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DE&Iに対する「反動」にどう対処するべきか?

イスラエルとハマスの情勢に対する米国の態度を受けて、米国内では世論のみならずアカデミアで、学生や教職員を巻き込んだ分断が深まっている。昨年12月、議会の公聴会でハーバード大学を含む学長の反ユダヤ主義に対する発言が玉虫色に終始したという批判が大きなニュースになった。

この問題がクリスマスシーズンを挟んで収まらず、殊にハーバード大学長については、元からくすぶっていた論文の盗用疑惑と相まって、とうとう半年という短い任期で辞任するに至ってしまった。クローディン・ゲイ学長は、ハーバード大学にとって初の黒人女性学長だ。経済界を含む学長おろしの論調では、そもそもDE&Iを重視しすぎて黒人女性を選んだ結果、実力不足が露呈したという非難の声が聞かれる。

ハーバード大学を含むアイビーリーグの経営は、ビジネスや政界の富裕層による経済的支援と人脈に支えられている。したがって、ゲイ学長辞任の流れを受けて、DE&IにもESGと同じような政治リスクが高まっているという分析を読んだ。DE&IやESGを声高らかに主張することは、“Woke”と称されるリベラルな考え方に加担することを示し、米国内で進む政治的な分断の文脈で捉えられる危険がある。

元に戻ると、DE&IもESGも米国の強い支持で言語化され広がった概念にもかかわらず、発祥地である米国で忌避されることになるとは、皮肉な展開だ。ただし、日本を含む米国外のビジネスにとっては、米国発の過剰な扇動や反動にとらわれず、本質的に大切なことを冷静に判断する必要があるだろう。

米国のDE&I運動は、根深い人種問題を背景としている。移民の増加は米国の国力を支える一方で、非白人人口が増えるにつれ、白人がマイノリティ化することへの危機意識が高まっている。この不安に迎合した扇情的なメッセージを打ち出すポピュリスト政治家の台頭が、問題の深刻さを示唆する。DE&Iへの潜在的な反感や不安が、どこかで臨界点を迎えて反動を起こす下地となっている。

一方で、日本のDE&I運動は、ジェンダーの文脈で語られることが多い。そもそも生産人口の縮小が日本経済停滞の大きな要因なので、女性の経済参加に実存的不安は少ないだろう。日本固有の問題は、仕事でも家庭でも男女の役割分担が過度に固定化していることで、この枠組みを揺さぶることは女性にも男性にも良いことだという意識が浸透しつつある。遅い歩みではあるが、女性管理職比率の向上などを追跡し、DE&Iを進めることは社会的な合意ができている。

したがって、日本では、米国での反動に踊らされず、DE&Iを進める意義を自分なりに解釈し、着実に歩みを進めることが求められると考える。

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