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半額シールが消えるとき

夜のスーパーで、おいしそうだなと思った惣菜やお寿司に半額シールが貼ってあると俄然テンションが上がりますよね。中身は変わらないのに半額で手に入って、しかも食品ロス削減に貢献していると思うとたいへん素敵な気分になります。

こんなふうに、時間帯によって価格が変わるという発想は多くの人にとって身近なものです。飛行機やホテルの早割も、いまや当たり前のサービスになっています。

ただ、それをとことん突き詰めていくと、まったく新しい景色が見えてきます。

日経電子版の連載「Disruption 断絶の先に」、シリーズ「時は金なり」の第2回は、進化するダイナミックプライシングを取り上げています。

AIを使ってリアルタイムに需要をはじき出し、消費者の反応や在庫も考慮して、電子値札にはその瞬間の最適価格がーー。

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記事に出てくるイスラエル発祥のスタートアップは、イタリアのスーパーで廃棄量を4割も減らしたそうです。環境にやさしいだけでなく、売り上げも利益も伸びるわけで、売り手からすれば夢のような技術です。

しかし、そう簡単にはいかないのが「モノの値段」の奥深いところ。

そもそも価格には、需要と供給のバランスから決まる側面と、社会にとってどれだけの価値があるかを示すシグナルとしての側面がある。多くのモノの価格がごく短い時間で揺れ動くようになると、価値を示すシグナルとしての価格の意味が薄まる可能性がある。京都大学大学院経済学研究科の依田高典教授によると、人間には変化を嫌う「現状維持バイアス」があり、一瞬で変わる価格に基づいてモノの売り買いを判断するのは難しいという。
(記事より引用)

確かに、買い物の難易度は上がりそうです。手に取ったときに50円だった商品がレジで60円になっていたら、遠足のおやつを300円までに収めないといけない小学生には死活問題です。

記事では、すでに10億分の1秒単位で値段が変わる世界になっている、株式市場の現状にも触れています。人間は「AIの見えざる手」とどう向き合っていくのでしょうか。

ダイナミックプライシングの時代には、おおざっぱに一律半額、といった値付けはもう通用しないでしょう。あの半額シールのときめきが過去のものになってしまうのは、ちょっぴり惜しい気がします。

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先端技術から生まれた新サービスが既存の枠組みを壊すディスラプション(創造的破壊)。従来の延長線上ではなく、不連続な変化が起きつつある現場を取材し、経済や社会、暮らしに及ぼす影響を探ります。

(日本経済新聞社デジタル編成ユニット 森下寛繁)