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新卒社員を解き放て。

 僕は、現在の日本の大企業に一般的な「新卒一括採用」というスタイルが好きではない。大学四年になったら一斉に就職活動を始め、短い期間で企業のことを未定め、面接を受けて内定を「勝ち取る」。
 そして、4月に同じようなスーツを着て入社式に臨み、その企業のしきたりなどを「新卒研修」で学んで、現場に配属される。その「横並び感」が好きではないのである。

 僕が新卒で今は存在しない「日本興業銀行」という銀行に入ったのは1990年4月。バブル経済が崩壊する年だった。
 160人の同期が「一斉に入行」して、新人研修を受ける。その当時は銀行も余裕があったのか、半年間、資金調達業務、資金運用(貸出)業務、外為業務、預金業務、確かその4業務くらいの様々な仮配属先に入り、現場研修を受けながら、夜は歓迎会が夜な夜な開催され、新人は毎回「芸」をするのがならわしだった。

 その半年は、業務を覚える期間、というより「銀行に馴染む」期間だった。まあ、その頃は「インターン」などというものも存在せず、会社の方で「社会のしきたり」を指導しなければならなかった、ということだ。
 学生が社会人としてひとまず認められるまで半年間は「お客様」としてみなされていた、ということだ。もちろん、現在では、そんな余裕のある会社はないかもしれないが。

 あの、一斉に就職活動をし、なんだかよく分からない「エントリーシート」なるものを夜なべして書かせ、「御社の志望理由は、、、」というその場だけを繕わせた面接をして、なんとか内定を勝ち取る、みたいなゲームをさせるのはもう、やめにした方がいいのではないか、とずっと考えている。

 どうすればいいかといえば、そんな「一括採用」などやめて、新卒・既卒、就業経験問わず、適宜採用活動をしていく「通年採用」にすればいいじゃないか、ということだ。

 「新卒」で「いっせいに」である必要がどこにあるだろう。
 ヒエラルキーがしっかりしており、終身雇用が大前提、同期の中から部長がいつ出るか、役員がいつ出るか、という「出世レース」をしていた時代には、新卒一括採用が意味をなしたが、

 今はもう、そういう「金太郎飴」的な人事スタイルは馴染まない時代だ。それよりも、年齢も経験も多様な、ダイバーシティ溢れる採用を行うべきだと思う。それが会社のベースを強くするはずだ。

 そして、採用したら、「会社に馴染む」ために研修時間を割くなどというもったいないことをすべきではない。もちろん、会社のルールを伝える必要はある。しかしそれは、動画マニュアル等で自習してね、ということでよいと思うし、その質問を受ける時間にすればいい。

 中途採用社員の教育に、新人研修と同じくらい時間と労力をかける会社はあまりないだろう。大抵、Day1にもろもろ、1日かけて説明して、あとは本配属だ。

 これは「即戦力」を採用したから、だろうか。では新卒は即戦力ではないのだろうか。ならば即戦力になる人を新卒だろうが既卒だろうが関係なく採用すればよい。

 要するに、「新卒一括採用」して、新卒を「即戦力でない」として、時間をかけてゆっくり育てる、などという行為は必要ないと思うのだ。もちろん現実に即戦力でない新卒もいるだろう。しかしもう、「我が社は即戦力を求める」として、最初からガンガン仕事をさせればいいと思うのだと思うのだ。

 僕が大学生の教育に関わって思うのは、「学生だから未熟」なのではない。
「経験する機会がないから未熟」なのだと思う。だとしたら、機会を提供すればいいのだ。そして、任せるという信頼がないから、成長しないのだ。任せれば、勝手にやるし、成長する。

 そんなことを考えながら、この記事を読んだ。
新入社員だけのチームに仕事を委ねるOJTを始めていると。
いいじゃない。どんどん、そうやって仕事を放り込むと、新人たちも、どんどん成果を出す。

 そうやって企業は、「新卒だから」と甘やかさず、どんどん仕事を提供すればいい。そして新卒社員側も、企業の新人研修なんて正直甘やかされているのだから、そこに甘んじず、どんどん突っ込んでいってほしい。

 そして最初に述べたように、新卒だろうが既卒だろうが関係なく、入社した社員が入社直後からみんなガンガンいく、そんな状況を各企業で作り上げられたら、会社が元気になる気がする。

 そんな課題認識を、僕はずっと持っている。

 


 

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