ジョブ型雇用はわたしたちの働き方に馴染むのか? 組織と個人の関係、働き方のこれからを考える。
日経の永吉です。最近はZoomイベントを毎週開催しながら、オンラインベースの体験型コンテンツについて研究中です。
リモートワークが定常化し、組織のあり方や個人の働き方が大きく変化しています。
わたしも週に1、2回ほどミーティングやイベントの準備作業をするために出社する程度で、ほぼ毎日在宅ワークの日々を過ごしています。
リモートになることで、資料作成したり、動画をつくったりというクリエイティブ作業の進捗度は以前に比べて向上したように思います。
反面、雑談や偶然の出会いから生まれる会話が減ったため、アイデア創出には何か仕組みをつくらないとまずいなと感じているところです。
わたしは雑談するのが大好きで、チームワークの役割においても、ムードメイクを心がけてきました。
そして、自分のムードメイカーの役割にここ数年で気づいてきたところでリモートワークがスタートしました。
ラフな雑談や冗談と、真剣な仕事の話が混ざりあいながら進むミーティングは楽しい。しかし、オンラインミーティングはそのようなミーティングであっても、なぜか疲れます。
コロナ以前、自分が主催するリアルミーティングは、とくにサービス方針を議論する場合は60分に収まらないことがざらにありました。それでもチームメンバーと一緒に考える時間が関係性構築に比例しているようにも感じていました。
しかし、オンラインベースのいま、メンバーモチベも維持しつつ、持続的に走っていくためには、ミーティングを短時間で終わらせることは何よりも優先すべきことなのかもしれないと思うようになりました。
短時間でいかに創発的な空気をオンラインでつくるか。これがムードメイカーに課されている新たな課題です。
以上はわたしの仕事の変化のお話でした。
このように、みなさんのお仕事でもいま、優先順位が変わり、その変化は新たな課題を生んでいると思います。
自分の目の前の仕事で起きている変化。もっと俯瞰してみると、会社や業界、日本全体で変化が起きています。
時間から成果を評価するジョブ型への変化
最近、ジョブ型雇用という言葉をよく目にするようになりました。成果主義という言葉もセットで目に飛び込んで来ます。
ジョブ型雇用とは、社員の業務内容をジョブディスクリプション(職務定義書)で明示して、その達成度合いで評価する制度のことです。
リモートワーク普及により、社員を時間で管理評価しにくくなったことで、日立製作所や富士通、資生堂など大手が、成果を評価するジョブ型雇用へ移行することを発表しました。
成果につながるアウトプットを猛烈なスピード感をもって常に要求されるスタートアップ企業の社員や個人事業主の人たちにとっては、時代が追いついて来ているふうに映るかもしれません。
しかし、今回のジョブ型雇用へシフトするお話は、企業の規模や、組織に属しているかどうかに関わらず、すべての働く人たちに影響することだと思います。
適材適所から適所適材への変化
ジョブ型への移行と聞いて、過度な個人主義や成果主義になるのではないかという評価リスクが問題視される傾向にありますが、それは労務制度的な問題と言われています。
組織が利益を出すためにまず備えなければならない変化は、仕事を動かしていくプロジェクトのあり方が大きく変わる点だと言われています。
これまでは、いまいるメンバーのスキルをベースに事業やサービスが生まれがちだったのが、これからは、組織がやるべき事業やサービスなどの「コト」が先に立ち、コトに対して人(メンバー)が社内外問わず招集されることになる。つまり、「適材適所から適所適材」へ変化せざるを得ないのではないかと、リンクトイン・ジャパン代表の村上臣さんは言います。
ヤフーが副業人材募集を本格的にはじめました
ヤフーがこの変化に乗るかたちで、先日大きな反響を呼びました。労働時間より成果を重視した契約にするそうで、新しいかたちが生まれそうです。
Zホールディングス傘下のヤフーは15日、他社で働く人材を籍を置いたまま雇うと発表した。新規サービスの企画立案など、高いスキルを持つ人材を想定し、9月末までに100人強と業務委託契約を結ぶ。今後は副業を認める企業も増えそうで、時間を軸としない労務管理など新たな働き方のルールづくりが課題となる。
この案件を見てわかるように、社内の人事制度にとどまらない変化が起きています。記事タイトルにもあるとおり「企業の境界溶かす」ことが、今後は日常的に起きていくと思います。
働き方をあれこれ考えざるを得ないタイミング
そうなると、スタートアップで働く人も、個人事業主の人も、中小大企業の人も、働く人たちは個人のスキルを軸に、いろんな人たちと仕事をしていく世界が来るわけです。
そんな世界で会社に貢献するとは何か。はたまた上司とはどういう意味を持つ存在なのか。出世とは何か。いまやっている仕事はどういう意味を今後持つようになるのか。などと、当たり前のように遂行している現在の業務はこのままでいいのか?や、自分のこれからの働き方を考えざるを得なくなります。
しかし、思考自体は何年も先までめぐらせることはできますが、現実社会は、日本は時間で評価するメンバーシップ型という制度を戦後の高度成長経済時代から続けてきているわけで、とくに伝統企業については、そうそう簡単に変われるわけではないことは予想できます。
日本でジョブ型雇用に注目が集まるのは今回が初めてではない。2000年前後の景気後退、10年前後のグローバル化をきっかけに「成果主義」がもてはやされた。ジョブ型導入を試みる企業が出たが、日本型雇用の見直しにまで踏み込めず定着しなかった。
もやもやしているときこそ、多角的な視点のインプットを
まさに移行期にあるのですが、そんなときこそ、いろんな立場の専門家やリダーたちの声を聞いて、思考をさらに前に進めたいと思います。
ということで、オンラインイベントを企画します。
【8/3(月)19:30〜】働き方innovation 加速するジョブ型雇用社会に備える
自ら新しい働き方を実践し、現在はリンクトイン・ジャパンの代表として「日本の働き方改革に貢献する」日経COMEMO KOLの村上臣さん、サイバーエージェントの執行役員で人事を担当する石田裕子さん、採用を中心とした研究プロジェクトに従事し、現在は創造性とグローバル人材について研究するKOLの碇邦生さんの3名をゲストに迎え、日本経済新聞社の石塚由紀夫編集委員がファシリテーターを務めるオンラインイベントを8月3日(月)に開催します。
日経本紙「働き方innovation」面で毎回展開しているテーマの理解を深めるイベントです。
日経電子版有料会員の方は無料で視聴できますので、ぜひお申し込みください。
イベントのプロモーション動画も作りました!
出演者とともに、ひとりひとりのいまの働き方を振り返り、これからの働き方を考える時間になるといいなと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。