髪の毛から見えるストレスコーピング効果とカンブリア爆発

時間軸をもった生体情報を一発で取得できる髪に着目した解析ベンチャーによる「みえる」「わかる」と、連携によって価値を提供「できる」人たちによるカンブリアサイクルを考えてみました。

髪の毛からみえることわかること

EVALUATION&CARE(株式会社イヴケア)は、Evaluation(評価)とケア(care)の連結をコンセプトに、毛髪測定を行うそうです。

毛髪は、1ヶ月に約1センチ伸びると言われています。つまり、根元から1センチの毛髪は、直近1ヶ月間の痕跡なのです。ここには、日々のストレスの暴露量やコーピング(ストレスに対処する力)に関連する生化学物質が蓄積されているそうです。

イヴケアの技術は、この蓄積された生化学物質を定量的に評価するものとのこと。様々なヒューマンセンシングの方法がある中で、地層のように、時間軸を伴ったデータが一発で手に入るものは、これまであまり出会う機会がありませんでした。

その場、その時のデータをセンシングし、一定期間蓄積することで、時間軸をもって対象者の状態を解析することができるセンサーや解析の仕組みはたくさんあります。今回の面白さは、毛髪という検査対象そのものが時間の流れを内包しているところだと思いました。

さらに、低侵襲というか、髪の毛を切るだけなので、無侵襲と言えるほど、対象者に対して負荷をかけずに済むというのも面白いです。

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ストレスコーピングとは何か?

このコーピングの話を聞いて、すぐに思い浮かべたのは、カンブリアナイト常連の椎野さんをはじめとする臨床心理学チームです。

椎野さん、森川さん、戸田さん。かつて、戸田さんと周産期向けサービスの企画検討をしていた際に、コーピングについて教えていただきました。

ストレスに対する対処方法のパターンのようなもので、人それぞれ、状況に応じて、ストレスへの対応の仕方がいろいろとあります。直接的に問題を解決するために挑む姿勢、気分自体を良い方向に変えていく姿勢、問題を放置しほったらかす姿勢など。どれが良い悪いではなく、向き不向きがあるのだそうです。

先のイヴケアのサービスは、このコーピングがうまく働いたかどうかを生化学的に解析するというもので、「みえる」「わかる」「できる」「かわる」のカンブリアサイクルが機能する組み合わせだと思いました。

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また、ストレスに対する対処方法の道具として、カンブリアナイトには、ウェルナス、アロマジョイン、スナックミーなどの方々にも登壇いただいています。

ナスに含まれるものすごい成分とは何か?

株式会社ウェルナスは、食による健康実現を目指すベンチャーです。その第一弾としてナスに豊富に含まれるコリンエステルによるストレスマネジメントに取組みます。

ナス由来コリンエステルは、少量で交感神経活動を抑制し、様々なリラックス作用(血圧改善作用、気分改善作用)をもたらすことが確認されています。信州大学学術研究院(農学系) 中村浩蔵准教授が発見した、この新規食品機能性成分は、交感神経活動抑制(リラックス)作用をもつ、耐熱性および耐酸性が高い水溶性物質であり、様々な食品への応用が可能なことから、社会実装に高い期待が寄せられています。

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香りによる介入が心に作用する

株式会社アロマジョインは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)発の、香りをデジタル化し、言葉、画像、音声に加えて、香りのコミュニケーションチャネルを作り出すことを目指すベンチャー。

香りが人々の記憶に残っていく世界をつくりだそうとしているそうです。香りによる非言語なコミュニケーションは、感情や感覚を大きく揺さぶる可能性があると思います。

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お菓子がもたらす価値

株式会社スナックミーは、「食べても罪悪感がない」を意味するGuilt Free(ギルトフリー)をうたうスナック定期購入サービスを提供しているベンチャーです。

特徴としては、Webを通じてユーザーと継続的に接触することで、購入者には個別最適のサービスを提供し、提供されるスナックが柔軟に変わることだそうです。お菓子を食べるという行為自体、ストレスに対処する行動にもなり得ると思えます。そのコーピング効果をギルトフリーで提供できるという組み合わせもまた、とても面白いのではないかと思います。

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カンブリアサイクルがもたらすインパクトを求めて

毛髪からコーピングの効果が時系列で「みえる」「わかる」ようになることで、自分に最適なコーピングのパターンを知り、その行動に最適な道具をつかってコーピング行動が「できる」ようになることで、日々の生活を少しずつ快適なものに「かえる」ことができるようになるかもしれません。

様々なベンチャーが生まれている中、こうした連携をさらに促進させていくことで、より大きなインパクトを社会に与えることができると信じています。世界観が共通していれば、手の繋ぎ方もまたいろいろと考えられると思うのです。





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