21年度に増収増益が期待される業種とは
4月1~2日にかけて公表された3月短観の大企業調査は、2月25日~3月31日にかけて資本金10億円以上の大企業約1900社に対して行った調査であり、先月公表された法人企業景気予測調査に続いて、今期業績予想の先行指標として注目されます。
そこで同調査を用いて、4月下旬から本格化する四半期決算発表で今年度計画の回復が見込まれる業種を予想してみたいと思います。
3月短観における今期の収益計画によれば、売上高の半期ごとの伸び率は21年度下期に鈍化しますが、経常利益については21年度下期にかけて増益幅を拡大する計画となっています。背景には、情報関連財を中心に出荷在庫バランスが大幅プラスとなっており、循環的な景気回復への期待が高まっていることが、収益計画の下支え要因となっていることが推察されます。
こうした中、売上高計画が最大の増加率となったのが、20年度に大幅減収となった「対個人サービス」であり、それに続くのが「宿泊・飲食サービス」となっており、サービス関連業種が目立っています。背景には、ワクチン普及に伴う経済正常化の恩恵が期待されていることが推察されます。また、こうしたサービス関連に加えて、新型コロナをきっかけとした世界のデジタル化による半導体不足の恩恵を受ける「生産用機械」の大幅増収も計画されています。
一方、経常利益計画から業績の大幅増益が期待される業種を見ると、増益率が大きい順に、原油価格上昇の恩恵を受ける「石油・石炭製品」、ワクチン普及などに伴う経済正常化の恩恵を受けそうな「繊維」、米中を中心とした需要回復の恩恵を受けやすい「自動車」と続いています。なお、「鉱業・採石業・砂利採取業」が金属市況の回復などにより、昨年度の経常赤字から経常黒字計画に転じていることも注目されます。
こうした計画の前提となる大企業製造業の想定為替レートは、2021年度にドル円で105.7円/㌦、ユーロ円で122.6円/㌦となっていますが、足元のドル円レートは110円前後で推移しています。中でも円高方向に今期の為替レートを想定しているのが、むしろ円高が恩恵とはなりにくい「運輸・郵便」「宿泊・飲食サービス」と続きますが、「生産用機械」をはじめとした輸出関連業種も足元より円高気味の想定となっています。
このため、今後のコロナ感染状況やワクチンの普及動向、世界各国の政治情勢などによりリスクオフになり、各国中銀が金融緩和にさらに前向きな姿勢を示すなどして為替レートの水準が更に円高方向に進まなければ、こうした今期の為替レートを円高方向に想定している業種に属する企業を中心に今期業績が修正される可能性があることにも注目でしょう。
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