北海道系統崩壊についてその3 停電はなぜ起こる
わたしはよく、電気は「インフラ中のインフラ」と表現します。ガス・交通・水道・行政など「インフラ」と呼ばれるものはいくつかありますが、電力が途切れるとこれらのインフラも機能しなくなるので、停電の影響は計り知れません。特に高度に電気に依存してしまっている現在の日本社会では影響が大きいですし、わたし個人の話をすれば、父が人工呼吸器を使っていたこともあり、透析を受けている方、人工呼吸器を使っておられる方など電力確保が命に関わる方たちがどうしておられるか気になって仕方ありません。
日本ではずっと停電がほとんどなかったせいか、なぜ停電が起きるのかと言ったこともほとんど関心を持たれてきませんでした。
停電の理由には主に2つあり、一つは電気を送るルートの途絶。送配電線になんらかのアクシデントが起きるということです。今回はこちらではなく、需給のアンバランスからくる系統崩壊です。需給のアンバランスがなぜ停電につながるのかはとても分かりにくいと思いますので改めてご説明を。
電気を大量に貯める技術はまだ無いので(注:揚水発電といって、上下2つの池に水をためておき、電力に余裕があるタイミングで水を下から上に揚げておき、不足の場合に水を落として発電する技術はあります。これは、電気エネルギーを水の位置エネルギーに変えて貯めておくものなので、大きな蓄電池と言えます)、基本的に電気は必要とされるタイミングで、必要とされる量を発電しなくてはなりません。これは電気の「同時同量」という鉄則です。
そのため電力事業者は、変動し続ける需要を見ながら、また、最近は大量に導入された太陽光や風力などからの変動する発電量を見ながら、人間がコントロールできる火力発電所の火加減調整によってバランスをとっているのです。
作る電気が多すぎても少なすぎてもダメで、それが崩れると周波数が狂います。周波数といっても、西日本で60Hz(ヘルツ),東日本で50hzということくらいしか馴染みが無いと思いますが、1~2Hz程度狂うとおおごと。発電機は自分の身を守るために、自らを系統から切り離します。戦線離脱するわけです。今回苫東厚真という大きな発電所がダウンしたことで、「ドミノ倒し」が起こったのはこのためです。
そこからの復帰は2012年に書いた、リンク先の小論で述べている通りですが、水力発電所を「種火」として徐々に立ち上げていくというかたちです。今回の北海道電力さんの電力供給の復活の早さには正直びっくりしていますし、他電力会社の系統運用のプロに伺っても「信じがたい」というレベルです。これは評価されてしかるべきでしょう。
本州と北海道の間の連系線ですが、これまでの60万kWから、竣工後は90万kWの電気をおくれるように増強工事が行われており、来年俊子予定です。さらに、今まではコンバーターの問題によって、北海道で系統崩壊が起きてしまうと、本州から送電ができませんでした。受け手側に電圧が無いとダメだという技術的な話だそうで。それがこの増強に伴ってコンバーターも変わるため、この増強が終われば、今回のような事態へのレジリエンスも改善されるものとは思います。ただ、いかんせん90万kWであり、苫東厚真全体で165万であることをかんがえると容量の問題はまだありますが。
2012年当時に書いたものですが、今回の停電を理解していただくのには良いかなと思います。
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