メンタルヘルスの重要性、そして「NO」と言う勇気
見出し画像

メンタルヘルスの重要性、そして「NO」と言う勇気

アスリートにだって、人権はある。

そして悪しき慣習や改善の余地のある環境は、変えていくべきだ。

「女子テニスの大坂なおみ選手が四大大会第2戦、全仏オープン(パリ)のシングルス1回戦勝利後に記者会見を拒否したことを受け、四大大会の主催者は30日、今後も違反が続けば全仏で失格、他の四大大会で出場停止処分の可能性を通告する異例の共同声明を発表した。同日の罰金として1万5000ドル(約165万円)を科した。」

大坂なおみ選手は「記者会見は選手のメンタルヘルスに全く考慮していない」という重要な問題提起をした上で、課せられた罰金はメンタルヘルス系のチャリティに寄付することを望んでいると公言している。日本でこのニュースが報じられた際には、「メンタルヘルス」が「心の健康」と訳されたり、全くメンタルヘルスについての言及がなく、ただ大坂選手が会見を拒んでいるだけかのように取り上げられていることに悪意を感じる。同時に見受けられる日本語コメントは上から目線で「ちゃんとしろ」という批判が多く、個人的には「影響力のある日本人のスポーツ選手が声を上げて良い変化を起こそうとしていて誇らしい」と思っていた分、違和感が大きい。

「スルースキルが足りない」「試合だけ出るのは筋が違うと思う」というコメントは、そもそも大坂選手個人の選択を軽視している上に、「お客様は神様」と似た理論で彼女を抑圧しているように見える。同時に、「お気持ち」や忖度で社会が回る日本は超レアケースであり、むしろ契約に「会見欠席は罰金」と書いてあるのなら、精神的な健康を維持し、問題提起もできるなら安いものなのではないかとさえ(アメリカ人としては)感じてしまう。はっきり言って、困るのは理不尽な大会とメディア側だけだからだ。

こういう話をすると、必ず「他のアスリートも批判していて〜」と書く人が出てくるが、例えばテニス業界の大先輩であるビリージーンキングは「メディアは大事だけど確かに改善するべき点はあるよね」と問題提起に理解を示しているし、直接批判しているのはビジネス的に選手に協力してもらえないと困る権力者たちだ。最終的には個人の判断であること、彼女の影響力を用いてアスリートにとってより良い環境を作ろうとしていることを評価する英語コメントが大多数だと見受けられる。揚げ足取りで「海外でも批判されてる」とか言われてもそれはマジョリティではないし、一般意見のイメージは「勝手にどうぞ、がんばれ」に尽きるのだ。

「テニス界に存在する明らかな人種差別に基づく問題について大坂なおみ選手を非難する代わりに、黒人女性が決定権を持つこと自体が好きではないとはっきり言えばいいのに。」

「彼らのルールだからといって、それが正しいとは限らない。もう石器時代ではないのだから、この古臭いルールを見直す時期に来ているのかもしれない。大会も世界と一緒に進化していかなければならない。」

「彼らにとって、「No」と言うことは抵抗行為。ナオミが自分の立場を揺るがすことなく、メンタルヘルスを守ってくれていることを嬉しく思う。」

「シモーン・バイルスは誰にもできない技をしたことで罰則を受け、キャスター・セメンヤは彼女の生物学的な特性のせいで禁止され、大坂なおみは報道陣に話さなかったことで罰金と脅迫を受け、カイリーはファンの暴力に耐え続け、NFLは黒人選手が「認知機能のレベルが低い」と発言した。」

「大坂なおみ選手がメディアとの面会を拒否したことに対するテニス界のトップの反応を見聞きすればするほど、彼らの性差別的で無知で無神経な行動にただただうんざりする。全仏オープンや4大メジャーを運営している人たちは凶悪犯だ。」

個人のわがままで言ってるだけではなく、業界の構造やアスリートを搾取している不均衡性に問題提起をした上で「よりよく再構築したい」と発言できるのは彼女が超実力者だからであって、大きな社会的責任を持っているからこそ他のアスリートのためにも声をあげている。「嫌でも我慢しろ」は意味がない。上で紹介したツイートのように、大坂選手の決断に対する批判の根的には人種差別や性差別が影響しているとも言われており、このことについても日本では報道、そして認識されることがまだまだ少ない。

害悪な慣習をなんとなく続ける必要なんて本質的には存在しないし、それを変えるためにも社会的地位の高い人行動を起こせる人がボイコットするというのは大きな意味があると感じる。理不尽なルールに従うことはもう「正義」じゃない。デフォルトを疑い、権力を疑い、自らが起こせる変化にこそ価値があるのだ。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
竹田ダニエル

記事を読んでくださりありがとうございます!いただけたサポートは、記事を書く際に参考しているNew York TimesやLA Times等の十数社のサブスクリプション費用にあてます。

もし気に入っていただけたらシェアもぜひ!
Daniel Takeda/米国在住のZ世代/Freelance音楽コンサル/日米カルチャーライター/AWA公式キュレーター/日英通訳・翻訳/執筆ジャンルは「音楽・カルチャーアイデンティティ x 社会」/翻訳・寄稿依頼等はdanieltakedacontact@gmail.com