制約がイノベーションを生む、という話
ちょうど自社も取り上げていただいている記事が掲載されたため、今日は記事に関連することを書きたいと思う。
先日、世界最大の眼鏡の展示会であるパリで開催されたSilmo展に行ってきた。Silmo展は眼鏡のビジネスを2011年に立ち上げて以来、5度目の訪問になる。
今回は30周年ということで、例年より豪華に開催されたシルモドール(眼鏡業界のアカデミー賞みたいなもの)のレセプションパーティーにも参加させてもらうことができ、色々いい経験ができた良かったと思う。
今日は「制約がイノベーションを生む」、という話なのだが、はじめてSilmo展にきた2013年のことを思い出したのだ。
記事にある通り、今でこそ国内24店舗の眼鏡店を運営し、高単価の眼鏡店として記事に掲載していただけるような規模になっているものの、当時は眼鏡のネット通販がメインの商売だった。テレビなどにも取り上げていただいたものの、眼鏡をネットで売るなんてけしからん、という業界内からの反対圧力もあって、商品の調達先に困っていたところだったのだ。
売る眼鏡がないとどうにもならない、ということで何もアテもなかったが、眼鏡業界の人が世界中から数万人規模で集まる世界最大の展示会に行けばなんとかなるかもしれない、という淡い期待をもって、何回も乗り継ぎもあるような格安航空券を片手にパリに渡ったのがきっかけだった。
現地についたはついたで、眼鏡業界での新参者の自分なんかにはアテもツテもなく、とにかくナンパ師のように広場などで人に話かけてまわったのを覚えている。おそらく数百人の人に声をかけたと思うのだが結果的には、商品調達的を奇跡的に見つけることができたのだった。
その後、結局商品の調達も根本的になかなか解決しないだろうから、もう自分達で商品を作ろう、ということで自社のブランドを立ち上げていくことになるのだが、それはそれで成り立たせるまでにの道のりは非常に厳しいものだった。
2014年からネット通販だけでなく店舗ビジネスにも参入していくのだが、この時も色々と大変だった。何より難しかったのは商業施設内における場所の確保だった。大手商業施設の多くは既に取引のある眼鏡屋さんを優先していれたがる傾向もあるし、うちの施設は眼鏡屋はもうこれ以上はいらない、と門前払いされることがほとんどだった。またまだまだベンチャーで融資で借りられるお金も限定的で資金的な制約もあるからどのように資金を回していくかも課題だった。もちろん一等地なんかは家賃や敷金も高いから出ることはできない。
その中で考えたのが雑居ビルの中層階への出店だった。例えば渋谷店なんかも雑居ビルの4Fにある。こういう場所に出店するなんて新しい発想ですね、と言っていただくことはあるのだが、当初は逆で、これぐらいしか選択肢がなかったから、じゃあどうやったら成り立つのか、を必死に考え続けた。
こういう高単価の物販には適さないと言われる場所で商売を成り立たせるためにはどうしたらいいのか、と頭を振り絞って出た答えが、じゃあオンラインで自社集客をしていこうということで、SNSなどでオンライン集客してお客様に来てもらうことを考えた。
採用もそうで、我々のような新興企業だとなかなか人も志望してくれないから、制約の中で、どうやって会社の独自性を出すのか、を考え続け、他社がなかなかできない自由な文化を構築していくことに心血を注いできた。
この業界に入ってもう13年になるが、この期間でも業界の流れははやく、倒産した会社もファンドなどに身売りした会社もたくさんある。出店場所も商品調達先も不自由ない会社が赤字を垂れ流して身売りしていったニュースを見ると複雑な気持ちになったのを覚えている。もしも、業界内の人が仲良くしてくれてある程度心地よく商売できていたら、今どうなっていただろうか?今頃店舗数も拡大できてなかったかもしれない。