2022年度の診療報酬改定から読み取るオンライン診療に関する新規事業の可能性
こんにちは。新規事業家の守屋実です。
2月9日に、2022年度の診療報酬改定の詳細が決定、発表されました。
・改定率は、前回2020年度改定に比して、全体で0.94%のマイナス、内訳は、本体プラス0.43%、薬価マイナス1.35%、材料マイナス0.02%。
・改定の目玉は看護職員の処遇改善と不妊治療の保険適用。重点課題は、新型コロナ対応と働き方改革。
2022年度の診療報酬改定ポイント
日本経済新聞の記事によると、「今回の改訂の最大の焦点は、感染症の有事への備え。ただし、今回の改定で医療体制の抜本的な見直しが進むかは見通せない」とのこと。
集中治療室など重症患者の受け入れに関することのほか、オミクロンでさらに注目度が上がった発熱外来の件などについても解説がされています。
また、2022年度の診療報酬改定のポイントが、分かりやすく表にまとまっていました。「不妊治療、感染症対応、外来医療、オンライン診療、子供への支援」などに関するポイントの説明です。詳細は、ぜひ、本文記事をご覧いただけたらと。
オンライン診療の可能性
上述通り、本改定には、さまざまな意味があり、さまざまな診立てがあるのですが、そのうち守屋が注目したのは「オンライン診療」でした。
もちろん、オンライン診療については、これまでの改定でも取り扱われてきました。基本的には緩和の方向で、「診療報酬を受取る側」の日本医師会や厚労省、「診療報酬を支払う側」の健保連や財務省とのし烈な綱引きはありつつも、世の中の流れを踏まえながら、一歩ずつ前に進んでいる状況だと思います。
ただ、その「一歩ずつ」のなかでも、守屋の理解、見え方においては、「今回とこれまででは質的に大きく違う」なのです。
そう解釈しているのは、「恒久的に認める」「かかりつけ医の実施が原則だが、かかりつけ医以外も可」「オンライン初診料2510円」の3つが揃ったからです。
それぞれの意味合いは、「コロナによる時限的、特例的な位置づけからの大きな前進」であり、「対面診療を受けていた医療機関でオンライン診療も選択できる」ではなく、「運用上、最初から最後までオンライン診療が可能となり得る」であり、時限的・特例的な対応の点数水準(214点)から、対面診療の点数水準(288点)に近づいたことで、「オンライン診療の普及の妨げが薄れた」ということ、です。
これにより、期待を込めて、「画期的緩和。物理的な通院距離によって守られていた狭域商圏≒実質的な競争の不存在、が崩壊。医療のUIUXが問われる時代の幕開け」と解釈できるし、そう解釈したいし、いまこそ商機と捉え、勝機を見出したいと思っているからです。
2024年の働き方改革
新規事業家として「商機と勝機を見出したい」ということもあるのですが、別の角度からも、今回の改定は大事な改定だった、と考えています。
それは、「2024年の働き方改革」の大問題です。
働き方改革は、ご存じの通り、労働環境をより良くするための「働き方改革関連法」が2019年より順次施行されているということなのですが、「そうは言っても、この業界は現実難しいよね、5年くらい猶予を与えないと無理だよね」という配慮が、医療、建設、物流などの業界に与えられていたのです。
5年の猶予、つまりは、「医療機関においても2024年に施行される」ということなわけです。
だとすると、コロナの後押しが無かったとしても、どのみち「劇的な医療DX」が必須だったわけです。2024年に施行されるわけですから、2024年の医療・介護のダブル改定のタイミングで診療報酬を一気にオンライン化に寄せても間に合うわけがなく、それよりも先行するタイミングでDXの方向へ加速させる打ち手が必要、つまり、2022年の今回のタイミングで、オンライン化への流れを確実なものとしておく必要があったのです。
PX(UXではない。ペイシェントエクスペリエンス)
ただ、何でもかんでもオンラインだ、DXすればどうにかなる、とは思っていません。
オンライン診療は、対面診療との比較において、触診・打診・聴診等が実施できないことなどから劣る部分があることは事実だと思います。
それでも、コロナ禍においてオンライン診療が活用されてきたことも踏まえれば、患者が適切にオンライン診療を受けることができる環境を整備することは重要であり、ましてや2024年の働き方改革を踏まえれば、なお一層、重要なことなのです。
医療にPXを。
いまが進化のときであり、つまりは、商機と勝機があふれる時間帯が始まっている、ということだと思っています。