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社内政治は徹底排除すべきものなのか。企業の持続的成長につながる“政治力”の使い方。

皆さん、こんにちは。今回は「社内政治」について書かせていただきます。

『社内政治は「悪」なのか』という興味深い記事を見つけました。
 
「社内政治に悩まされている」、「会社内に派閥がある」、「社内の競争が激しく、相手を陥れようと画策する人がいる」といった話は、現実的によくある話なのかもしれませんが、私自身は全く無縁の環境でこれまできてしまいました。

組織内での政治が活発化してしまうのはなぜなのでしょうか。

そして、それは本当に非合理的、かつ非効率なものであって、徹底排除すべきものなのでしょうか。

会社が人間集団である以上、経営を巡って経営者や社員たちが内部で各自の利害を追求し、対立や主導権争いが起き、その調整や合従連衡が生じる。そうした「社内政治」が経営に影響するのは現実である。欧米のビジネススクールの組織論でも、組織内政治の問題は標準的なカリキュラムとして教育・討議される。
社内政治の問題は日本だけでなく、欧米でも従来から社員へのストレスややる気の低下、意思決定の非合理さといった悪影響、またハラスメント事件の背景要因として検討されてきた。他方、社内のコンフリクト(対立)について多様な当事者間の利害を分析し、調整して関係を構築することは、経営者や管理職の重要な役割である。

■そもそも「社内政治」とは何か

記事によると、社内政治とは、

組織内部で特定の経営者や社員が自己利益を追求するために、組織内の意思決定に非公式な影響力を行使し、行動すること

とあります。

たしかに、自分の利益のためだけに組織内で政治活動を行っている人を見かけると、

  • ストレスを感じる

  • 会社に対するコミットメントが弱まる

  • 会社の発展のための行動を自発的に起こさなくなる

  • 組織全体のモチベーションが低下する

  • 業績や個人のパフォーマンス低下にもつながる

など、組織にとっては悪影響しかもたらしません。

自分の成功や利益だけを考え、承認欲求を満たすために上のポストを狙い、他者と足の引っ張り合いが頻繁に起きているような組織では、長期的に見て会社が発展していくとは到底思えません。社員の個人的な動機が全社的な目標よりも優先されると、当事者だけでなく、周囲の社員一人ひとりの業務遂行力は著しく落ちるはずです。

組織の中で発信力を高め存在感を示すことで、重要な仕事を任される確率は上がります。ですが、声が大きい人や社内外の人脈を自分の思い通りに操る人、何かを犠牲にしながら難しい調整や交渉を完遂させる人ほど、成果は出やすい一方で同時に反感も買いやすく、社内政治によって人間関係を悪化させてしまうリスクもあります。

「社内に派閥がある」ケースや、「出世争いや権力争いがある」ケースなど、社内政治が起こる要因は様々ですが、仕事の本来の目的を見失ってまで社内のゴタゴタに巻き込まれたくないと考える人も多いでしょう。

■不要な社内政治を防ぐには

そのような状態を防ぐには、健全で、かつ生産的な企業風土を醸成することが一番の近道ではないかと思います。

以下に、そのためのポイントを記載します。

①社員の声をよく吸い上げる仕組みを導入する
→コミュニケーションスタイルがオープンで透明性が高い組織ほど、仮に政治的な立ち回りにのみ躍起になるような社員がいれば、自然と経営層の耳にまで届くことになります。もともと経営陣との接点が多く、コミュニケーションも頻繁にとれるような風土があったり、社員の声を定期的に吸い上げるような仕組みがある会社であれば、組織に悪影響を及ぼすような状態は発見・改善しやすいと思います。

②「昇格」がインセンティブにならないようにする
→「昇格しなければ評価されない」「肩書き(役職)がなければ裁量権を持てない」という状態は、その地位をめぐって社内で争いが起きることを助長しかねません。マネジメント職は、あくまでチームで成果を出すためにあらゆる面でサポートをする“役割”を担っているだけであって、マネジメント職というポストが偉いわけでもなんでもない、ということを社内に適切に啓蒙していく必要があると思います。

③人格者をリーダーに登用する
→個人の実績や能力ではなく、社内政治によって直属の上司から高評価を得ている社員がいる場合、そのような人をリーダーに登用してしまうと周囲の納得感を得られないばかりか、逆にそういう人を評価する会社なのだと、白けさせてしまいます。リーダーへの登用基準を明確化・厳格化し、会社が目指したい状態を体現してくれるような人材を登用していくことが、健全な企業風土醸成に役立つと思います。

