と執行を明確に区分した当社の新体制が発表され、新しい執行役員体制の中に「次世代抜擢枠」として、私自身も本体役員室に抜擢いただきました。求められている役割のうち、大部分を占めるのが「女性活躍推進」です。

ガバナンス強化のために取締役会に多様性を持たせる動きが加速し、日本でも女性取締役を登用する企業が増えてきているのが実態です。ただ、東証1部に上場する企業の取締役に占める女性の割合はわずか7%程度で、その多くは社外取締役です。

社内人材で将来の取締役候補になり得る人材を早急に育てていく必要があることは明白ですが、その方法が分からないという企業が多いのではないでしょうか。私たちサイバーエージェントでもその課題を抱えていて、将来の幹部候補人材の育成に今まで以上に注力している真っ最中です。

今回は、「女性活躍推進」のための具体的な打ち手を考える上でのポイントを整理したいと思います。

最初に申し上げたい点は、『女性活躍推進=女性が働きやすい環境を構築する』だけではないということです。女性社員が「継続的にチャレンジする環境がないこと」こそが活躍を推進できない大きな理由の一つだと考えています。
女性社員が自分のスキルアップ、キャリアアップを目指し、“チャレンジ”を多く積んだ結果、成功経験も失敗経験も含めてそれが成長につながります。そういった“チャレンジ”の機会を創出できるのは、上司であり、会社であり、女性自らの“意志”でもあります。
女性自身も様々な障害や様々な制約の中でのキャリアをあきらめず、そして上司や会社も、これまでの意識を変え、中長期的に女性社員の活躍を促すマネジメント手法を確立していかなければいけないと思います。
女性活躍を推進するために、マネジメントを機能させるためのポイントを書き出してみます。

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① 性別による仕事の割り振りをゼロに

「お茶くみは女性の仕事」と堂々と言っている人は今の時代はもういないのかもしれませんが、無意識に女性はこの仕事が向いている、男性はこの仕事をすべきというような、ジェンダーによる仕事の割り振りをしているケースがあると思います。
それぞれの強みや得意なことは性別によるものではないと認識し、女性の業務範囲や業務内容を無理に固定化しない(勝手に狭めない)という意識を持つことが大切です。女性はこの仕事は苦手かもしれないと思っていた内容であっても、機会を創出してみると、想像以上にリーダーシップを発揮するような人がいたり、熱く未来を語れるような人がいたり、厳しい競争社会でも逞しく生き残っていける人がいたりすると思います。
そういったポテンシャルを発見しようともせずに、業務目標やキャリアプランの上限を上司自ら設定してしまい、その範囲でしか女性の活躍の幅がなくなってしまうことは、非常にもったいないことです。

② 1対1の人間同士のコミュニケーションを

仕事をしている上で、男性の部下と女性の部下に対して、明確にコミュニケーションを分けている管理職は多いかもしれません。相手のタイプや特性を見ながらコミュニケーション手法を変えていくのは前提としながらも、性別によって「期待のかけ方」や「感謝の伝え方」、「率直な指摘の仕方」などを変に区別されることは、女性にとっては少し残念な気持ちがあります。
誤解を恐れず言うと、常に男性社会の中の“男性優位”の考え方が根付いている人の場合、女性には弱みを見せないと決めていたり、頼ったり意見を聞く対象ではないと決めていて、仕事上のコアな部分を任せたり本音で対話することに抵抗を感じる人がいるようです。
昔からあった、いわゆる「タバコミュニケーション」や「飲みニケーション」は、もともとは男性同士だからこそ成立していた部分もあり、多くの女性にはなかなか割って入れない、見えない壁(男性同士の絆のようなもの)が存在していました。女性の社会進出が進んでいる今、仕事以外での親睦を深めたり、新しいネットワークを構築したり、新しいアイディアや情報を交換し合う必要性が出てきたことで、異性同士でもお互いに腹を割って話す機会を作るなど、新しいコミュニケーションの形やコミュニティ形成の形が仕事以外の場でも必要になってきているように感じています。

幻冬舎の見城徹社長が著書の中で「仕事で大切にしているのはGNO(義理、人情、恩返し)」と書かれていましたが、この“GNO”の考え方は、当然異性間でも大事だと感じており、実際に私の場合もこれまでのキャリアにおいて、とにかく期待をかけ続けてもらい、何かあれば声をかけてもらって飲みに連れていってもらえる上司がたくさんいました。「良い時も悪い時も面倒見てくれた」「この人がいるから絶対に裏切れない」「いつか恩返ししたい」という気持ちは、結果的に良いパフォーマンスにつながり、組織や会社へのロイヤリティ向上にも確実につながります。
性別を超えて1対1の人間として本気でぶつかってきてくれる上司の存在が、女性社員の意識そのものを変えていくのです。

③ 「挑戦と安心はセット」で考える

こちらの記事を見ると、

・将来幹部職に昇進したいと思う人はわずか7%で約70%が「現状維持」か「幹部職にはなりたくない」
・女性の仕事の機会を妨げている要因に「家庭生活とのバランス」を挙げる人が69%

となっており、「家庭内や組織のサポート不足」に課題を感じている人が多い状態です。

約7割の女性が「仕事の機会を妨げている要因は家庭生活とのバランス」と回答するということは、男女間の意識・価値観の差や役割分担の比重の歪さが、女性のキャリア志向に大きく影響していると言わざるを得ません。

サイバーエージェントでは、「挑戦と安心はセット」という人事制度設計の上で大事にしている概念があり、挑戦できる環境と安心できる環境が両軸あることで、人材の活躍支援につながると考えています。

先ほどのような調査結果が出ると、真っ先に「仕事と家庭を両立させるための福利厚生を充実させる」などの案が出てきがちですが、安心材料だけ増やしても本質的には活躍支援は進まず、チャレンジができる環境構築やチャレンジ量自体を増やす仕組みもセットで考えることが大事だと思います。

女性社員が本来の能力を十分活かせる環境に身を置いてもらうために会社ができることを最大限提供していくことは大前提として必要ですが、何か一つの打ち手で解決できるものではありません。ハード面ソフト面含め、全方位的に女性活躍を推進する上でのハードルを一つ一つ取り除く動きが、今まで以上に求められているのです。

冒頭の記事の通り、「女性活躍」はダイバーシティを進める上での第一歩です。
ダイバーシティ実現のカギは、これまでの常識に囚われず、様々な価値観や考え方や個性を受け入れ、それを活かせるかどうかです。
マジョリティがマイノリティを理解し、受け入れていくにはおそらく時間がかかることかもしれませんが、企業としては具体的な対策を講じるとともに、並々ならぬ想いとコミットメントを持って、本気でダイバーシティ実現を図っていかないと、結果的に今の状態から変わることはないのかもしれません。


#日経COMEMO #NIKKEI

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