「私たちは何を善とするのか?」 ーブランド・アクティビズムという考え方について
「ブランド・アクティビズム」という言葉をご存知でしょうか。ぼくはつい一週間ほどまえに知りました。この運動が非常におもしろいと感じたので、調べたことをまとめておきます。
「アクティビズム」とは?
アクティビズムという語は「積極行動主義」という言葉で訳されています。wikipediaによれば”行動主義のひとつであり、社会的・政治的変化をもたらすために特定の思想に基づいて意図的な行動をすること”と書かれています。
たとえば、2017年11月には、環境NGO「350.org.Japan」のメンバーの方々が、みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行の本店前であるアピールを行いました。それは、温暖化防止のために石油・石炭などの化石燃料関連の事業への投資をひきあげる「ダイベストメント」を求めるものでした。
こうした行動の影響もあり、2020年4月に、みずほフィナンシャルグループは新設の発電所に投資しないことを発表しました。
こうした活動をすることで、社会をより良いものに変えていこうとする運動を「アクティビズム」と呼びます。
「ブランド・アクティビズム」とは? ーNIKEの取り組み
このような社会的正義の実現にむけた活動を、特定のブランドが率先して行うことを「ブランド・アクティビズム」と呼ぶことができるでしょう。
こちらの記事によれば「Brand Activism」とは、社会・法律・ビジネス・経済・政治・環境などの問題に対して、企業やブランドが自分たちの価値観・スタンスなどを主張することとして書かれています。
たとえば、NIKEは「パーパス」として以下のような言葉を掲げて、様々な取り組みを行っています。
Our purpose is to unite the world through sport to create a healthy planet, active communities and an equal playing field for all.
人種や性、障害をめぐる差別の問題や、気候変動の問題に対して様々なアプローチを行っています。BLM運動に関連して「アメリカに問題がないふりをするのはやめよう」と呼びかけたことでも話題になりました。
パタゴニアが掲げる「アクティビズム」
また、パタゴニアはウェブサイトのトップメニューの2つめに「アクティビズム」を設けています。
ページを開くとこのような言葉が書かれています。
私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む。
私たちの声、ビジネス、コミュニティなど、私たちの持つリソースを活用して、気候危機に対して行動します。
私たちは変化のための 行動の一端を担っています。
原油掘削と闘う若者の支援から、大統領を相手取っての訴訟まで、私たちは世界が直面する最も差し迫った環境問題に対して行動を起こします。
気候変動の問題に取り組むスポーツプレイヤーを増やすために様々なアクティビストの活動の物語を掲載したり、環境活動団体に利益の1%を助成する活動を展開したりしています。製作した映画『アーティフィッシャル|野生のサーモンを救うための闘い』の無料公開も興味深い取り組みです。
10代の若者が未来をつくるユーグレナ「フューチャーサミット」
日本の企業では、ぼくはユーグレナの「フューチャーサミット」の取り組みに感銘を受けました。
今年6月には10代のメンバーからなるCFO (Chief Future Officer:最高未来責任者)とFutureサミットメンバーからの提言をうけ、ペットボトル商品の全廃とプラスチックストローの有無を選択可能にすることが決定されています。
大人が若者に従わせるのではなく、若者が考えた理想の未来に向けて大人たちがコミットする。これまでの年功序列の考え方を逆転させた取り組みは、教育から共創へと価値観を変える、若い世代との新しいコラボレーションの手本となっていく一つのアクティビズムであると、ぼくは感じています。
組織開発とブランドアクティビズムの関わり
ぼくはここ半年で、ファシリテーターとして「経営理念」のつくりなおしのお手伝いをする機会が増えてきました。
「経営理念」というと、「誠実」「情熱」「伝統」といった言葉で自らを戒めたり、規範をしめしたりするものを想像します。近年では顧客志向に注目があつまり、「お客様に〜〜〜する」という言い方で顧客に対して社の方針を示すような理念も増えています。
しかし、顧客に対してどんなにいい顔をしていようと、その裏でハラスメントや環境汚染の問題を起こしていたら信用ができません。顧客だけでなく、社員、社会、地球にとっての善をどのように考えているかという、組織の倫理観が問われています。
政治・社会・環境などに対して立場を表明することは勇気がいります。日本では政治の話はタブーとされがちです。しかし、「自分たちは何を善とするのか?」「善い社会とは何か?」という問いをめぐって語り合い、組織を構成するひとりひとりが合意したうえでブランドとしての姿勢を示す必要があるでしょう。
今後、さまざまなブランドがそれぞれの倫理観をもって行動をかえていくことを期待しつつ、ぼく自身、自分や自分が所属する組織、そして自分がサポートする組織の倫理を問いながら仕事をしていきたいと考えています。今こそ勇気を出して。