■社内政治をするにも能力が必要

政治的な能力はうまく使われればコンフリクト解決だけでなくリーダーシップの発揮、社内調整、経営改革などを促し、組織活動を活性化する

とありましたが、たとえば、自分のチームのリーダーの政治的な調整能力が高いと、社内外でコンフリクトが起こった時に、あらゆる利害関係者の中で適切に立ち振る舞うことができたり、根本的な問題解決に向けて部下にその背中を見せることもできます。

意図的に政治力を働かせようと思っても誰もが簡単にできるものではなく、日頃から、「何がどうなればどのような結果になるのか」など的確に状況を把握し、必要なアクションプランを立て実行できる能力がなければならないのです。そして、そういった能力を持っている人こそリーダーに向いていると言えるのかもしれません。

記事には、経営者や管理職、リーダーの調整能力は、重要な「政治的技能」であり、その主要素は、

①     組織内での社会的な関係や状況に対する洞察力
②     対人的な影響力
③     人脈構築能力
④     自分の誠実さを印象づける能力の高さ

であると記載がありました。これらの技能が高いリーダーは、社内調整において秀でた能力を発揮し、関係者と良好な関係を築き、組織変革も起こしやすいのだそうです。

「社内政治」に強い人が持つ能力とは、以下のようなイメージです。

優秀なリーダーは、このような能力を持ち、社内の利害関係を巧みに調整しながら、パフォーマンスを発揮するために必要なことを実現しているのです。

これらの力を兼ね備えている人は、社内政治をしようと思っている、いないに関わらず、その能力を自分のためだけではなく、チームのため、会社のために使うことができれば、非常に大きな成果を残してくれるはずです。

一般的に「社内政治がうまい人」と言うと、「腹黒い」「裏工作しそう」「アピール上手」「上司にだけ良い顔をする」など、良い印象があまりありませんが、たとえば自分を陥れようとするような人が現れた場合などに、武器として「ピュアさ」や「正義感」、「理想論」だけでは、戦えないようなこともあるかもしれません。

そんな時に、いわゆる一種のビジネススキルとして、「社内政治力」を身に着けておいた方が良いと言っても過言ではないと思います。

■個人の社内政治力をどう活かすと良いか

これまで述べてきた通り、「社内政治力」は正しく適切に使えば、経営者や管理職、リーダーにとって、必要な能力です。「個人の利益を追求するため」に使うのではなく、「チームや組織の共通の目標を達成するため」に使うことが重要です。

ジェンダー論的な経営学の視点から、現在の組織内政治のあり方に対する批判もある。英クランフィールド大学のエレーナ・ドルドー博士らによれば、組織内政治はまだまだ古い男性中心社会のモード(人脈、社交スタイル、倫理観など)で動いている。女性はそれを非生産的、非倫理的でストレスの高いものと感じているという。

とあったように、従来の社内政治の行動パターンを、昨今のダイバーシティ推進の流れに合わせて変えていかなければなりません。
社内での非生産的、非倫理的な対立を極力避けていくためには、これまでの男性中心の覇権争いの体質を抜本的に見直して、あらゆるバックグランドや価値観を持った人の客観的な視点を入れることが重要ではないかと思います。中立的な立場から物事を捉え、従来にない新たな方法で、社内の政治に“建設的に”加わることができるからです。

また、「競争と協調」ではないですが、チーム意識が高く協調文化がベースにあるような企業においても適度な競争環境は必須です。当社では創業以来、“競争”の文化と“協調”の文化を両立させながら、年功序列禁止の「抜擢文化」が根付いていますが、抜擢後、その時々の経営状況や経営チームのバランスなどを見ながら、別の人に「席を譲る」ことも頻繁に起こっています。そうしていくことで、特定の人に権力が集中していくことを防ぐ仕組みとしても機能していると言えると思います。(だからこそ、悪い意味の“社内政治”が働きにくいとも言えます。)

社内政治を正しく使えば、個人の利益追求ではなく、企業の持続的な発展や成長につながっていくのです。



最後に、「社内政治」は、あくまで仕事の自由度を高めて、生産性高く効率的に仕事を進めるため、または周囲の人をサポートするための、一つの手段です。不必要に回避するものでも、不必要に対峙するものでもありません。

会社の目指す方向性を正しく理解した上で、一緒に同じ方向を向いて頑張れる味方を増やし、自分の考えやアイディアを具現化していくために発揮するべきであって、社内外に対する発信力や影響力を適切に高めていくためにも重要な能力の一つと言えるのではないでしょうか。



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